第二十二話 母の言葉
か弱い少女の背を眺め、咲弥は戦々恐々としていた。
シャーロットは小さな体を大きく広げ、異形となり果てたスイと対峙している。皇女といった高貴な身分――確かに、それも震撼させる理由の一つではあった。
しかし、本当の問題点はそこではない。
シャーロットのオドは、見てわかるくらい未熟なのだ。
いくらなんでも、無茶が過ぎる。
引き下がらせるため、咲弥は手を前に伸ばしていく。
「ぐぅ、うっ……」
どれだけ無視をしていても、体中がひどく軋んだ。
自分の意思とは無関係に、咲弥の膝が地面へと落ちる。
迅速に息を整え、再び痛みを気力で消していく。
咲弥の事情などお構いなしに、スイは口を開いた。
「シャーロット――あの男の血を継ぐお前こそが、もっとも不浄であり、よき贄であったのに……己の使命すら果たせぬ者が、なぜまだ私の眼前に立つのです?」
「お母様……私は……」
「お前もまた、心の一隅では願っていたはず。傲慢で薄汚い皇妃達、自らを選ばれし者だと錯覚した腹違いの兄姉達――あと少しで、殲滅できたのですよ」
シャーロットが両腕を下げ、すっと身を縮めた。
寒さに凍えるかのように、彼女の肩と足が震えている。
表情が見えずとも、萎縮しているのが容易にうかがえた。
気弱な性格を思えばこそ、咲弥の胸はちくりと痛む。
母親を止めたいと願い、勇気を振り絞ったに違いない。
だがスイは呆れ気味に首を横に振り、歪な声を紡いだ。
「もうよい。私が帝国を終焉へと導く」
「わ、わた、私は……お母様に……」
「失せろ。役立たずの穢れめ」
スイの暴言に、咲弥の心臓が大きく跳ねた。
スイは冷徹な声色で続ける。
「皇子としての力や才気はなく、贄としての役目も果たせぬお前の存在など、もはやあの男が私を縛りつけるためだけの枷でしかありません――愚かで出来損ないのお前が、本当に我が子なのかどうか、疑わしくすらもある」
「――っ!」
スイの発言を聞き、咲弥ははっと息を呑んだ。
「お前のような愚図――生まれてこなければよかったのに」
信じられない発言に、咲弥の思考が停止した。
からっぽになった頭に、ふと古い記憶がよみがえる。
まだ五歳くらいの頃、母親の誕生日にプレゼントを贈った思い出――朧気になったところは当然あるが、とても鮮明に覚えている部分も多い。
なぜならその日、咲弥はとある事件を起こしたからだ。
咲弥はよく祖父に連れられ、山へ散歩に行っていた。
虫や動物などのこと、植物に関するあれこれ――
祖父から多くを学び、幼い咲弥は知識を吸収していく。
それが要因の一つだとも言えるが、単純に幼さゆえの思慮不足なのは否めない。
山で見つけた綺麗な花を、母親に贈りたいと考え、咲弥は一人で山へと入った。花を発見したまではよかったのだが、そこで問題が発生する。
探すのに必死だったせいで、迷子になったのだ。
日も暮れ始め、森の中は次第に暗くなっていく。
咲弥は怯え、その場から動けなくなってしまった。
結局、祖父に救出され、事なきを得る。
その日は、両親にこっぴどく叱られた。
だが、その後――
事情を知った母親が、咲弥を抱き締めながら言った。
『素敵なプレゼントを、ありがとう。嬉しい。でもね、私はもう、あなたからちゃんとプレゼントをもらっているのよ。私のところに、咲弥が生まれてきてくれた……それが、私にとっては、一番のプレゼントだからね』
いまだ記憶に残っている、母親の言葉だった。
母親の顔、表情、声――一際、鮮明に脳裏に浮かぶ。
咲弥はスイを見つめ、我知らず呟く。
「それが、母親の言葉か――」
胸の奥に、強烈な熱を覚える。
咲弥は心の底から、怒声を放った。
「母親が子供に、言っていい言葉じゃないだろうがぁあ! なんなんだよ! 心配そうにずっと、シャーロット様の手を握っていたじゃないか!」
「呪いの進行を調べるため――ただ、それだけのこと」
スイの淡々とした声音に、咲弥はより怒りが込み上がる。
咲弥は奥歯をぐっと噛み締め、ふと気づいた。
怒りによる影響か、謎にエーテルが精製できている。
咲弥は少し、獣じみた深呼吸をした。
「まずは、その女神の力……消滅させます」
咲弥は言い捨て、一気にスイへと向かう。
はらわたが煮え返っていたものの、咲弥は冷静だった。
視野は広い。かすかな物の動きが、はっきりと見えた。
おそらくは、エーテルによる効果に違いない。
オドを鍛えれば、体に関するあらゆる面が向上する。
それは当然、エーテルとて例外ではないのだ。
スイの手が、ゆっくり動いた。ツルが一斉に迫ってくる。
かわせるツルは避け、無理そうなツルは黒爪で裂く。
引き裂く感覚もまた、通常時とは異なっていた。
黒爪の切れ味が、数倍に跳ね上がっている。
(……いける!)
完全に女神の力が馴染めば、予想もつかなくなる。
いくらエーテルといえども、勝機を失する危険性が高い。もっと言えば、奇跡的に発現したエーテルが、あといったいどのくらい持つのかわからなかった。
もし尽きた場合、また精製が可能なのか――
さすがに、期待は抱けそうにない。
次の攻撃を最後に、咲弥はすべてをかけるしかないのだ。
しかし、相手も黙って静観しているわけではない。
馴染みつつある力を、スイは次から次へと行使してくる。
「ぐぅ……っ!」
鋭利なツルが迫り、鈍器みたいなツルも襲いかかる。
さらに槍のごときツルに、爆発を生じさせる花粉――
スイの多彩な攻撃を受け、咲弥は目を大きく見開いた。
エーテルを失いたくない。下手な反撃はできなかった。
咲弥はすべてを掻い潜りつつ、エーテルの残量を調べる。
とはいえ、あくまでも感覚的なものではあった。
(たぶん、あと三回くらいの余力ならあるはず……)
やや希望も込めているが、咲弥はそう見当をつける。
スイとの距離を目で測り、実体のあるツルの状況に加え、不測の可能性を考慮しておく。敵はたった一人だが、まるで複数人を相手に戦っている心境だった。
咲弥は迷わない。自分を信じて進む。
仲間と日々研鑽を重ね、師に一から叩き込まれ、帝国軍の訓練にも参加した――どれも厳しい修行ではあったものの、すべて血となり肉となってくれている。
咲弥とスイの距離は、またたく間に縮まっていた。
(絶対――人に戻して、罪を償ってもらいます!)
咲弥は決意を胸に秘め、スイの攻撃をかわしていく。
スイの人ならざる顔に、かすかな険がこもった。
咲弥の身のこなしに、若干の怯えが見え隠れしている。
「よもや、これほどの者だったとは……」
スイが淡く輝いた右手で、はらりと虚空を薙いだ。
咲弥は目を剥き、ほんのわずかに体が硬直する。
スイの傍に、赤と青の禍々しい気配を醸した花が咲く。
どこか彼岸花を思わせる花――すべてではないが、花糸の先端部分が輝きを放ち、周囲にあるマナを吸い込んでいく。すると、気温が途端に著しく下がった。
咲弥は嫌な胸騒ぎを覚える。
「まずい!」
咲弥は即座に、防御の態勢に入った。
初めに光っていた部分は、おそらく雌蕊に違いない。
雌蕊の光りが消えるや、今度は雄蕊から蛍みたいな光球がふわりと舞い上がる。
光の粒がスイの体へ流れ込んでいく。瞬間――
「近づくな」
スイが勇ましい声を放ち、咲弥のほうに手を向けた。
咲弥をめがけ、赤と青が入り混じる光芒が伸びてくる。
咲弥は冷静に、間合いをはかった。
物理的なものでなければ、白爪で裂ける。
いかに女神の力といえども、それは例外ではない。
しかも今は、エーテルを身に纏っている。
(これで消費しても、あと残り二回分……!)
咲弥は冷静に対応する。しかし、失念していた。
白爪に裂かれる寸前で、スイの放った光芒が花火のごとく破裂する。散った光の線が咲弥の周囲に落ち、またたく間に人型の植物を誕生させていった。
多種多様な木造の武器を、それぞれが所持している。
その姿はどこか、帝国軍の兵を彷彿とさせるものだった。
(なんで、考えなかった……? あたりまえじゃないか)
今になってようやく、咲弥は理解に達した。
白爪の力を、スイはもちろん知っている。
出会って間もない頃に、咲弥自身が解説したのだ。
もっとも、さきほど白爪空裂きを身に浴びてもいる。
警戒するのは至極当然であり、対策を講じてくるのは別に不思議でもなんでもない。きっと通常時であれば、そこまできっちりと思考が及んでいた。
儚いエーテルに意識を奪われ、どうしても焦ってしまう。
ただの言い訳に過ぎない。咲弥はギリッと奥歯を鳴らす。
事情はどうであれ、人型の植物が襲いかかってくる。
無駄に攻撃はできない。咲弥はひらりとかわしていく。
エーテルのお陰で、迫る攻撃の軌道はよく見えていた。
それ自体は嬉しい誤算ではあったが、あまり好ましくない事実もいくつか含まれている。まずさきほどの防衛により、貴重な一回分のエーテルが消え失せていた。
そしてさらに、徐々にエーテルが失われつつもある。
おそらく、身体能力の強化で消耗しているに違いない。
なかば自動的なもののため、止めることはできなかった。
(くっ……急がなくちゃ)
風が斬られる音を聞きながら、注意深く活路を探る。
だが、そんな希望はどこにもない。
最悪なのは、どんどん増え続ける人型の植物にある。
同士討ちを狙ってもみたが、あっさりと再生していた。
女神の力が消えない限り、増殖するのかもしれない。
(くっそ……これじゃあ、どこも進めなくなるぞ)
人型の植物が咲弥の進路を奪い、加えて退路をも奪う。
自動、あるいはスイの意思によるものか――
どちらにしても、状況は一気に悪化していく。
咲弥の抱く焦燥感が、大きく膨れ上がる。
それが、よくなかった。
「し、しまっ……!」
ついに、回避に限界が訪れた。
周囲を囲む人型の植物が、一斉に攻撃へと転じる。
逃げ道など、いっさい見当たらない。
とはいえ、黒爪を用いれば切り抜けられる。
咲弥はなかば、諦めの境地で黒手を高く掲げる。
そのとき――上空から黒い影が落ちてきた。
「烈火の紋章第八節、猛る残火!」
青い炎に包まれた大剣が、咲弥の前を駆け抜けていく。
人型の植物が斬られ、次々と青い炎に包まれる。
大柄な男が眼前に立ち、逞しい背を咲弥に見せた。
「咲弥殿! ここは、お任せください!」
「ジェラルドさん! でも、体が……!」
「ふっ……この程度の怪我で動けなくなるようでは、とても大将軍など務まりません。咲弥殿には、何か策があるご様子――ならば、私が道を切り開きましょう」
ジェラルドは言いながら、人型の植物を灰へと変えた。
ほんの一瞬だけ悩み、咲弥は再びスイを目指していく。
たとえジェラルドが、虚勢を張っていたとしても――
彼の意思を無駄にはしたくない。
「その白爪は――ひどく危険なもの」
スイは呟き、地から二本の大きな木を生みだした。
立派な葉をつけた木の幹がぐるりと動き、まるでほうきで掃くようにして咲弥に襲いかかってくる。跳べば回避できる可能性はあったが、追撃されたらまずい。
空中では、身動きが取れなくなるからだ。
一度、後退するべきか――それも、あまりよくない。
きっと近づかれたら最後だと、スイはそう認識している。
だから物理的な方法で、咲弥の接近を拒んでいるのだ。
ここで咲弥が退けば、次の一手をスイに与えてしまう。
咲弥は目を見開き、前方をじっと凝視する。
そこに見える、小さな希望――咲弥ははっと気づいた。
(いや、そうか! 逆に利用してやる!)
薙ぎ払われた木を、咲弥はわざとその身で受け取る。
想像以上に硬い。だが、耐えられないほどではなかった。
軍の耐久訓練で、楽な受け方は学んでいる。
咲弥はそのまま、大きく空へ弾き飛ばされた。
「咲弥殿ぉおおおお――っ!」
ジェラルドの悲鳴が、かすかに聞こえてきた。
問題はない。悪くない位置にまで飛ばされていた。
咲弥は空色の紋様を描き、後方に右手を伸ばして唱える。
「水の紋章第二節、天空の砲撃!」
咲弥の右手から、青く煌めく一筋の光が放たれた。
高い場所に恐怖していた頃とは、もう違う。
今の咲弥には、空中でできる手段などたくさんある。
エーテルでの紋章術は、想像以上に凄まじかった。
咲弥の体は紋章術の衝撃で、勢いよくスイへと飛ぶ。
「あと……一回!」
エーテルを扱わないまま、オドのみの使用はできない。
こればかりは、仕方ないと諦めるしかなかった。
スイに近づくにつれ、よりはっきりと見えてくる。
スイの表情が、ひどく強張っていた。
「愚かな」
宙に浮くスイの背後に、大きな樹木が瞬時に生えた。
無数の枝が編み込まれ、頭上から襲いかかってくる。
おそらくは、はたき落とすために違いない。
咲弥は状況を把握してから、スイに語りかけた。
「そういえば、白手についてのご説明はしましたが……逆に僕の黒手は物理的なものであれば、すべて引き裂けるほどの力があります」
聞こえているのか、もちろん咲弥にもわからない。
ただスイの顔が、より一層強張った形へと変化した。
「言い忘れていましたね。すみません」
咲弥は優しい声音で言い、スイに微笑んだ。
自分の勝ちを悟ったからか、あるいはもっと別の何か――スイが我が子に浴びせたひどい暴言を、さすがに許せないと思ったからなのかもしれない。
深く反省してほしいと、そう願いながら――
咲弥は両手に、ありったけのエーテルをつぎ込んだ。
防衛に回れば、エーテルが尽きる。
ならば――咲弥は空色の紋様を、宙に浮かべた。
「黒白の籠手、限界突破」
まず左手を手刀の形に変え、白爪を綺麗に並び揃える。
エーテルは黒白に宿り、咲弥の体からは消えていた。
しかし、もうそれで構わない。充分だった。
咲弥は再び、空色の紋様を描いてから唱える。
「黒白巨大化、限界突破」
迫り来る樹木を、咲弥は巨大な黒爪で引っかく。
それは裂くというよりは、消し飛ばしたのにも等しい。
迫っていた大樹の一部が、大きく消滅している。
もうスイとの間を阻むものは、何一つとしてない。
咲弥はエーテルが宿った白手を、頭上より高く掲げた。
「女神の力なんか、吹き飛んでしまえっ!」
咲弥は叫び、巨大な剣のごとき白爪を振るう。
全身全霊をかけた白い光が、スイをまるまる飲み込んだ。
「あぁああああ――っ!」
スイがけたたましい悲鳴をあげた。
咲弥は着地したあとも、スイのほうを注意しておく。
油断などできない。周囲は深い土煙に包まれている。
スイの生みだした植物が、次第に枯れていった。
「……はぁ……はぁ……」
まだ何が起こるかわからない。咲弥は呼吸を整えた。
そして――
「……よし! やったぞ!」
咲弥は心から、歓喜の声を放つ。
土煙が晴れ、スイは地面に倒れ込んでいる。
その姿は、異形と化す前の人へと戻っていた。
「うぅ……うっ、うぅう……」
スイがうめき、震えた手で体を起こしていく。
スイの顔は悔しさ、あるいは絶望に染まっていた。
咲弥は呼吸を整え、スイに話しかける。
「もう……女神の力はありません。諦めてください」
「くっ……まさか、これほどの……」
スイの呟きを、ゆっくりとした拍手が遮った。
「見事だ――冒険者にしておくには、実に惜しい逸材だ」
拍手と声を振り返れば、そこには皇帝陛下がいた。
鷹揚に歩み、こちらへと向かってきている。
激しい物音がスイから響き、咲弥は慌てて前を向いた。
スイは宿り木を手に、険しい表情で睨んでいる。
「寄るな! 寄るなぁあああ――っ!」
スイの悲鳴じみた怒声に、咲弥は内心どきりとした。
皇帝陛下ベルガモットが、咲弥の近くで立ち止まる。
それから小さく両手を広げ、呆れ声でスイに問いかけた。
「いったい、何が気に食わなかった?」
「くっ……」
「スイよ。お前の心を聴かせろ」
ベルガモットが腕を組み、スイの応答を待っている。
スイは視線を伏せ、絞り出すような声音を紡いだ。
「あなた様には、おわかりになりません」
「がっはっはっ! よい。それでも、申してみよ」
「あなた様の声が、耳障りなのですよ」
「声……?」
「いいえ……すべてにおいて、嫌悪しております」
ジェラルドの話によれば、ベルガモットが心底愛している妻はスイのみであった。そこにある真偽は、さすがに面識の浅い咲弥では確かめようがない。
ただシャーロットを救うための対策を考えれば、その話が嘘とも思えなかった。
しかし、当人同士でしかわからない部分もあるだろう。
これほどまでに、スイが狂う何かが――
「嘘つき……」
スイは消え入りそうな声を吐いた。
咲弥は小首を傾げる。
「おわかりになりますか……?」
「何を、だ?」
「ほかの女に紡いだ声で私に囁き、ほかの女に触れた指先で私の肌を撫で、ほかの女を愛でた眼差しで私を見つめる――そのたびに、私の心は崩れ、壊れ……」
震えたスイの言葉を聞き、咲弥は漠然と理解する。
それは確かに、皇帝陛下たる責務なのかもしれない。
そう簡単に言えはするが、スイも一人の女性なのだ。
「つまりは、嫉妬か……がっはっはっ。愛い奴め」
ベルガモットの口調は、少しばかりおどけていた。
スイは再び、ベルガモットを睨みつける。
彼女の眼差しは、ぞっとするくらい殺意に満ちていた。
ベルガモットがため息をつく。
「そこまで余を憎むのであれば、直接……余をやりにくればよかろう。なにゆえ、シャーロットまでをも巻き込んだ?」
「帝の血が流れており、もっとも傍にいて不思議ではない者――呪いの進行を調べるためには、その子が最適でした」
つらい事実を知り、咲弥はふとシャーロットを見た。
うつむいた彼女の顔は、ひどく曇っている。
ベルガモットが訝しげな声色で、スイに問いかけた。
「本当に、それだけか?」
「……時折、あなた様の面影が……ちらつくのですよ」
スイが吐き捨てるように放った言葉――
咲弥の胸がきつく、心苦しいほどに絞めつけられた。
(ああ……この人は……もうどうしようもないくらいに……怨んでいるんだ)
そんな感想を、咲弥は心の中でもらした。