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神殺しの獣  作者: Key-No.92
第四章 無数にある分岐点(下)
192/222

第二十話 異形となりし者




 咲弥は茫然自失となり、無言のままスイを見据えていた。

 彼女が何を発言したのか、曖昧(あいまい)にしか記憶できていない。


 咲弥がまず疑ったのは、自分の耳であった。しかし周辺に漂う不穏な空気、またはシャーロットの(おび)えた姿勢からも、スイが不振な発言をしたのは間違いない。

 ジェラルドが戸惑った様子で、やや震えた声音を(つむ)いだ。


「ス、スイ様……?」

「やはり少々、発動に時間がかかり過ぎましたね。しかし、帝国を壊滅させるくらいともなれば、それも(いた)し方なきこと……あと、もう少しでしたのに……」


 スイは沈んだ表情を伏せ、両手を胸の前まで持ち上げた。

 まるで水を(すく)うような手のひらの上に、無数の緑色をした光線が(つど)い、やがて色鮮やかな光の球体が生まれる。そして突然、光球は閃光を放って弾け飛んだ。

 咲弥は(まぶ)しさに目を細めるも、視線だけは外さない。


(……あれは、まさか……)


 咲弥は静かに驚きながら、不可解な疑問に苦しんだ。

 まったく同じではない。だが、似た代物を知っている。

 ジェラルドが再び、おずおずと(つぶや)いた。


「それは、宿り木……? なぜ、スイ様が……?」

「宿り木とは、(しか)るべきとき、然るべき場所を訪れるもの。トネリコ大聖堂にも過去、同じ代物が存在しておりました。ですが、役目を終えた宿り木は、光の泡となって消え去り、また新たに私のもとを訪れた――ただ、それだけのこと」


 スイは宿り木を、そっと口のほうへ引き寄せていく。

 どこか赤子をあやすみたいな、優しい振る舞いであった。


「宿り木を手にした瞬間、不思議とすべてを理解しました。そう……女神ユグドラシール様は、初代皇帝陛下に次ぎ――今度は私をお選びくださったのです」

 スイは唇に薄い笑みを張りつけた。

「とても奇妙な話ですね。初代皇帝陛下は国を(まと)めるため、宿り木をお使いしましたが……私はその帝国を滅ぼすため、宿り木をお使いするのですから」


 スイの語りに激しく混乱させられ、咲弥は眉をひそめた。

 彼女が口にした歴史は、帝国軍事図書館に収められていたどの資料にも記されていない。当然、教皇ゼクセンのほか、ジェラルドからの話にもなかった気がする。


 そもそも宿り木に関しては、灼熱の大地に住まう人々に、女神ユグドラシールがもたらした恩恵――そういった童話、あるいはお伽噺(とぎばなし)程度のものしかない。

 ユグドラシールと同様、正確な記録はどこにもないのだ。


「初代皇帝陛下が……まさか、そんな……?」


 やはりジェラルドもまた、驚きを隠せないでいる。

 うろたえるジェラルドに、スイは落ち着いた声で述べた。


「知らぬも仕方なきこと……彼は宿り木の力を使い、多くの邪魔者を排除していった。そうしてついに皇帝となる目的を達成したのち、トネリコ大聖堂を建て、ユグドラシール教を創設――純粋無垢な者を教皇に据え、不都合な事実はすべて抹消した。この宿り木から、そう教えていただきました」

「まさか……そのような事実が……?」


 ジェラルドが(いぶか)しげな顔を見せた。咲弥は首を(ひね)る。

 隠蔽などする必要性が、特に感じられない。むしろ女神に選ばれた者ともなれば、それこそ他者から英雄視されても、なんら不思議ではないと思える。

 一端だけ聞かされても、内容がうまく伝わってこない。


「おかしな話に思えますか……?」


 スイの問いに、咲弥ははっとなった。

 おそらく、抱いた疑問を覚られたというわけではない。

 スイの視線は、咲弥へは向いていなかった。


「彼は……(おび)えていたのですよ。あまりにも強力な宿り木に……そして、闇に(ほうむ)り去った自らの行為に――巨大な帝国のどこにも、それらしい記述は残されていない。それだけで、彼がどれほど恐怖していたのか、おわかりになるでしょう」

「にわかには……信じ難いお話ですな……」


 ジェラルドの否定に、スイはくすりと微笑んだ。


「彼は所詮、もう過去の者。それでも構いません」

「スイ様! そのような発言は……おやめください」


 所縁の薄い咲弥には、あまりぴんとくる内容ではないが、帝国が自国だと言える者からすれば、スイの発言には複雑な心境と(いきどお)りを覚えても仕方がない。

 明らかに、帝国の始祖を軽んじていたのだ。


「都合の悪いことは、なかったことにする……」


 スイの空色の瞳が、なにやら暗い色を(たた)えた。

 その視線は、現皇帝陛下ベルガモットへと向いている。


「本当、血筋を感じさせます……ね?」

「ほう……?」


 ベルガモットは、(うな)りに近い相槌(あいづち)を打った。

 スイの険悪な眼差しが、今度はシャーロットへと向く。


「シャーロット。お前にも、本当にがっかりしました」

「お、お母様……」

「せめて……お前だけでも、役に立ってくれていれば……」


 咲弥の心臓が一度、静かに、しかし力強く跳ねる。

 なんとも悲しい発言だと、咲弥にはそう感じられた。

 シャーロットは顔をうつむかせ、口を(つぐ)んでいる。

 スイがため息をつき、首を小さく横に振った。


「本当は()()()()――滅びゆくこの帝国を、実際に我が目で眺めていたかったのですが……それはもう、仕方なきこと」


 宿り木が突然、深緑色をした禍々(まがまが)しい閃光を放った。

 スイの全身が同色の淡い光に包まれ、彼女の手からほんの少し離れた宿り木と一緒に、宙へ浮かび上がっていく。ほぼ同時に大地が揺れ始め、生温い風が吹き――

 咲弥は嫌な予感を覚え、肌に奇妙な(しび)れを覚えた。


(いったい、何が……)


 咲弥が胸中で(つぶや)いた瞬間、無数の植物が石の地面を激しく突き破って伸びていく。それらは編み物のように絡み合い、一呼吸の間にスイの背後で壁を形作った。

 咲弥はなかば茫然と眺め、すぐさま認識を改める。


(……ただの壁じゃない。これは、魔法陣……?)


 そう呼称してもいいものか、実際のところわからない。

 少なくとも、魔物が扱う魔法陣ではなかった。

 偶然できた模様が、ぼんやりと魔法陣に見えただけ――


(いや、そうじゃない!)


 咲弥は目を大きく見開いた。

 植物の壁に、色とりどりの花々が一気に咲き乱れていく。まるで万華鏡みたいに場所を移り変わり、とても色鮮やかな模様をいくつも描いている。

 数秒程度の出来事に、咲弥の判断は少し遅れをとった。


「シャーロット様! 私の後ろに……!」

「ジェ、ジェラルドおじ様!」


 ジェラルドが素早く、シャーロットを護る態勢に入った。

 皇帝陛下ベルガモットは、腕を組んで静観を続けている。

 流れるように状況を確認し、咲弥はラクサーヌを向く。


(くっ……)


 ラクサーヌの魂が消え、いずれ肉体も死ぬ可能性は高い。

 たとえそうだとしても、咲弥はラクサーヌの左腕を(つか)んで背負い込んだ。ただ自分よりも遥かに高身長なため、両足をずるずると引きずることになる。


 それでも、咲弥はラクサーヌをスイから遠ざけていく。

 これ以上の被害を、ラクサーヌに浴びせたくないのだ。


(少しでも、遠くに……安全なところへ……)


 瞬時に場所を選び、移動しながらスイの様子をうかがう。

 徐々にスイの姿が、人ならざるものへ変貌を()げている。身長に変化は見られないものの、頭髪が植物のツルとなり、肌がところどころ樹木化していた。

 化け物といった容姿ではなく、どこか神々しさがある。


(女神……ユグドラシール……?)


 咲弥はふと、そんな感想を抱いた。

 咲弥は想像を振り払い、思考を切り替える。


 ラクサーヌが作った呪術陣は、幸いまだ機能していた。

 だから下手に外側に出すのは、さすがにまずい。

 呪術陣の際の辺りで、ラクサーヌを横たわらせておいた。


 一秒経つごとに、張り詰めた空気が濃くなっている。

 安堵(あんど)する暇などない。咲弥は即座に、ジェラルドの(そば)まで素早く戻っていく。黒白を解放してから警戒態勢へと入り、異形の姿に変わるスイをじっと見据えた。


 スイの変貌は、とても(ゆる)やかになりつつある。

 そして――スイはついに、完全な人外となり果てた。

 彼女は深呼吸をおこない、(いびつ)な声音で述べる。


「はぁ……さあ、終わらせましょう。すべてを――」

「これが……宿り木の力……?」


 ジェラルドの(つぶや)きに、咲弥も息を呑んだ。

 スイが全身に(まと)っている、力強くも流麗なエネルギー――それはまぎれもなく、オドとマナの融合エネルギーとなる、エーテルで間違いない。

 問題はエーテルという存在ではなく、その()にあった。


(どの(いき)まで達した……エーテルなんだ……?)


 本気の紅羽ですら、まだ届かない領域だと思えた。

 そんな代物を、スイはたやすく身につけている。

 これが夢であってほしいと、少しばかり現実逃避をした。

 咲弥は不意に、過去の記憶が鮮明によみがえる。


(これって……なんか、シェリアさんと似た……)


 ネイの故郷で起きた、悲しくつらい事件――

 魔物化したシェリアと、スイの変貌は近い気配があった。異なる点は、シェリアの容姿は魔物的な要素が強かったが、スイは精霊らしい印象を抱かせる。


(神と魔による違い……なのか?)


 推察の正否(せいひ)は不明だが、危険な状況に変わりはない。

 また、最悪な問題点がある。相手はラングルヘイム帝国の第四皇妃スイ――現皇帝陛下ベルガモットの妻であり、皇女シャーロットの母親なのだ。

 人外に()ちたとしても、事実は何も変わらない。


「陛下ぁ! ご指示を!」


 ジェラルドの張った太い声が、大きく響き渡る。

 咲弥と同じ懸念を、ジェラルドも抱いていたに違いない。

 咲弥はスイを見つめたまま、指示を待ち続けた。


「スイの処刑は(まぬが)れん――」


 背後から聞こえた重い言葉に、咲弥の胸がじわりと痛む。

 ちゃんとわかっている。スイは帝国の崩壊を計画、そして実行に移したテロリストなのだ。もっと言えば、その行為は世界中にまで被害をもたらしかねない。

 また直接的ではないにしろ、すでに被害者が出ている。


 理解してもなお、悲しさばかりが溢れた。

 罰を受ける必要はあるし、スイは(つぐな)わなければならない。

 ただ叶うなら、死刑以外の方法が望ましかった。

 苦い心境のなか、再び皇帝陛下の威厳に満ちた声が届く。


「――だが、処すことは許さん。生かしたまま捕縛せよ」


 真意は当然、咲弥にはかり知れるものではない。

 それでも、胸の中を漂う嫌な気持ちが晴れ渡っていく。

 ベルガモットの命令は、咲弥からすれば理想的だった。

 人は殺したくない。

 たとえ、異形と化していたとしても――


 とはいえ、難しい話ではある。現実はいつも、人の願いや想いとは別の答えを突きつけてくるからだ。それでもまた、諦めるわけにはいかない。

 糸に等しい細い道でも、咲弥は進みたかった。


 咲弥は気を改め、スイの捕縛方法を思案する。

 再び魔物化したシェリアを思いだし、ふと連想が働く。

 あの日、水の精霊はシェリアを人の状態へと戻した。


 当時は理解に苦しんだものだが、今の咲弥には漠然とした答えが浮かんでくる。きっとシェリアが身に(まと)っていた謎のエネルギーを、消し飛ばしたからなのだ。

 もし咲弥の解釈が正しければ、スイもまた――

 思考が(いた)ったとき、ジェラルドの声が耳に入ってきた。


「シャーロット様。陛下のお(おそば)へ……」

「ジェラルド、おじ様……」

「ご安心を……さあ」


 一瞥(いちべつ)程度だったが、ジェラルドは優しげに微笑んでいた。

 対してシャーロットは、不安そうに顔を(ゆが)めている。

 咲弥がスイへ視線を戻すと同時に、駆け足の音が響く。

 隣にいるジェラルドが、ため息をもらした。


「やれやれ……それでもなんとかするしかないのが、大人のつらいところですな」


 咲弥にだけ伝わる声音で、ジェラルドが(ささや)いてきた。

 咲弥は笑えない心境ではあったが、少し苦笑する。


「はい。それでも……僕は、頑張りたいと思います」

「――承知。では……」


 スイがくすりと笑った。


「お覚悟は、決まりましたか……?」

「私は、ラングルヘイム帝国を護る剣であり盾――ですが、実際は……()()()()()()()()()に、これまでの人生ずっと、血の(にじ)むような努力をしてきたつもりです」


 ジェラルドは大剣の剣尖(けんせん)を、スイへと向けた。


叛逆者(はんぎゃくしゃ)スイ――国家転覆罪及び、第七皇女シャーロット様殺人未遂により、帝国軍第二大将軍ジェラルド……いざっ、参る!」


 ジェラルドは大剣を構え直し、深紅の紋様を宙に描く。

 スイは口に微笑を(たた)え、流れるように動き始めた。

 宿り木が輝くや、複数のツルが鞭のごとく迫ってくる。


「烈火の紋章第六節、灰燼(かいじん)の神剣」


 ジェラルドの大剣に、真っ赤な炎が(ほとばし)る。

 襲いかかるツルを、ジェラルドは一呼吸の間に斬った。

 防御に(てっ)する咲弥も、黒爪でツルを引き裂く。


(これは……っ!)


 ただの植物ではない。裂く瞬間、金属音が聞こえてきた。

 鉄に近い硬度が、鞭みたいな植物に備わっているらしい。


 咲弥はジェラルドを脳裏(のうり)に浮かべ、素直に賞賛する。

 物質をすべて裂く力を秘めた黒手ではなく、ジェラルドは重量感のある大剣で軽々と斬っていた。そこから彼の(たゆ)まぬ研鑽(けんさん)が、ぼんやりとうかがい知れる。

 そうはいっても、難しい芸当に違いはない。


(黒爪でもぎりぎりなんだ……)


 多勢に無勢のごとく、ツルの数があまりにも多い。

 さすがのジェラルドも、ツルをいなし始めていた。

 すべてを斬れるわけではない。苦戦を()いられている。


(距離が離れている……!)


 分断されるのはまずい。

 咲弥はツルを裂き、ジェラルドの背後に移った。

 ジェラルドの死角から迫るツルを、黒爪で引き裂く。


(……いける!)


 ジェラルドクラスの大剣を扱う者は、さほど多くない。

 軍の訓練でも、ちらほらと目に映る程度でしかなかった。獣人並みに、体格と筋力に優れている必要がある。咲弥では持ち上げることですら一苦労なのだ。

 そのため、数々の武器を扱わされたが、大剣や大斧などは除外されていた。


 しかし帝国には、帝国式の型というものがある。

 ジェラルドも当然、その型を使って対処していた。

 それならば、呼吸を合わせるのは不可能ではない。

 ジェラルドの動きを注視して、咲弥は黒爪を振るう。


「咲弥殿! 私をお気になさらず!」

 ジェラルドは言いながら、深紅の紋様を浮かべた。

「烈火の紋章第八節、(たけ)残火(ざんか)


 深紅の紋様が弾けるや、大剣が青い炎に包まれた。

 ジェラルドが叫ぶ。


「くらえ!」


 ジェラルドが一気に、複数のツルを横に両断した。

 すると激しい燃焼音を響かせ、斬られた部分から青い炎が駆け抜けるように、ツルを伝って包み込んでいく。(すさ)まじい火力に、ツルは火の粉を舞い散らしている。

 炎の(そば)にいない咲弥ですら、肌が焼かれそうなほどだ。


 スイの顔に(けん)がこもり、細い腕を虚空に漂わせる。

 まだ炎にやられていないツルがうねり始め、やがてそれは毛玉のごとく丸まった。炎が到達するや(いな)や、ボトッと音を立てて、ツルの球体が切り離される。


(……っ!)


 咲弥は状況を確認しつつ、体が自然と動いた。

 炎を恐れたスイに、わずかな隙が生じている。

 咲弥は空色の紋様を浮かべ、白手を高く(かか)げた。

 白爪にオドを込め、咲弥は唱える。


「白爪空裂き、限界突破」


 空色の紋様が砕けた瞬間、咲弥は白爪で虚空を裂く。

 猛火をも吹き飛ばす衝撃が、スイの全身を貫いた。

 スイは驚愕の表情を見せたあと、静かに微笑みを(たた)える。


「恐ろしい――女神様の力が、抜けるがごとく感覚でした」

(そ……そんな……)


 咲弥はくっと息を詰め、奥歯を()み締めた。

 スイのエーテルは、減少すらもしていない。風に(あお)られるローソクの火みたいに消えかけはしたが、またすぐにもとの状態へと戻ったのだ。

 信じたくはない事実に、咲弥は己の無力を呪う。


 スイのエーテルに対抗するためには、咲弥程度の()()では歯が立たないのだろう。おそらくは同じエーテルを扱えば、想像通りの結果を得られた可能性はある。

 ただ今の咲弥は、エーテルが()()()()()()()()


 空白の領域で紅羽を救って以来、どんなに訓練をしても、エーテルを生みだせないのだ。あのときは必死だったため、奇跡的に上手くいったに過ぎない。

 咲弥本人でさえ、どう実現したのか首を(ひね)るほどだった。


(エーテルと限界突破の(あわ)せだったら……)


 仕方のない話だが、悔しさから心の中で泣き言が漏れる。

 スイは当然、咲弥の事情など()まない。

 スイは手のひらに、小さな花を咲かせた。


「では、次は私の番ですね」


 咲弥の背がぞっと凍りついた。

 無数の植物のツルが、地面を突き破って出てくる。ツルは(いた)るところに色鮮やかな花を瞬時に咲かせ、吐き出すように花粉らしき何かをまき散らした。


 咲弥は目を大きく見開き、肌が一気に粟立(あわだ)つ。

 心理に影響を及ぼす系統だと勘繰(かんぐ)ったが、そうではない。

 極々小さな粒子の一つ一つが、バチバチと弾けていた。

 咲弥は即座に空色の紋様を描き、口早に唱える。


「清水の紋章第二節、()み切る盾!」


 発現した青白い光玉がお互いを繋ぎ合い、ひらひらとした水の防壁が生まれる。

 ほぼ同時に、爆竹みたいな破裂音が、そこかしこから鳴り響いた。やがて規模は大きさを増していき、咲弥達の周辺で強烈な大爆発が起こる。


 咲弥の視界はすべて、言葉に表し難いくらい綺麗な――

 とても色鮮やかな、赤みを帯びた空間のみとなっていた。




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