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神殺しの獣  作者: Key-No.92
第一章  王都を目指して
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第二十三話 君の手を掴む




 舞台の壁や地面には、さまざまな武器が転がっていた。

 早々に死なれては、見世物にならないからに違いない。


 咲弥は舞台に立って、わかったことがある。見世物なのはさておき、周囲から飛び交う歓声がかなり耳障(みみざわ)りであった。

 魔物の微妙な気配や動向を探る邪魔でしかない。


 ヌエを見据えたまま、そっと短剣を拾い上げた。

 突然、ヌエが奇声を放ち、素早く向かってくる。

 タイミングを見計らい、咲弥は唱えた。


「水の紋章第一節、螺旋の水弾」


 空色に輝く紋様が砕け、その破片が水の渦を生む。

 水弾が一つ放たれたものの、ヌエは俊敏に回避した。


 レイガルムやゴブリンボスと、似た気配を感じ取る。

 上位の魔物には、なかなか当てられない。もし仮に同格であれば、同様に紋章術が効きづらいのだろうと懸念(けねん)する。

 また、魔法を扱ってくる可能性も高かった。


 回避したヌエが、大きな跳躍(ちょうやく)を見せる。

 咲弥は拾った短剣を、滞空中のヌエにめがけて投げた。

 空中では、回避などできないだろう。

 しかし、ヌエは尻尾の蛇で短剣を弾き飛ばす。


「んなっ?」


 そのままヌエは、咲弥の近くを陣取った。

 蛇の尻尾をぐるりと回して、大きく()ぎ払う。


 咲弥はとっさに、両腕で防御を試みた。

 まるで木のバットで殴られたような、強い衝撃を受ける。

 後方に弾き飛ばされたが、かろうじて姿勢だけは保てた。


 腕が折れたと錯覚したものの、どうやらまだ無事らしい。

 痛みのせいで、上手く手に力が入らなくなる。

 近くにあった軽そうな小剣を、気合で握り締めた。


(今は考えるな! 痛くない、痛くないぞ!)


 自己暗示をかけ、咲弥は打開する道を模索する。

 今のところ、尻尾での攻撃しか判明していない。本当なら情報を集めたいところだが、時間はかけられないだろう。

 そんなことをしている間に、少女が死ぬかもしれない。


 それでも冷静に努め、咲弥はヌエとの距離を詰めた。

 迫りくる蛇を相手に、咲弥は小剣の刃を振るう。


「はっ――!」


 咲弥は即座に、横に転がって回避する。

 刃がまるで意味をなしていなかった。単純に武器の扱いが下手という理由もあるが、想像を遥かに超えて皮膚が硬い。

 落ちている武器を次々に投げ、まずは退路を切り開く。


 観客席からは野次が飛ぶが、聞いている余裕などない。

 そのとき、ふとヌエの隙を発見した。

 咲弥は空色の紋様を、瞬時に浮かべてから叫ぶ。


「水の紋章第一節、螺旋の水弾」


 空色に輝く紋様が砕け、青い渦から水弾が一つ放たれた。

 ヌエの胴体に、激しく命中する。


(く……っ!)


 やはり紋章術では、ダメージが与えられない。

 威力は悪くないはずだった。

 なぜダメージが入らないのか、咲弥には見当もつかない。


(それなら、第二の策だ)


 ヌエが隙を見せるまで、咲弥はがむしゃらに応戦する。

 まだもてあそばれている間に、重い一撃を入れたい。

 その一撃さえ入れば、おそらくヌエとの戦いは終わる。


 観客から罵声が飛び交う中、再びチャンスが訪れた。

 ヌエが咲弥の(そば)に詰め寄り、尻尾での攻撃をしてくる。

 咲弥は身を屈めながら、瞬時に紋様を宙に描き出す。

 ヌエが異変を捉えたのか、逃げの姿勢を見せた。


(逃がさない! ここで、やらなきゃだめなんだ!)


 咲弥は全力で跳躍して、ヌエの牙をがっしりと(つか)んだ。


「水の紋章第一節、螺旋の水弾!」


 超至近距離による口内への攻撃――だが、一歩届かない。

 水弾が放たれる直前、ヌエは自身の顔を蛇で殴りつけた。

 その衝撃を利用し、水弾からとっさに逃れたのだ。

 ずるりと牙を手離してしまい、咲弥は放り投げられる。


「くっ、そおおお――っ!」


 ヌエが咲弥から、大きく離れた。

 ヌエのやや上空に、大きな黄金色の魔法陣が浮かぶ。

 ついに本気を出したのだと、咲弥は目で(さと)る。


(やっぱり、こいつも魔法を扱えるのか!)


 雷鳴の音が(とどろ)き、魔法陣が激しい放電を帯びる。

 過去の記憶が、不意に鮮明となってよみがえった。

 咲弥は途端に、恐怖に身を(すく)ませる。


 天使がいた場所へ送られる直前、強烈な雷に打たれた。

 咲弥にとって雷は、トラウマとなっていたらしい。

 雷を見て初めて、自身の精神的な傷に気づかされた。

 無条件に体が震え出し、心が萎縮(いしゅく)する。


 魔法陣から放たれた雷が、なぜかヌエ自身に直撃した。

 理解不能な行為は、すぐさま理解にまで達する。

 青白い雷を全身に(まと)い、ヌエが咆哮(ほうこう)した。


「ふざけるなよ……そんなの、近づけないじゃないか!」


 咲弥の心が絶望に染まる。

 アグニスの『勝てれば』という言葉を思い出した。

 はなから勝たせるつもりなどない。

 それほどまでに、高い位を持つ魔物なのだろう。


『人を――世界を救う必要はありません』


 ふと咲弥の脳裏に、天使の声が流れた。

 奥歯を噛み締め、恐怖から震える拳を握り締める。


「それでも……それでも負けるわけには、いかないんだ!」


 咲弥は絶望を、自分の声でかき消すように努めた。



    ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 信じられない光景を、少女はただひたすら見つめていた。

 合わせる顔などない。だから、もう会わないはずだった。

 ()()の祈りが届き、赦されたのだろうか――

 少女はどこか、夢見心地な感覚に(おちい)ってしまった。


 黒髪の少年が、今――魔物を相手に立ち向かっている。

 少女を死へ(いざな)う魔物を相手に、血を流して奮闘していた。


『待ってて……あいつを倒して、必ず治療してもらうから』


 少年の言葉が、その声が――

 少女の頭の中に、こびりついていた。


 少女はただただ、理解に苦しむ。

 ほんの少し前に、少年を殺しかけたばかりだった。

 あと一歩を間違えれば、彼はこの世を去っていたのだ。


 そんな失敗作を護るために、少年はただ命を()している。

 なぜ傷つき、そこまで立ち向かうのかがわからない。

 ただ少年は絶望的なくらい、苦戦をしいられている。


 なぜなら少年は、あまりにもオドの扱いが下手なのだ。

 アラクネでもそうだが、オドの扱い方を理解していない。

 まるでオドがなんなのか、知らないとすら感じられた。

 ヌエの禍々しいオドが、見えていないのだろうか――


 水の紋章術を、見事に当てはした。

 だがヌエの禍々しいオドを、貫くほどではない。

 垂れ流しのオドで作った紋章術では、無茶も過ぎる。

 練り上げたオドを、紋様へと込めなければならない。

 いずれにしても、このままでは殺されてしまうだろう。


(なぜ……あなたはそこまで……)


 少女は心から不思議に思った。

 だから――


「どうして……そこまで、するのですか?」



    ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 ふと、か弱い女の声が耳に届いた。

 咲弥は声を、肩越しに振り返る。

 いつの間にか、少女のいる付近まで戻っていたらしい。

 少女はじっと、紅い瞳で見据えてきていた。


「私は、ただの失敗作です。護る価値など、ありません」

「……へ?」

「だからほうっておいてください。もう死なせてください」


 あまりに唐突過ぎて、少女の事情や言葉が呑み込めない。

 不意を突かれても困るため、咲弥はヌエを向き直った。

 ヌエを警戒しつつ、咲弥は少女の言葉を反芻(はんすう)する。

 ただただ――悲しい気持ちばかりが溢れた。


「ごめん。そんな話は聞けない。だからほうっておかない」

「なぜですか? 私は、あなたをも殺そうとしました」

「うん。確かに、そうだね……」

「そんな欠陥品を救い、何になるというのですか?」

「でも、君が僕を(いや)し……っ!」


 こちらの事情もお構いなしに、途端にヌエが雷撃を放つ。

 咲弥は(そば)にあった剣を放り投げ、避雷針代わりにする。

 雷撃を受けて黒焦げた剣は、地に落ちて粉々になった。

 恐ろしい威力に、また絶望がちらつく。


 攻撃する手段を、何か考えなければならない。

 だがさきほどから、雷へのトラウマがそれを邪魔する。

 大事な一歩を、ずっと踏み出せないでいた。

 激しい電撃が飛ぶ最中にも、少女は話しかけてくる。


「早く逃げてください。もう、ほうっておいてください」

『人を――世界を救う必要はありません』


 咲弥は二つの意味から、言葉を否定する。


「……嫌だ」

「私は死にます。それが、私の望みなんです」

「……嘘つくな! そんなこと、本心じゃないだろ!」

「……何を……?」


 雷をまき散らしつつ、ヌエが素早く突進してきた。


(こんな……避けられな……いっ!)


 ヌエに体当たりされ、衝撃と電撃の両方が咲弥を襲った。痛みと一緒に、雷に打たれた記憶がフラッシュバックする。

 咲弥は大きく弾き飛ばされた。


 衝撃もそうだが、電撃もかなり痺れて痛い。

 自身から発生するゆらゆらとした黒煙が、視界に入った。

 しかし――あの日みたいに、死ぬほどではない。


 とはいえ、激痛のせいで意識が朦朧(もうろう)となる。

 咲弥はそれでも、気力を振り絞った。

 悲しい少女に、どうしても伝えなければならない。


「君に何があったのかは知らないし、本当のところだって、僕は何もわからない! でも――あのときに見た君の目は、とても悲しそうで、まるで泣きながら手を伸ばしてるように見えたんだ!」


 ヌエの体当たりのせいで、少女との距離が遠い。

 咲弥は精一杯、力強く声を張り続けた。


「でもそれは、錯覚なんかじゃない! 君の言葉を聞いて、それがよくわかった! 泣いてる女の子が、必死に伸ばした手を掴んでやるのは男の役目だ!」


 咲弥は(きし)むぐらい拳を握り締め、空色の紋様を浮かべた。


「死にたいだとか、ほうっておけだとか、そんな悲しいこと二度と言うな! こいつを討って、僕が絶対に君が伸ばした手を掴んでやる! 理由なんか、別にどうだっていい。僕がそうしたいと思ったから、そうするだけだ!」


 言ってから、あまりに無茶苦茶な言い分だと思った。

 しかし自分の発言について、考えている暇などない。

 少女の付近にいるヌエに、咲弥は全速力で走り向かう。


 落ちていた武器はすべて破壊され、もうどこにもない。

 だからもう、気絶覚悟の一か八かに()けるしかなかった。

 ここでやらなければ、殺されるしか道がない。


「お前程度のよわっちぃ雷なんか、痛くも怖くもない!」


 己を鼓舞(こぶ)して、咲弥は全身全霊をかけて集中する。

 紋章術でも、そうだった。

 普通に唱えて放つのでは、勝手に全力が出てしまう。

 咲弥は、奴隷生活を経て学んだ。


 その結果、紋章術を四分の一にまで抑えられている。同じ紋様から発動する固有能力とて、原理は同じはずであった。

 攻撃が当たる瞬間――衝撃の限界突破に意識を(そそ)いだ。

 咲弥は、右拳を放ちながら唱える。


「拳の衝撃だ! 衝撃だけ! 限界突破ぁっ!」


 空色の紋様が淡く輝き、大きく砕け散る。

 ヌエの硬い胴体の皮膚に、咲弥の拳がめり込んだ。

 瞬間――まるで爆発じみた轟音(ごうおん)が鳴り響く。

 同時に咲弥の拳を通じ、電撃が流れ込んできた。


「ぐあぁああ――っ!」


 ヌエの巨体は空をも貫き、一直線に吹き飛んだ。

 壁に激突したヌエから、悲痛なうめき声が上がる。

 ぐったりと重い音を立て、地に崩れ落ちた。

 咲弥もまた、全身から黒煙が立つほどの電撃を受ける。

 それでも、かろうじて立ち続けていた。


 しんと静まりかえる場で、咲弥は必死に痛みを(こら)える。

 雷に痺れながらも、自身の右手に目を向けた。

 なにもかもすべてを、限界突破したわけではない。

 今はまだ、そこまでの精密な制御は不可能なのだ。


 そのため、右手がぐちゃぐちゃに壊れていた。

 あまりの激痛に、気が狂いそうになる。奥歯が欠けそうなぐらいに強く()み締め、重い呼吸を繰り返して耐え続ける。

 そして予想通り、これまでと違って気絶はしていない。


《おいおいおぉーい! 場内はあまりの出来事に、硬直していやがるぜぇ! なんとなんと! あの魔獣ヌエを拳一発で吹き飛ばしやがったぞぉお!》


 場内にわっと歓声が沸き起こる。


《しかも、この少年! どうやら、可憐な少女を助けるため自らやってきたらしい! 泣かせるぜ! おぉおっとっ?》


 ヌエが老人のように、ゆっくりと立ち上がる。

 パンチ一発で倒せるほど、上位の魔物は甘くはない。

 咲弥は左手を、ぎゅっと強く握り締めた。


(……今度は、確実に……討つ……)

「光の紋章第三節、光粒(こうりゅう)の陽だまり」


 咲弥の周囲に、ちかちかとした光が発生する。

 ロイがくれた治癒(ちゆ)の紋章具と、どこか似ている気がした。

 次第に優しい光に包まれ、ほのかな温かさを覚える。


 目覚める前に、同じ温かさを覚えた記憶があった。

 それは本当に、まるで陽だまりみたいな――

 痛みが、どんどんと消え去っていく。

 折れた右手の骨までもが、少しずつ()えているようだ。


「これは……治癒? ほら……やっぱり、君だったんだ」


 咲弥は少女を見た。

 折れていないほうの腕を、精一杯に伸ばしている。


「感じ取ってください。オドを練り上げなければ、紋章術はヌエに通じません」

「え? な、なんだって?」

「目を閉じ、己のオドを感じ取り、よく見てください」


 何を伝えたいのか、漠然としていてよくわからない。

 ただ、紋章術が通じない――そこが、引っかかった。


(練り上げる? オドを? どうやって……感じ取る?)


 ふらついたヌエが、再び倒れた。

 限界突破の凄まじさを、改めて思い知る。

 ほんのわずかなら、まだ時間はあるらしい。

 少女の言葉に従い、咲弥は目を閉じた。


 オドとは体内で生成される、人為的なエネルギー――

 オドを扱うことで、紋章術や固有能力を発動できるのだ。


(そうか。確かオドの量で、紋章者かどうかがわかるんだ。なのに、僕は……)


 かすかに自身のオドを感じ取れても、見られはしない。

 つまり扱い方を、そもそもわかっていないのだろう。


「オドは胸の内側から生まれ、体の外へ流れ出ていきます。それをしっかりと感じ取り、そして練り上げ、紋様に込めてください」


 咲弥は胸の内側に意識を向けた。

 確かに、何か妙な感覚がある。

 じわりじわりと、外へ広がっていく感覚だ。


(これが……オド……? オドを、練り上げる……?)


 咲弥はゆっくり目を開き、そして驚愕する。

 ヌエが(まと)っているのは、雷だけではなかった。

 うねうねとした、モヤみたいなものがある。

 ヌエの深紫色をしたオドは、かなり不気味に感じられた。


 咲弥は手のひらに目を向ける。

 自分もまた、無色のオドを纏っていた。

 そして――咲弥は空色の紋様を宙に描く。


 まるで引っ張られるように、オドが紋様を形作っていた。

 それは可視化されるほどに濃い、オドの結晶ともいえる。

 いまさらの事実に、咲弥は衝撃を受けた。


(……そうだったのか……これが、原因だったのか……)


 少女の言葉を、やっと咲弥は理解した。

 この状態でも、紋章術は発動できる。


(練り上げる……オドを……意識して……込める)


 咲弥の浮かべた紋様が、まばゆい空色の輝きを放つ。

 同時にヌエが立ち上がり、口の前に魔法陣を生み出した。

 激しい羽音にも似た、放電の音が響き渡る。


「シュアアアアアアアアア――!」


 ヌエの咆哮(ほうこう)とともに、魔法陣から稲妻が生み出される。

 瞬間、咲弥は唱えた。


「水の紋章第一節、螺旋の水弾」


 眩しいぐらい空色に輝いた紋様が、豪快に砕け散った。

 深く暗い、水の大渦が生まれる。

 そこから激しい音を立て、水の塊が放たれた。


 電撃をも飲み込んだ水弾は、ヌエの顔面に命中する。

 咲弥は、心の底から驚かされた。


(こんなにも……こんなにも、違うものなのか……?)


 初めて紋章術を放ったのは、立派な樹木だった。

 だが樹木とは違い、魔物にはあまり効果が薄かったのだ。


(僕はそれを、魔物が硬いからだと……勝手に解釈してた)


 全身を(まと)うオドが、防御の役割を担っていたのだろう。

 オドを練り上げて強化したから、魔物に攻撃が通じた――ヌエの顔面が、えぐり取られたかのようにまでなっている。


 顔半部を失い、ヌエは重々しい音を立てて倒れた。

 もっとも驚くべきは、紋章石の力なのかもしれない。

 これまでただの吐息程度で、あれほどの攻撃をしていた。


《しゅ、しゅ、終了だぁあ―! な、な、なんと! 久々に人側の勝利だぁあああ! ばかやろぉおおおお――っ!》


 盛大な歓声が場内を飛び交う。

 戦いは終わったが、咲弥は気を抜いている暇などない。

 少女のいる場所へ、すぐに駆け寄った。


 怪我の具合が――眉をひそめ、咲弥は首を(ひね)る。

 かなり酷かったはずの怪我が、軽傷までに回復していた。


「あ、あれ……? あ、そうか……自分を治癒したのか」


 淡い光に包まれた少女は、むくりと身を起こす。

 そして、その場で座り込んだ。


「まだ完全ではありません。さきほどよりは回復しました」

「そ、そっか……はぁ……よかった」


 突然、後方から拍手の音が飛ぶ。

 振り向くと、そこにはアグニスと御付(おつ)きの二人がいた。




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