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神殺しの獣  作者: Key-No.92
第四章 無数にある分岐点(下)
222/222

分岐の結末終 記憶




 天空より降り注ぐ陽光が、世界を明るく照らしていた。

 白い雲が自由気ままに泳ぐ青い空の下には、悠然(ゆうぜん)と構えた山々がある。落ち着いた雰囲気を(かも)してはいたが、やや強い風にくすぐられた木々がたまに笑っていた。

 川や滝のかすかな響きのほか、鳥や虫の鳴き声も多い。


 そんな大自然の一部分――

 (とが)った崖の上に、やや背が高めの少女が立っていた。


 紅い髪飾りをした彼女の容姿は、神々しいほどに美しい。山風を浴びるたびに、腰まで伸びた銀髪が(なび)き、(けが)れのない純白の衣服と耳飾りが揺れていた。

 だが、その表情に彩りはない。ずっと真顔であった。

 ただ静かに、紅い瞳で遠くのほうをじっと眺めている。


《――と、まあ……そんな感じかしらね》

 右手に乗せている通信機から、女の声が流れていく。

《でも、もう少し情報が固まってからでもいいかも。あんま下手に動いてもさ、徒労(とろう)に終わる可能性大だしね。いちいち国境を渡んのも、ちょい面倒っしょ?》


 銀髪の少女は、思考する余地なく返答した。


「いいえ。これからすぐ、向かおうと思います」

《はぁあああ……つか、あんた今どこいんの?》

「南アイクリッド大陸――真王樹(しんおうじゅ)と呼ばれる場所です」

《真王……あのさ、そこやっべぇとこじゃないの?》


 こちらの姿は、もちろん相手には見えていない。

 それでも、少女は無意識にこくりと(うなず)いた。


「零級の魔物が複数体、縄張り争いをしている模様です」

《いやいやっ! なんで、そんなとこいんのっ?》

「ここを突っ切れば、次の街まで早く到着します」


 女は絶句したのか、お互いの間を少し沈黙が行き来した。


《……ま、まあ、あんた一人なら、平気かもしんないけどさ……魔物の()()()()がひどくなってるし、なかには()()()()()()もかなり増えてきてるからね》


 魔物の異常活発と、変異種の大量発生――

 世間一般での噂や分析などはともかく、少女達の周辺では確信にも似た解答が導き出せている。人類を滅亡寸前にまで追い込んだ魔神が、復活しつつあるのだ。

 また同時に――


《それに、魔物だけじゃないから……》


 これまでの間、精霊は御伽噺(おとぎばなし)に過ぎなかった。

 そのはずなのに、なぜだか世界中のあちこちで精霊術士が出現しているらしい。()仕業(しわざ)という可能性も考慮したが、どうやらそういうわけでもない様子だった。

 さらに言えば、精霊術士だけではない。


 奇妙な力を持った者が、あらゆる場所に現れている。

 魔物と同様、人もまた急激な変化を()げつつあるのだ。


《いくらあんたでも、一人じゃ難しいこともあるっしょ》


 少女の足から背へ、小さな白い獣が駆け登ってくる。

 そして、少女の頭上にちょこんと居座った。


「愚か者め、一人ではない! 我もおるわ」

《おっ――その声は、ちびフトスね》

「ち、び……貴様、妙な名をつけるな! ()み殺すぞ!」

《ちびの分際(ぶんざい)でイキッちゃってまあ、お可愛いこと》


 そう言ったのは、違う女の声――風の精霊で間違いない。

 頭上にいる光の精霊が、立ち上がった感触が伝わった。


「お主もどうせ、今時分はちびだろうが! 羽虫が!」

《うふっ。肩に乗れて楽ちんだし、眠くなっちゃうわぁ》


 通信機のほうから、大きな欠伸(あくび)が届いてきた。

 頭上から、ぐぬぬぅとうめき声が聞こえる。

 精一杯の(あお)りが効かず、(くや)しい思いをしているらしい。


《それは、いいとして――》

「よくなどない! 莫迦者(ばかもの)め!」

《まあまあ……あんまさ、無茶しないようにしなよ?》


 女からの配慮を受け、少女は小さく(うなず)いた。


「了解しました」

《ちょっと問題を片づけたら、私もそこへ向かうから》

「はい」

《だから、それまで一人で突っ走んないでね?》

「はい」

《ちゃんとわかった?》

「はい」

《本当に?》

「はい」

《絶対に?》

「はい」

《あなたはばかですかぁ?》

「いいえ」

《よし! 安心したわ!》


 女は満足そうな声をあげた。

 少女は少し間を置き、女へと告げる。


「では、一足先に情報のあった地へ(おもむ)きます」

《はいはぁい。了解! んじゃ、気をつけてねぇ!》


 通信機がぷつりと途切れ、場は静まりかえる。

 腰にある小型の鞄に通信機をしまい、改めて一望した。


 目的地が変更となったが、落胆するには及ばない。

 どちらにしても、真王樹(しんおうじゅ)を抜けたほうが早いからだ。

 少女は右手を前に伸ばし、純白の紋様を宙に顕現(けんげん)する。


()()()、ヴァルキリー」


 純白の紋様が砕け、星々のような光の欠片が生まれる。

 やがて小さな(きら)めきが右手に(つど)い、まばゆい輝きを放つ。

 すると少女の手に、深紅の大太刀が突如として現れた。


「我が(あるじ)よ」

「はい。異種合同型の模様ですね」


 少女は淡々とした口調で、光の精霊に応えた。

 景色自体は、とても長閑(のどか)そうな場所に感じられる。しかしここは国が(さじ)を投げ、冒険者ギルドに所属する上級ですら、下手に近づかない危険地帯であった。

 疑似的(ぎじてき)な話、もはや空白の領域と言っても差し支えない。


(あれから、もう二年……)


 少女の脳裏(のうり)に、過去の記憶が大河のごとく流れていく。

 そのさなか、先陣を切った魔物が背後から襲撃してくる。


 少女は一呼吸の間に、魔物の脚を裂いて首を()ねた。

 猿に近い頭部に、蟷螂(かまきり)に酷似した肉体をもっている。

 真王樹(しんおうじゅ)には、虫と何かが混ざり合った魔物が多い。


 当然、零級が統括する地区ごとに、種類は大きく(こと)なる。

 数時間前は、植物系統の魔物が蔓延(はびこ)る場所だったのだ。


「今度は、飛行型の群れだな」

「はい」


 けたたましい羽音から、その存在は即座に認識できた。

 漠然とした予感でしかないが、きっと(おとり)だと思われる。

 羽音を立てず、気配を()つ魔物が(ひそ)んでいる気がした。

 少女は深紅の大太刀を、純白の弓に無言で転化させる。


「来るぞ――!」


 蜻蛉(とんぼ)に近い蜥蜴(とかげ)の群れが、崖下から噴き上がってきた。

 その数は、ゆうに二十を超えている。

 少女は弓を引き絞り、猛る光の矢を(つが)えた。

 放たれた一筋の閃光は、途中で樹枝のごとく分散する。


 少女は魔物を射貫(いぬ)きつつ、影に(ひそ)む魔物を目でも探った。

 曖昧(あいまい)な気配は(さと)れるが、そこには何もいない。

 頭上にいる光の精霊から、ふと力の流れを感知する。

 純白の()()()が、少女の右目の前に描かれていく。


「こそこそ隠れるな! 下等生物め!」


 少女の顔に片眼鏡が現れ、見えない敵が視認できる。

 ほぼ透明化が可能なのに加え、音もなく飛行する魔物――一見、蝶の妖精か何かかと錯覚(さっかく)させるが、その容姿はひどく醜悪(しゅうあく)なものであった。


 また上位種の気配が、色濃く漂っている。

 やや(あわ)てた様子で、蝶の魔物が魔法陣を描いていく。

 少女は純白の弓から、黄金色の双刃刀(そうじんとう)に転化させた。


 閃光の矢に貫かれて落下する魔物を足場に、蝶の魔物との距離を一気に縮める。またたく間に迫られ、(みにく)い容姿をした魔物の形相(ぎょうそう)が蒼白へと転じていた。

 まず魔物の顔面を貫き、少女は踊るように細切れにする。


 すぐ次の行動へ移った。ここからは空中戦に突入する。

 飛行する魔物を、飛び移りながら駆逐(くちく)していく。

 地上のほうに、少女を仕留(しと)める動きに入った気配がある。

 その中心に、ぬめり気のある嫌な雰囲気が漂っていた。


(予想よりも登場が早い)


 そんな感想を抱きつつ、飛行型の魔物を次々に始末する。

 そのたびに、どんどん地上に近づいていた。


 最後の一体を処分したあと、少女は深い森に降り立つ。

 少女は止まらない。地を駆け、異色な気配へと向かう。

 予感は的中する。零級の魔物が(たたず)んでいた。


 虫――確かに虫の一種だが、かなり妙な姿をしている。

 六つの細長い足で立ち、球根みたいな体つきをしていた。頭部にあたる場所に、串刺しにされたかのような黒い玉が、横並びに五つ生えている。

 植物ではないのか――そう疑ってもおかしくはない。


「もう見目が(みにく)い……気品の欠片もない」


 頭上に居座る光の精霊が、ぶつぶつとぼやいている。

 気品の欠片もない魔物の周辺には、ぶくぶく太った芋虫の魔物がたくさんいた。足の数が十数本ある様子だが、動きはとても鈍重(どんじゅう)そうだと分析する。

 瞬時に観察を終え、再び深紅の大太刀に戻した。


 戦闘態勢を整えるや、魔物側も動き始める。

 芋虫が一斉(いっせい)に、口から何かを吐き出した。

 それはまるで、蜘蛛の巣に近いものを連想させる。


 粘着性は面倒だった。少女はまず、回避を優先する。

 その(さい)、付近に落ちていた石を蹴り、網に向かって放つ。

 案の定、行動を制限させる効果をもっていた。


 少女は軽やかに()けながら、じっとしている零級と(おぼ)しき魔物から目は()らさない――(いな)。どうやらもう、じわじわと行動を起こしている様子であった。

 黒玉の一つが開き、なにやら鱗粉らしき粉を()いている。


 ただ、こちらは風上だった。吸い込むことはない。

 状況の分析をした矢先、予測の(あやま)りに気がついた。

 その鱗粉は敵への攻撃でも、ましてや威嚇(いかく)でもない。

 芋虫に似た魔物達の体が、どんどん巨大化している。


(支援系……?)


 次に、二つ目の黒玉が開いた。

 巨大化した魔物に、鋭い(とげ)が無数に生えていく。


 さらに三つ目の黒玉が開いた。

 芋虫が全身に電気を(まと)い、激しい電撃の音を立てている。

 戦闘型の魔物ではなく、確実に支援型の魔物であった。


(危険……?)


 少女は全身に、嫌な悪寒が駆け抜けた。

 これは、魔法ではない。零級の魔物独自の特殊な力だ。


 そう思考するなり、零級の魔物が大きな黄土色の魔法陣を空中に顕現(けんげん)する。真下にある土が(ふく)れるように盛り上がり、零級の魔物の体を形成していく。

 巨大な魔獣の体のみを、泥で(かたど)ったようだ。


 芋虫の魔物が丸まり、地を砕きながら突っ込んでくる。

 難なくかわされた芋虫が、大樹に激突した。その瞬間――

 ほかの電気を(まと)った魔物と、電流が激しく繋ぎ合った。

 少女は即座に上空に飛び、電撃からも(のが)れる。


 上空で逆さまになりつつ、それが罠だったと知った。

 少女は素早く、視線を(すべ)らせる。

 泥人形を(まと)う零級の魔物が、右手を差し出していた。

 右の手のひらから、(すさ)まじい衝撃波が放たれる。


 回避は難しい。されども、裂いても危ない予感がする。

 素の状態では少し厳しい。

 少女は純白の紋様を宙に描いた。


「精霊装――戦乙女」


 頭上にいる光の精霊が背にある小さな両翼を広げ、すっと前へ飛んだ。光の精霊の全身からまばゆい光が放たれるや、少女もまた閃光に包み込まれていく。

 純白の光が少女に、銀色の装具を瞬時に身につけさせた。


 精霊の加護が宿った装備を(まと)うと同時に、少女は光の盾を前方に生み、飛来(ひらい)する衝撃波を完璧に受け流した。やはり、ただの衝撃波などではない。

 まるで粘着液に近いものが、光の盾にへばりついていた。


 少女は光の盾を消滅させてから、大地へと着地する。

 止まることなく(ひらめ)く速さで駆け抜け、巨大な芋虫みたいな魔物を深紅の大太刀の一振りで両断した。二振りで二体目を裂き、回転斬りで三体を一気に斬る。

 切断面から高熱の光が(ほとばし)り、魔物は焼かれ(ちり)と化した。


 魔物が放つ雷撃など、なんら問題にならない。

 少女の全身に張られた光の幕が、すべて遮断(しゃだん)していた。


 しかし、魔物側も黙ってなどいない。

 零級の魔物が、四つ目の黒玉を開いた。すると芋虫に似た魔物が続々と地中から()い出て現れ、さらには零級の魔物の支援を浴びた。

 少女はようやく理解する。


(これは、創造……?)


 どうやら芋虫は、零級の魔物が生んだ存在のようだ。

 とはいえ、もうただの時間稼ぎにしかならない。

 少女は思考する余地もなく、駆ける足を止めなかった。


 どれほど現れようが、すでに狙いは定まっている。

 零級の魔物にある中央の黒玉――唯一、開く気配がない。

 そこが人でいえば、頭部にあたる場所だと予想した。

 ()()()を切り裂いて進み、少女は零級の魔物に迫る。


 あと十数歩――そんな距離での出来事であった。

 少女の背後から前へ、ふわりと()()()すり抜けていく。

 風ではない。そもそも、実体すらないものであった。


『――ごめん! 援護をお願い!』


 少女の目もとから、そっと涙がこぼれ落ちていく。

 もし、彼が(そば)にいたら――

 彼が消えた日から、幻覚が不定期に発生していた。


(あなたが魔に頼ることなく……天使から与えられた使命を果たせるかもしれないほど、私はとても強くなれました)


 あの日、あの時――

 優しい彼の心を、少女が深く傷つけた。

 突飛(とっぴ)もない展開と話に、頭が混乱していたのは(いな)めない。


 事情を呑み込むたびに、暗い感情が心に宿っていった。

 まだ人として未熟な当時の自分には、激しく(あら)ぶる感情の抑制など不可能であり、結果として、思ってもいない最低な言葉が口からこぼれ落ちた。

 そこからさらに、ありえない誤解までもが生じたのだ。


 彼にきっと、失望と絶望を与えたに違いない。

 ただでさえ、彼の心は飽和状態だったのだ。

 なかば強制的に、天使から理解に苦しい使命を与えられ、平穏な世界から転移させられた彼は、ずっと一人で、もがき苦しんでいたのだと思われる。


 それなのに、心優しい彼はいつも誰かのために体を張り、この世界に住む人達を全力で護ろうとしていたのだ。冷静に考えれば、その(すさ)まじさがよくわかる。

 そう気づいてあげられたのが、あまりにも遅過ぎた。


 現地の者に素性が知られれば、自分と聞いた者が死ぬと、そう言い渡されていたからだ。なぜ天使が彼を(たばか)ったのか、いまだ明確な答えは出ていない。

 だがそのせいで、仲間に混乱を招いたのは事実だった。


 これは、言い訳に過ぎない。少女も重々承知している。

 事情はどうであれ、彼を傷つけたのに変わりはない。

 最終的な結果を言えば――優しい彼の心が、壊れた。

 彼はもう、まともな思考を働かせられていない。


 十天魔(じゅってんま)と呼ばれる魔人(まびと)――一体の悪魔と手を組み、きっと彼は魔神を討伐するために今も行動している。ほぼ確実に、魔の(ささや)きに取り込まれたに違いない。

 彼の表情、言動、それらすべてがそう物語っていた。


(咲弥様――)


 正直なところ、彼を探してどうなるのかわからない。

 きちんと話せるのか、想いを伝えられるのか――

 あの日みたいに、再び拒絶される可能性は充分にある。

 それでも――


「私の()()()を、邪魔するなぁっ!」


 少女は高く飛び上がり、腹の底から叫んだ。

 零級の魔物を、一呼吸の間に百回ほど斬り裂く。

 零級の魔物はまばゆく輝いたのち、強烈に()ぜる。


 それはもはや、紅き光の爆発とも呼べそうな現象だった。

 想いや感情のすべてが、深紅の大太刀に乗ったのだ。

 少しやり過ぎた感は(いな)めない。

 少女は地に立ち、さらりと周囲を眺めた。


 統括する魔物がやられ、ほかの魔物が逃げ(まど)っている。

 無駄に追撃して、殲滅(せんめつ)する気はさらさらなかった。

 人が住まう地ではないため、特に問題にはならない。

 少女は精霊装を解き、ヴァルキリーをふわりと消した。


『――大丈夫? 怪我はない?』


 不意に、また彼の声が届く。彼の姿も薄くだが見えた。

 その夢幻(むげん)は、自分の心が生んだ罪と罰だと考えている。


 許されなくてもいい。拒絶されても構わない。

 それでも、彼に直接もう一度会いたかった。

 これまでのことや、これからのこともたくさん話したい。


 付近の街に行けば、国境を越えられる飛行船がある。

 それに乗れば、情報にあった場所までの到着が早い。


 これから目指すべき地は――

 少女が生まれ育った真の故郷となる、ロヴァニクス帝国の真下に位置する大陸――パレキスア大陸の北部だ。さきほど入ってきた情報によれば、どうやらそこに天使の紋様を持つ者が現れたらしい。


 少女は(ふところ)から、丁寧(ていねい)に折り(たた)んだ紙を一枚取り出した。

 その紙には、とある少年の顔が大きく()っており――(あお)き天使の紋様を持つ男、生死を問わず、国際手配するといった文章が共通言語で(つづ)られている。

 あの心優しい彼が、こうなるとは夢にも思わなかった。


 手配書を眺めるたびに、ぐしゃぐしゃにして丸めたくなる衝動に()られる。

 しかし、それはしない。

 彼を傷つけるみたいで、自己嫌悪(じこけんお)するからだ。


 目撃された天使の紋様――色までは情報にない。

 だから本当に彼なのかどうか、それはまだ不明ではある。自分の記憶が正しければ、まだ見知らぬ使徒が最低でもあと七名も存在しているのだ。

 それでも、確かめずにはいられない。


 彼という可能性が、(ごく)わずかでも存在する以上は――

 流れ落ちた一筋の涙を拭い捨て、少女は願いを口にした。


「咲弥様……今から、あなたに会いにいきます」


 少女はまっすぐ前を向き、目指すべき方角を見据える。


 あれから少しばかり背が伸び、大人の体へ成長した銀髪の少女――

 紅羽は愛する咲弥の影を追い求め――

 真王樹(しんおうじゅ)を難なく切り抜け、目的の地を急いだのだった。




                第四章――第一部 完





 今回の更新で、ついに第一部が終了となります。

 最初から最後まで追ってきてくださっている方々――

 そして、やがてここまで辿り着いた方々――

 本当に感謝の気持ちしかございません。


 以前、どこかで書いたような気がするので、ご存じの方はご存じなのですが――この神殺しの獣は、もともとは自分が読みたいがためだけに書いていました。

 しかしそれは、少々勿体ない気がして今へと至ります。


 そういった理由から、とことん自分の好きなように物語を書いてきているのですが、思った以上に多くの人達に読んでもらえているみたいで嬉しいです。

 これまでも、そしてこれからも――変わらないでしょう。


 つまりは、ここまで本作をお読みくださった読者様には、言われずとも理解できると思われますが……次回の章から、主人公は咲弥ではありません。

 当然、彼に代わる主人公は一人しかいませんね。


 自分が無知という可能性は大なのですが、こういう展開はあまりほかでは見られないんですよね。具体的にはどういう展開か――凄く簡単に言えば、主役がヒロインへと代わり、どこかへ消えてしまった主人公を追い求める展開……!

 自分はそういうのが大好物です。だから、つまり――


 またもう一つ、あまり見られない展開があります。

 ただそれは、ネタバレになるので控えておきますね。

 ぜひ新たな主人公を通して、ご自身で見てみてください。


 これより、恒例の書き溜め期間へ突入します。

 ですから、長らくお待たせしてしまう可能性は超大ですが――仕事があまりにも多忙なため、申し訳ない気持ちです。実は一日を通して、自宅にいる時間よりも職場にいるほうが長いという日が、ちょくちょくとあるくらいなんです……。


 首を長くして待っていただくか――

 今一度、物語を最初から見直すかで、お待ちいただければ幸いです。


 今回も長々とお付き合いくださり、感謝しています。

 そして、これもまた恒例の、ちょっとしたお願い!

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