2章 第三十六話 貴族が豚になる日
本日も宜しくお願いします。次回から通常のディー視点に戻る予定です。
今後とも宜しくお願いします。
何とか逃げ出して領主の屋敷に駆け込む、唯一の生き残りの私兵は、真っ青な顔して執事に取り次ぎを頼む。
執事もただ事でないと慌てて、自分の主人に話を持っていく。
「私兵が慌てて帰って来たのか、ふん、連絡をいち早く入れてくるとは良い心がけだ。いつもの部屋に通しておけ、直ぐに行く」
領主は、無事任務が達成したと思ったのか、気持ち悪いニヤけずらをした。
「パパ、おもちゃもう来たの?早く遊びたいんだけど」
と執事と入れ替わりに、クーズサームが入ってくる。
「まだだ。直ぐに憲兵が連れてくる筈だ。楽しみにしていろ」
そう言って領主は、私兵の報告を受ける為部屋を出る。
「何だ、まだか、早くこの魔道具試したいんだよね、幾ら殴っても、切っても壊れなくなる魔道具、どんな事しようかな」
クーズサームも父親そっくりな顔をして、部屋から出ていく。魔道具を手の平で遊ばせながら。
「で、どうなった。説明しろ」
部屋で私兵と向かい合って座った領主は、真っ青な顔の私兵に求めた。
「まずは結論から申し上げますと任務は、一部、失敗になったと思われます。」
領主は、ハッキリしない言い方に苛立ちを見せた。
「何だ、その“一部失敗”だの、“思われます”だの、はっきりしろ!何があった!」
私兵は、その後モドーキとの行動を逐一説明し出した。
冒険者と情報を得ると言って何か依頼をしていた事、ニブフークに手紙を渡した事、アジトで発見できず、街の外れに向かった事、そして、その地下で起こった事を説明した。
「貴様、わしを馬鹿にしてるのか?何が石化だ、黒い影だ!言い訳ならもっとマトモな事を言え!」
説明を聞いた領主は、グラスを投げつけて、怒鳴りつけた。
「本当です。私も信じられない光景でしたが!はっきり見ました。同僚も、モドーキも石になって行く姿を見ました。ただ恐ろしい光景でした。」
必死の私兵の言葉に領主は考え込むように目を閉じて腕を組んだ。
暫くして、領主はそのまま目を閉じたまま
「今から、私兵10人連れて確認してこい。もし違っていたら、どうなるか、分か・・・」
最後の言葉は紡げなかった。目を開けた時だったからだ。
目の前にある苦悶の満ちた顔で石化した私兵それを直視した為だ。
領主は一時の沈黙の後、悲鳴を上げ、床に倒れ込む。言葉にならない声をあげて部屋から出ようと四つん這いでドアをめざす。
「パパどうしたの?私兵で遊んでるなら混ぜてよ」
悲鳴を私兵と勘違いしたクーズサームがドアの外から声を掛けていた。
その一言が領主を人へと戻した。
「入ってくるな!外で待って、いや他の者を呼べ、動ける者全員だ」
「どうしたの、パパ?まあ良いや。適当に呼んでくるよ」
とクーズサームは、呼びにいく為ドアから遠ざかる。
そんな足音を聞きながら、今一度振り返り石化した私兵をを見る。
「何故、こっちを見ている。向こうを向いていただろ」
石化して動かないはずの私兵は、領主を見ていた。苦悶に満ちた顔は、“逃がさない”、“お前もこっちに来い”とでも、言う様に領主に向いていた。
その顔から逃げるため部屋から飛び出し、執事やメイドを探して、走り出す。
「おい!誰か居ないか。私が呼んでいるんだ、直ぐにこい!」
いくら呼んでも誰も出てこない、まして物音もしない無人の屋敷の様であった。
もう耳にするのは自分の発する声と息、足音だけ
であったが、視界に廊下に座り込む豚の様な男がいた。
領主はそのクーズサームと気づいたのか、
「おい、クーズサーム、呼びに行った者は何処だ!返事しろ」
領主はクーズサームに怒鳴り付けるが、クーズサームは、部屋の中を凝視したまま、無言で指を刺した。視線の先、部屋の中を。
「何が・・・」指の先を見た領主は声を止めて、クーズサームの隣に座り込んだ。豚が2匹。
そこには、ここで働いていた私兵を始めとした、悪事に加担した執事にメイドが、石になったまま、悲痛の顔で動いていた。
「ねー、そろそろ豚達の番だよ」
領主豚2匹の背中で声が聞こえて来る。
動きたい、逃げたいと体を動かす豚達だが、すでに手足は石化して動けなかった。
「助けてくれ、金もいくらでもやる、何なら今来る新しい奴隷もうやろう、そうだ、領主。俺の代わりの領主にしてやっても良い。だから助けてくれ」
領主は自分が助かり為に、身分さえ売りに出した。
「ふざけるな、俺様をこんなにするなんて、俺様は次期領主様だぞ!死刑にするぞ」
領主を譲ったら、次期も無いのだが、関係無しで、威張り脅しをかける子豚。
「本当にクズ。生きてるだけで害だね。クズに悪いよ。埋めたらいいよ。川に流す?早く石にして粉々にしようぜ」
多数の声が響く。
「あっ時間切れかな?残念。最後に魔法をかける時間あるかな?じゃーね、もし死んだら沢山遊んであげる」
豚の後ろから気配は消えて石化の進行が止まるが石化は治らない。
「「おい!置いていくな!元に戻せ!」」
豚2匹はブーブー泣き叫ぶが返事はない。
執事やメイド達の石像も動きを止めていたが、石化が治る様子はない。
そのまま、豚の鳴き声は次の日の朝まで屋敷に響くだけであった。
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