第十九話 最初で最後
咲弥は成功を強く祈り、息を凝らして見守った。
時間にすれば、きっとほんの一秒にも満たない。
そんな短い時のなか、焦燥感らしき気配が背後のほうから伝わってくる。
理由は想像に難くない。しっかりと理解できた。
赤キ神ノ執行は、皇女救出の作戦に組み込まれていない。それどころか、ジェラルドとラクサーヌはこの力に関して、存在すらも知らないのだ。
神殺しの獣が、神々から奪い取った力の一つ――
精霊と同様、軽々しく口に出してよい能力ではない。
つまりこれは、咲弥の独断専行であった。
(すみません。それでも……試させてください)
咲弥は心の中で謝罪して、樹木化しているシャーロットの肩先を凝視し続ける。
桎梏は本来、対象者の能力を完璧に封じる力だ。紋章術、魔法、呪術――どの力であれ、必ずなにかしらの源があって初めて発動する。
それは神が扱う力とて、例外ではないはずだった。
もちろんシャーロットの全能力を封じたところで、受けた呪いにまで影響が及ぶはずもない。むしろ、呪いそのものは対象外となり、シャーロットの状態が、今よりもひどくなる可能性のほうが高いと考えられた。
そこまで理解していながらも、実行したのには訳がある。
限界突破という力を与えられていなければ、おそらくその発想にまでは至らなかった。自身のみならず、万物すべての限界をも超越できる天使からの贈り物――
無論、ただの思いつきでしかないのは否めない。
成功するかどうか、実際に試さなければわからないのだ。
咲弥は奥歯を噛み締め、さらに成功を強く祈る。
(桎梏の対象は、呪いそのもの――頼む!)
人の形をした赤き光達が、赤槍をシャーロットや枷となる部分へと突き刺した。
ほんの一瞬、時が停止したかのような感覚を覚える。
実際、神域にあるすべてがわずかに沈黙したのだ。
その直後、徐々に大きくなる地鳴りとともに、ぐらぐらと足場が震え始め、まるで悲鳴のごとく、自然界に属した物がざわついていく。中にはどこか、怨嗟の声らしき気味の悪いものも混ざっていた。
咲弥ははっと息を呑む。目を大きく見開いた。
シャーロットを拘束する枷に、ひび割れが生じていく。
咲弥は解放した黒手を、頭上よりも高く持ち上げる。
「いける!」
意気込んだ声を発したものの、安堵までにはまだ遠い。
あたりまえの不安が、ほかにもいろいろ残っているのだ。
一番の懸念は、呪いが消滅状態へと至れるかどうか――
桎梏は対象の全能力を完全に封じるが、生命活動にまでは影響を及ぼさない。そのため、一定時間経てば効力は切れ、もとの状態へと戻ってしまう。もし永続的にシャーロットへ呪いの効果が与えられていた場合、意味がないこととなる。
そうは思っても、もういまさら後には引けない。
咲弥は冷静に努め、慌てずタイミングを見計らった。
シャーロットの体を、傷つけるわけにはいかない。大樹に埋まっている両手足の先を、透視するように予想しながら、咲弥は一呼吸の間に枷を切り裂いた。
引っかいた大樹の一部が、ばらばらと崩れ落ちていく。
「シャーロット様!」
枷から解き放たれ、シャーロットがぐらりと倒れてきた。
咲弥はとっさに、胸の中へとシャーロットを抱き寄せる。
とてもか弱い感触が、腕や胸のほうから伝わってくる。
「ん……うぅ……あ、あなたは……あのときの……?」
意識が戻ったのか、シャーロットは儚げな声を紡いだ。
返答する前に、まずは確認しなければならない。
咲弥は樹木化していた箇所に、視線を滑り込ませた。
それはどこか、汚れが流れ落ちていく光景にも近い。
人らしい性質に、四肢の付け根から先へと戻っていく。
咲弥は成功したと確信した。呪いの根源は赤い葉をつけた大樹であり、そこから精神体を引き離しさえすれば、桎梏の効果が切れても呪いは再発しない。
「やった! これなら、後遺症も残らない!」
「私……いったい……」
シャーロットの呟きから、咲弥ははっと我に返った。
今は喜びに浸っている暇などない。かろうじて意識は取り戻せたみたいだが、自力で動ける状態になるのは、まだまだ時間がかかると思われる。
咲弥は悩む余地なく、シャーロットをお姫様抱っこした。
「きゃ……」
シャーロットが、か細い驚きの声を漏らした。
すぐ傍にある少女の顔に、咲弥は視線を据える。
少し気が弱そうな印象こそあるものの、やはり皇族なのは間違いない。その整った顔立ちからは、気品めいた雰囲気が強烈に放たれていた。今は恥じらいが先立っているらしく、ちょっと気まずいといった様子へと変化している。
一緒に照れている場合ではない。咲弥は口早に告げた。
「ご無礼をお許しください! すぐ離脱に入ります」
「咲弥! よくわからんが、よくやった!」
「シャーロット様! ご無事ですか!」
ラクサーヌに賞賛されたあと、ジェラルドから安否確認の声が飛んできた。
咲弥の肩越しに、シャーロットが背後を覗き込んだ。
「……ジェラルド、おじ様……?」
咲弥が後ろを向くや、ジェラルドが簡易的な敬礼をした。
「勇敢な者達と共に、救出に参りました」
「ばか! 話は後にしやがれ! 咲弥、早く離脱だ!」
ラクサーヌがジェラルドの腕を左手で掴み、咲弥のほうへ伸ばしてきた。
神獣からの攻撃がやんでいる。絶好の機は逃せない。
咲弥は全員に触れられている状態で――ぞっと怖気立つ。
「おい、どうした!」
ラクサーヌが焦燥感の宿った声音を放った。
咲弥は血の気が引く。ようやく、理解に達する。
訪れたときから、漠然と感じていた妙な違和感――
「……精神世界の解除が……でき、ない……?」
なんとか絞り出せた咲弥の言葉に、場が凍りついた。
ジェラルド達の顔が、一気に青ざめていく。
走馬灯のごとく、いくつかの理由が咲弥の脳裏をよぎる。
《贄を解す、罪深き闖入者――》
《二度、逃しはせぬ。愚かなる闖入者》
《我々が天罰を下そう》
《下等なる闖入者よ》
《苦痛の死をもって償え》
恐怖を覚えながらも、咲弥の思考は正常に働いていた。
ここは、神域――神獣の力による影響なのは間違いない。
対処方法などまったく思い浮かびはしないが、なんらかの手段で封じられているのであれば、おそらくそれを打破する筋道は必ずあるはずであった。
神に仕える獣といえども、理不尽ではない。
シャーロットを救出した事実からも、それは明白だった。
(そうだとすれば……いったいなんだ? わからない。この神域自体に細工されてるのか? それとも、閉じ込める力を持つ神獣がいる?)
答えの出ない憶測ばかりが、脳裏を無駄に飛び交った。
一つ確かなのは――
「離れるぞ!」
ラクサーヌがいち早く指示を飛ばしてきた。
現状、取れる方法はそれしかない。
「くっ……!」
咲弥はシャーロットを両腕に抱えたまま、ジェラルド達と一緒に走りだした。
理解不能な事態だが、嘆いたままではいられない。
咲弥は撤退しつつ、必死に思考を巡らせる。
(なんだ! いったい何が原因なんだ!)
そもそも、原理自体をほとんど把握していない。
本来、解除を強く望めば、精神世界からの離脱ができる。また黒白が強制的な遮断をした場合も同様、気がつけば現実世界のほうへと意識が戻っているのだ。
つまり帰還する境目に、何か異常があるに違いない。
(どんな異常……ドアに鍵をかける、みたいな……?)
また無駄に思考が巡り巡っていく。
まさか離脱を封殺されるなど、想定外の事態であった。
焦りと不安に胸が押し潰され、錯乱しつつある。
(くそっ! くそっ! あとちょっとなのに!)
咲弥の悲痛な思いを嘲笑うかのように、神獣の一体――
蛇龍ウルズヘッグが、水中から水面に飛び出してきた。
ウルズヘッグが口を大きく開き、素早く攻撃態勢に入る。
黒い紋様を宙に描き、ラクサーヌが大声で叫んだ。
「闇黒の紋章第八節、染める黒影」
小さな人型――目の白い部分以外、黒一色の物体が無数に湧き出てきた。
ほぼ同時に、ウルズヘッグの口から蒼い光線が放たれる。すると黒い人型が空中をひらひらと舞い、まるで蒼い光線を引き寄せるかのようにして吸い込んだ。
一定の量を吸い込むや、黒い人型は破裂して消え去る。
防御系統に属する紋章術に違いない。
そう認識するや、今度はジェラルドの詠唱が飛んだ。
「烈火の紋章第一節、灼熱の流星」
赤い流れ星のごとき一閃が、死角から迫ってきていた謎の衝撃波と追突する。凄まじい爆炎を巻き起こして、衝撃波の進行をぎりぎり阻止できた様子であった。
咲弥はごくりと息を呑み、全身の肌が粟立つ。
(あ、危なかった……)
不意の衝撃波を、まったく察知できていなかった。
ジェラルドが対処していなければ、確実にやられている。
撤退を再開しながら、咲弥は自分の行動を窘めた。
(シャーロット様を全力で護る。もっと警戒しろ)
つまりそれは、自分もまた護られる側にいることになる。
本音を言えば、護られるだけではなく、戦力の一つとして参戦したい気持ちはあった。とはいえ、シャーロットを腕に抱えたままではさすがに難しい。
ラクサーヌ達を頼もしく思う反面、申し訳なくも感じる。
それでも、咲弥は自分の任務に専念することにした。
全体を警戒しつつ、神獣達の猛攻撃を掻い潜っていく。
歩ける泉から脱したあと、進んできた道を戻っていった。
しかし、一秒経つごとに状況が悪化している。
神獣達の攻撃が、一向にやまないのだ。
(くそっ! まだ解除できる気配もないのに……!)
苛立ちが胸を掻き立て、ひどく息苦しい。
咲弥はふと、不吉な光を視界の端で捉える。
どこかレーザーに近い、赤く禍々しい光を発していた。
咲弥は瞬時に、赤い閃光の意図を汲み取る。防衛に徹するジェラルド達の死角を突き、見事な連携を瓦解させるための一撃なのだろう。
(なんだ……いったい、どこから……)
咲弥は困惑するも、自然と体が動いた。
幸い、シャーロットが咲弥の首に手を回してくれている。だからほんの一瞬であれば、左腕を自由に扱えそうだった。刹那の思考を経て、白爪で赤い一閃を裂く。
その瞬間、すべてを理解する。
もし咲弥がやらなければ、確実に誰かがやられていた。
そうなるように、神獣側が連携していたに違いない。
猛攻撃の中に潜まされた、とても小さな罠――
「咲弥殿ぉおおお! シャーロット様ぁあああ!」
それはまるで、全開の限界突破にも等しい光景だった。
ジェラルドが捨て身の覚悟で、大きな手を伸ばしている。
彼の渋い大人の顔が、絶望まじりに引きつっていた。
咲弥の視線は、ゆるりと別の方角へと向く。
誰もが対処できない衝撃波が、爆速で迫りつつある。
姿勢がとても悪い。白爪では間に合わないだろう。
ジェラルドの対処は待てない。
思い浮かぶ手段は、たった一つしかなかった。
(僕がシャーロット様を投げれば、僕だけがやられる……)
その後、どうなるのかはまったくわからない。
自分がやられた場合、どう神域を抜け出すのか――咲弥が死ねば強制的に解除されるのかもしれないし、反対にずっと残らされ続ける可能性もある。
どうしようもない。取れる手段など、もう限られている。
(くそっ……僕は……)
咲弥は右腕に力を込め、シャーロットを――
不意に左腰の辺りから、強烈な衝撃が発したのを感じた。
咲弥の視線が、するっと滑り込む。
ラクサーヌの呆れた表情が見えた。
「まったく……困った生徒だ……最初で最後の、さ」
そう言い、ラクサーヌは不敵に笑った。
咲弥の目もとが、大きく歪む。
吹き飛ばされながら、白手をラクサーヌへと向ける。
「ラク……」
ラクサーヌは黒い紋様を描いた。
その直後、彼の体は肩から腹部にかけて斜めに裂かれる。
ラクサーヌは虚ろな眼差しで、静かな声を発した。
「闇の精霊、シーカー。俺の魂、全部、もってけ」
「うわぁああああああああ! ラクサーヌさん!」
咲弥の叫びとともに、黒い紋様が弾け飛んだ。
周囲が瞬時に、黒く染められていく。
まるで世界が停止した空間に、青白い炎が生まれる。
虚空からぬるりと抜け落ち、闇の精霊シーカーが現れた。くたびれた黒いフードを目深にかぶった骸骨の姿は、まさに死に神を強く連想させる。
闇の精霊シーカーは、目の部分に不穏な光を宿して呟く。
「最初で最後の召喚、か……」
シーカーの言葉が終わった矢先――衝撃波に裂かれ、額を赤い一閃に貫かれた。
見間違うはずはない。だが、シーカーは平然としていた。
気づけば、さきほどの攻撃がなかったことになっている。
「痛い痛い……死返しだ」
空間が揺れ、闇が一層濃くなる。
すると唐突に、神鹿ヨトヴァリンの一体が地に伏した。
また別の方角から、何か重い物音も響き渡ってくる。
なかば無意識に、咲弥は音がした場所へと目を向けた。
そこには、栗鼠を彷彿とさせる物体が転がっている。
伝承に記されていた一体、栗鼠ヴァルトスクに違いない。
「さらばだ。我が主」
ふわりと景色が戻り、闇の精霊シーカーも消え去った。
わずか数秒の出来事――
ラクサーヌの状態が、咲弥に錯乱をもたらしつつある。
受け止められない現実の中、頭の片隅で状況を把握した。
闇の精霊シーカーは、攻撃をしてきた対象に死をもたらす力に違いない。衝撃波を放ってきたヨトヴァリン、まったく姿を現さず赤い閃光を放ってきたヴァルトスク――きっと、排除しようとしたのが、裏目に出たのだと思われる。
咲弥は漠然と、空白の領域にいた木霊の姿が頭に浮かぶ。
これらの分析は、心を静めるためなのかもしれない。
あるいは、認めたくない現実から目をそらすためだ。
だが、その事実は容赦なく咲弥に襲いかかってくる。
「う、うわぁあああ! ラクサーヌさぁあああん!」
いくら叫ぼうとも、返答はない。
ラクサーヌの胴は斜めに裂かれ、ずっと地に伏している。
間違いなく、死んでいた。手を施すすべなどない。
そう理解していながらも、認めたくはなかった。
駆け寄ろうとして、しかし体は動かない。
足にまったく力が入らなかった。感覚が麻痺している。
思考力すら失いつつある咲弥は、ふと仄かな熱を感じた。
視線の先には、空色の髪をした少女がいる。
つらそうな顔をしているが、幸いどこにも怪我はない。
(護って……)
ラクサーヌに、自らの命を犠牲にして助けられた。
咲弥がシャーロットにするつもりだったことを、代わりにラクサーヌがやったのだ。その事実を呑み込むなり、咲弥はほんの少しばかり意識が正常に戻る。
同時に、もう一つのある事実が判明した。
(妙な違和感が……消えてる)
十中八九、闇の精霊が倒した神獣が原因に違いない。
もしかしたら、今ならば――
「咲弥殿! シャーロット様!」
ジェラルドが地に膝をつけ、咲弥達の前で背を向けた。
神獣からの攻撃を、危惧している。
ジェラルドは警戒したまま、咲弥に問いかけてきた。
「どちらもご無事ですかっ?」
張られた声に、咲弥は何も応えられない。
ラクサーヌの死が、咲弥から声を奪っていた。
胸の中が気持ち悪い。ぐちゃぐちゃになっている。
《罪深き闖入者》
《許されざる闖入者》
《万死に値する》
脳に直接、神獣達の声が響いた。
また再び、神獣達の攻撃が始まる。
地を裂く衝撃波に加え、暴風も迫っていた。
空からは、ナイフみたいな水も落ちてきている。
「ぐっ……なんとしても、お守りいたします!」
ジェラルドの声に、咲弥ははっと我に返る。
ふと、師の言葉が脳裏をよぎった。
『今は心を殺せ――悔恨も懺悔も何もかも、生き残れた奴の特権じゃ。まずは生き残ることだけを考えろ。ばか弟子!』
そして、もう一つ――
『ずっとそのままなら、もっと多くを失うぞ』
咲弥は奥歯を噛み締め、ジェラルドを見上げた。
「ジェラルドさん! 手を!」
咲弥は白手を突き出した。
ジェラルドは一瞬の困惑を見せたが、すぐ白手を掴む。
神獣達の攻撃が当たる寸前――
間一髪のところで、視界が現実世界へと戻ってくる。
咲弥は崩れ落ち、四つん這いの姿勢で激しく呼吸した。
息を整えてから、恐る恐るラクサーヌに目を向ける。
「ラク、サーヌ……さん……」
黒かった髪や瞳が灰色へと変わり、まるで老年を思わせる容姿に変化していた。ラクサーヌは呆けた顔で空を見上げ、開いた口から唾液が漏れ出ている。
一瞥程度でもわかる。彼から魂が完全に消えていた。
「くそっ……くそっ……すみません。ラクサーヌさん……」
堰を切ったかのように、胸の中で感情が爆発した。
涙がぼろぼろとこぼれ、次第に息が引きつり始める。
つらい現実は、やはり受け止めきれそうになかった。
どうするのが正解だったのか、今はもうわからない。
「くっ……ラクサーヌ殿……」
低い呟きが聞こえたあと、力強い物音が響く。
つかの間の静寂を経て、重い足音が咲弥の耳に届いた。
実際に見ていなくてもわかる。
ジェラルドがラクサーヌに帝国式の敬礼を送り、どこかへ向かって離れたのだ。
「シャーロット様――シャーロット様――!」
ジェラルドの言葉から、居場所が知れた。
「う、うぅう……ジェラルド……おじ様……?」
「おお、シャーロット様……異変は、ございませんか?」
「私……私は……いったい……はっ!」
「い、如何なされました……? スイ様もあなた様を……」
「お、お母様!」
何かをひっくり返したような、荒々しい物音が鳴った。
咲弥は心を必死に抑え込み、顔を持ち上げる。
ジェラルドの背後にいるシャーロットが、険しい眼差しで母親のほうを睨んでいた。その姿勢はどこか、ひどく怯えた様子にもうかがえる。
咲弥は怪訝に思い、首を極わずかに捻った。
(……なん、だ……?)
スイは来る日もずっと、シャーロットに寄り添っていた。
それこそ、やつれるくらいシャーロットを案じている。
そんな母親に対して向ける眼差しではない。
静まりかえる場で、スイがそっとため息をついた。
「よもや、本当に我が呪いを消滅させてしまうとは……」
スイの発言に、咲弥は頭の中が真っ白になった。




