表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しの獣  作者: Key-No.92
第四章 無数にある分岐点(下)
183/222

第十二話 穏やかなひととき




 帝都にある大広場には、たくさんの人が集まっていた。

 されども、(にぎ)やかに騒ぎ立っているわけではない。

 誰もが黙したまま、ある場所へと視線を据えていた。


 独特な音楽が流れ――露出が(ひか)えめな踊り子の衣裳に身を包んだ女達が、音に合わせて華麗な舞踏を見せつけている。そこに、紅羽の姿もあった。

 銀髪をはらりとゆらし、紅羽も優雅(ゆうが)に舞い踊っていく。


 最初は少なかった踊り子も、牛歩ながら(そろ)いつつある。

 人目の多い場所で踊って宣伝し、参加者を(つの)ったのだ。

 本日もまた、強い日差しの中での舞踏が終わりを迎える。


「それでは、皆様! これにて、演舞は終了となります! 本日もご覧いただき、ありがとうございました! 復活祭、お楽しみにお待ちくださいね!」

 顎先(あごさき)から汗を垂らしていくシーラが、さらに言い放つ。

「あと、もし踊り子や裏方をしてもいいよという方! 随時募集していますので、ぜひ遠慮なく声をかけてください!」


 拍手喝采(かっさい)を浴びながら、紅羽は周囲にいる人を眺めた。

 いやらしい眼差しをした男も当然いたが、純粋に復活祭を楽しみにしている男女の割合は大きい。現状を考慮すれば、成功する雰囲気は濃厚であった。

 ただ潰しておきたい問題点が、まだまだ残っている。


 先日、開催地の下見に行った際、想像よりも大きな会場に多少の驚きはしたものの、それ以上に劣化や崩壊した部分がひどく目についた。

 管理者はいる様子だが、ほとんど手が行き届いていない。


 ここに関しては、ゼイドや裏方達の出番となる。

 しかし、踊り子の参加に比べ、裏方のほうは思った以上に集められていない。期日までに修繕が間に合うのか、微妙な空気がじわりと広がりつつあるのだ。

 もう少し人手がほしい。それが、純粋な感想だった。


『大丈夫だよ。絶対、間に合わせてみせるから』


 紅羽はなかば無意識に、彼の声がしたほうを振り返る。

 当然、視線の先に彼の姿はなかった。

 だが、もし彼がいれば、きっとそう言ったに違いない。

 紅羽は胸に手を添え、心の内側でため息をつく。


(人集めは、私達が頑張ればいい)


 紅羽がそう思った矢先、背後から幼い女の声が響いた。


「あ、あのぉ……」


 まだ十歳に満たない、褐色の肌をした少女だった。

 見た目と声から、少し気が弱そうな印象を抱く。

 少女はためらい気味に、一歩を前に紅羽へ詰め寄った。


「あたしも、おねえさんみたいに……なれ、ますか……?」


 どの部分を指しているのか悩み、紅羽は小首を(かし)げた。


「踊り子の話ですか?」

「あっ……あのあの……そのぉ……」


 少女は萎縮(いしゅく)してしまい、ついには目もとに涙を浮かべた。

 どうやら、対応を間違えたらしい。

 ネイが飛ぶように訪れ、少女の前でしゃがみ込んだ。


「踊り子? 踊り子ね? きっとそうに違いないわ」

「あ、えっと……はい!」

「いいところに来てくれたわね。ちょうど子供達の踊り子が欲しかったの」


 そんな話は初めて聞いた。紅羽は小首を(かし)げる。

 次第に幼い少女の顔が、笑顔へと変化していく。


「そ、それじゃあ……」

「ええ。一緒に踊りの練習をしましょ」

「は、はい!」

「あともしよければ、お友達も誘ってくれると(うれ)しいかも」

「あ、はい! きいてみます! やった!」


 それとなく、ネイの意図を察した。

 幼い少女とネイの会話を聞きながら、紅羽は感心する。

 孤児院が出自なだけあり、子供の扱いが非常に上手い。


 ふと思えば――ネイの孤児院に行ったとき、子供達よりもマザーと一緒に過ごした時間のほうが長かった。子供達と、あまり馴染(なじ)めていた記憶はない。

 それに対して、彼はひどく馴染めていた気がした。


「――それじゃあ、おともだちにもきいてきますね」

「もしだめでも、ミィアちゃん一人でも来てねぇ!」


 ミィアと呼ばれた少女は(うなず)き、どこかへと駆けていく。

 ネイは立ち上がり、右手首を腰に据えた。

 少女を見送ったあと、ネイが紅羽を振り返る。


「まだまだ――ね?」

「はい。その模様です」


 苦い笑みを浮かべるネイに、紅羽は淡々と応えた。

 今回の件は、この部分も訓練するいい機会になる。

 子供との距離が狭まれるよう、(つと)める方針を定めた。


「こっちも、裏方さんが何人か参加してくれました!」

「よっしゃあ! いい感じね!」


 シーラの言葉に、まずネイが反応を示した。

 (そば)まで歩み寄ってきたシーラに、紅羽は告げる。


「裏方は、さっそく会場へお連れしたほうがよろしいかと」

「ええ。あっちもあっちで、大変そうですからねぇ」

「はい」


 変な問題は特に起きていない。順調に物事は進んでいた。

 もう少し人員を(つの)れば、より安心感は増すに違いない。


「じゃあ、私達は別の場所で踊って人集めしましょうか」


 紅羽と同様の不安を、ネイも抱いていた様子だった。

 さすがだと思いながら、紅羽はこくりと(うなず)く。


「はい。そうしたほうが賢明です」

「それじゃあ……私はこれから、裏方さん達を会場のほうへ連れていきますから、そちらは任せても構いませんか?」

「問題ありません」


 紅羽の言葉に、シーラは微笑みをもって応えた。

 するとネイが、拳を高く(かか)げる。


()()()の復活を成功させるため、みんなで頑張るわよ!」

「おー!」


 シーラも拳を掲げ、意気込んだ声を放った。

 紅羽は少し二人を眺め、ふと幻覚が見えてくる。

 彼がここにいれば、きっとネイ達と同じように――


「失礼……そこのお嬢さん方」


 背後のほうから、年老いた男のしわがれた声が響いた。

 肩越しに視線を向けると、高貴そうな雰囲気を持つ色黒な老人が一人いる。年は七十代半ば頃か、あるいはもう八十に達している容姿をしていた。

 物腰は柔らかく、危険な気配は特に感じられない。


 参加希望者なのか、現状では判断がつけられなかった。

 老人の様子をうかがっていると、(そば)にいるシーラが途端に戸惑い始める。


「あ、あぁ……あなたは……あの、私、シーラと申します」


 シーラは胸元に右拳を添え、深くお辞儀をした。

 シーラの(あわ)てぶりから、とても高名な人だと推測する。

 老人も帝国式の敬礼をおこない、穏やかな口調で言った。


「初めまして。私は、ゼクセンと申します。これもきっと、ユグドラシール様のお導きなのでしょう。あなた方の活動が私の耳に届くまで、少し時間はかかりましたが――どうか、今後の支援について、お話でもいかがですかな?」


 どうやらゼクセンは、天樹祭の復活に意欲的らしい。

 (こば)む理由はない。今はどんな支援でもありがたいのだ。

 シーラは慌てふためきながら、頭を何度も下げている。


「あのあの……あ、あり、感謝致します! その……」


 ゼクセンは優しげに、にっこりと微笑んでいる。

 紅羽はひとまず、事のなりゆきを黙ったまま見守った。


 この日、ユグドラシール教の教皇ゼクセンの力により――

 あらゆる問題が、一気に解消されていった。



    ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 帝国軍事図書館は、帝国城からやや離れた位置にある。

 ここの利用者は、皇族(こうぞく)、軍人や軍学校に在籍する生徒で、本来は一般人の立ち入りが許されていない。また地位や階級次第では、踏み込めないところもある。

 位の高い者しか利用できない、そんな場所に咲弥はいた。


 眼前にある大きな机の上に、無数の書物や資料の(たば)が高く積み上げられている。それは床のほうにまで広がっており、そちらは自分の背丈をも超えていた。

 数多くある中から、咲弥は神話を選んで眺めている。



 森の女神ユグドラシール――


 大地に大いなる恵みを与え、数多の生命を育む。

 かの女神が住まう地は、色彩豊かな神域なり。

 選ばれし生命体以外は、侵すことを許されない。

 禁を破れば、女神を守護する聖獣に天罰が下される。


 風を司る大鷹(おおたか)アースヴェルグ――

 地を司る神鹿(しんろく)ヨトヴァリン――

 火を司る栗鼠(りす)ヴァルトスク――

 水を司る蛇龍(だりゅう)ウルズヘッグ――



 それぞれに、壁画みたいな絵が添えられている。

 すべてそのまま――というわけではなかったものの、皇女(こうじょ)シャーロットの精神世界で遭遇した三体は、確実に火以外を司る聖獣で間違いない。

 そう思える類似点が、あちこちに見受けられたからだ。


 調べれば調べるほど、理解不能さが深みを増していく。

 帝国領内では確かに、森の女神ユグドラシールを信仰する宗教が実在しているようだ。しかしそれはあくまで、人々の心に安寧(あんねい)をもたらすために過ぎない。


 遥か大昔には、大規模な神事もあった様子だが、現代ではもう催されていない。その名残から誕生した()()()もまた、十数年前に途絶えていた。

 長い時の流れで、忘れられつつあるのかもしれない。


 その忘却こそが、皇女が呪われた発端――

 咲弥は最初、人からではなく女神からの線を疑ってみた。

 だがそれは、あまりにもいまさらな話でしかない。

 しかも信仰自体は、今もなお機能している様子なのだ。

 皇女一人が呪われた原因には、いっさい結びつかない。


 だから今度は、神域を侵した可能性について模索した。

 そもそも、神域は簡単に行ける場所ではない。それこそ、黒白のハクと同等の力を持っている必要がある。少なくともシャーロットには、そんな力はないらしい。


 女神からの線は諦め、呪術という点に着目してみた。

 まず女神を扱う呪い自体が、どの資料にも存在しない。

 もとからそのような神ではないため、当然ではあった。


 本日もまた、書物や資料を見てはため息が漏れる。

 真っ暗闇の中を、あてもなくさまよい続けているのだ。


「……ほんっと、お前って変わりもんだな」


 対面の席にいるラクサーヌが、突然ぼやいた。

 咲弥はやや驚き、ふっと顔を上げる。

 彼は机に頬杖をつき、資料のほうへ視線を落としていた。


 その姿勢は、かなり行儀が悪い。積み上げた書物に片足を乗せ、椅子にだらけた状態で座っている。見る者が見れば、嫌悪感を抱きかねなかった。

 特にジェラルドに目撃されれば、怒声が飛ぶに違いない。


 そんなことを思いながら、咲弥は首を(ひね)って()いた。


「変わり者……ですか?」

「つか、もうただの変人の域じゃね?」

「いやいや……全然。普通ですよ」

「自覚のねぇ変人が、この世でもっとも()ぇよな」


 咲弥は眉をひそめる。困惑気味に苦笑するしかない。

 唐突(とうとつ)すぎる文句に、どう対応していいのかわからない。

 視線を重ねてこないラクサーヌに、咲弥は素直に問う。


「どの部分を見られて、そう思われたんですか?」

「俺と居ても、平気なとこ」


 予想外の返答に、咲弥は言葉に詰まる。

 ラクサーヌは呆れた様子で、肩を軽く(すく)めた。


「状況的に仕方がない場合を除けば、普通ならなるべく俺と関わらないようにするもんだ。悪態を突き、暴言を吐く俺の態度に、普通の感性をもっていりゃあ苛立(いらだ)つからな。だからそんな俺といて平気な奴は、まともじゃない。変人だろ?」


 咲弥は戸惑った。


「それで変人と、言われましても……ただ、ラクサーヌさんお一人にお任せするのは、違うと思ったんです。もちろん、僕なんかで助けになれるのかはわかりませんが……一人より二人のほうが、楽かと思ったんです」


 ラクサーヌは虚空を見上げ、深いため息をついた。


「誰も頼んじゃいねぇよ」

「はい。頼みそうにないので、自分で考えて行動しました」

「一人のほうが気楽なんだが? むしろ、誰かいると邪魔」

「邪魔にならないよう、頑張って協力してみます」

「ばかか? いるだけで邪魔だつってんだろ!」


 うんざりとした面持ちで、ラクサーヌが怒鳴ってきた。

 咲弥は苦笑をもって、ラクサーヌをなだめる。

 ラクサーヌは再度、太い息を吐いた。


「……やっぱ、お前かなり頭腐ってんな。つか、手伝う気が少しでもあんなら、こっちばっか見てねぇで、資料のほうに目を向けやがれ」


 咲弥はどきりとした。

 ラクサーヌは終始、咲弥へは目を向けてきていない。


「し、視野が広いですねぇ……はい。わかりました」


 咲弥は手元にある資料を、再び眺め始める。

 しばらく続く静寂を破ったのは、ラクサーヌであった。


「にしてもさ、お前……なんで、毎日ぼろぼろなんだ?」

「え?」


 本日はやけに口数が多い。

 これまでの間、叱咤(しった)のほかは無視ばかりされていた。

 そういった理由もあり、ラクサーヌに自然と視線が戻る。


「資料……!」

「あ、はい」


 また怒られてしまい、咲弥は(あわ)てて資料に顔を向けた。

 とはいえ、喋りながら読むのはかなり難しい。

 咲弥は位置だけを覚え、ラクサーヌに応えた。


「軍の訓練に、付き合っていますから」

「なんのために? 誰か人質にでも取られてんの?」


 (いぶか)しげなラクサーヌの疑問を聞き、咲弥は苦笑した。


「違いますよ。最初はただの流れでしたが、今はありがたく思っています」

「なんで?」

「……とても、いい訓練になるから……ですかね」


 それは本音ではあるが、少しばかり足りない。

 咲弥には、考えなければならないことが山ほどあった。


 もちろん、ただ先延ばしにしているだけに過ぎないのは、咲弥も充分に理解している。だが現状、考えても仕方のない問題があまりにも多過ぎるのだ。

 しかし訓練中は、忘却できる――これが、本当に大きい。


 訓練に打ち込むほど、思考はより透き通っていく。

 目の前にある何かだけに、一心不乱に向かえるのだ。

 咲弥は心の中でため息をつき、ラクサーヌの言葉を待つ。


「いいように、使われてるだけなんじゃね?」

「いいえ。仮にそうでも、自分のためにもなりますから」

「お前、ほんとお人好しのばかだな。つか、くそだ」

「いえいえ。なんでですか……!」


 ラクサーヌのほうから、重いため息が聞こえてきた。


「いくら自分に都合よく置き換えたところで、その実は何も変わらねぇぞ。この世の物事なんざ、どれもこれも、たった一つの意思のみで動いてるわけじゃねぇんだ。頭の足りねぇゴミは、ていよく扱われるだけ扱われて、ぽいっだ」


 ラクサーヌが言わんとすることは、それとなくわかる。

 咲弥は少し考えてから返答した。


「それでも、まぁ……自分にまったく身にならないわけではありませんよ。奴隷時代でもそうでしたが、得られる何かは必ずありましたし」

「オメェ、奴隷だったのかよ」

「違います、違います! ふりです、ふり! ただ最終的に奴隷でしたが……」


 咲弥は当時の流れを、少し()(つま)んで説明した。

 ラクサーヌはかぁっとうめく。


「お前、やっぱマジもんじゃねぇか」

「そんなことないです。普通です」

「誰が聞いてもイカレてんだろ」


 これには咲弥も、苦笑するほかない。


「いやぁ、そのときはそうしたほうがいいと思ったんです。でも、そのお(かげ)で大切な仲間と出会えましたし、生命の宿る宝具も手にすることができましたから」

「ただの結果論だろ。一歩間違えれば、首落ちてただろ」

「それは、まあ……確かに……」

「ほんと、お人好しの間抜けなあほだな」


 咲弥は苦い笑みを浮かべ、対応を模索する。


「でも、ラクサーヌさんだって、本当はいい人ですよね」

「ばかか? どこをどう見たらそうなんだよ」

「だって……今、ここにいますから」

「はぁ? 狂人の思考は、マジで意味がわからん」

「神の呪いだと気づいて、(さじ)を投げられたんですよね?」

「投げてねぇよ!」

「えっ? そうお聞きしましたが……?」

「いや、まあ……無理だとは言ったが」


 言い(よど)んだラクサーヌに、咲弥ははっきりと告げた。


「無理かもしれないとわかってて、それでも皇女様(こうじょさま)のために頑張ってるのは、ラクサーヌさんがいい人だからですよ」

「途中で投げ出すのが、嫌いなだけだ。新たに来る助っ人の話を聞いてな。そいつからも光明が見えなきゃあ、さすがに無理だって諦めていたけどな」

「諦めたくないから、僕の到着を待ってくれたんですね?」


 咲弥が言わんとすることを、どうやら呑み込んだらしい。

 ラクサーヌは少しの無言を経てから、鼻で短く笑った。


「ほら。やっぱり、ラクサーヌさんはいい人ですよ」

「ケッ……言ってやがれ。つか、ページが進んでねぇだろ。おらっ!」

「あっ、すみません」


 話の切れ目を(さと)り、咲弥は真剣に資料を読んだ。

 ページをめくる音のみが、周辺に鳴り渡る。

 どこか物寂しい雰囲気が、辺り一面に広がっていく。


 だがそんな静寂も、長くは続かなかった。

 ラクサーヌが途端に、また独り言のような声を(つむ)ぐ。


「資料を読むにしても、方向性を見いだすにしても……」

「えっ?」

「ものを知らない無能じゃ話にならん。わかるか?」

「ま、まあ……はい」

「一を知って二を知らず――ってな。ただ呪いという存在を真正面からぼけぇっと眺めてたって、視野の狭いカスじゃ、なぁんにも意味がねぇってことだ」


 無駄なことだと言いたいのか、咲弥は生返事をした。


「は、はぁ……」

「ならば、どうすればいいのか……? 答えは、簡単だ」

「ほかの知識を得ればいい……って、ことですか?」

「お前、呪術に関してなんも知らねぇだろ?」

「あぁあ……はい」

「なら、さわり程度までは教えてやる」

「あっ……」


 咲弥はようやく、ラクサーヌの意図が呑み込めた。

 咲弥は自然と笑みを作り、ラクサーヌを見据える。

 すると初めて、彼の黒い瞳が咲弥へと流れてきた。


「その代わり、覚悟しろよ? 俺はかなり厳しいからな」

「はい! よろしくお願いします!」


 この日から、咲弥は呪術を学び始めた。

 ラクサーヌの教え方は非常に丁寧(ていねい)で、またわかりやすい。

 だから無知な咲弥でも、苦戦は当然したが理解はできた。


 その際、咲弥はラクサーヌに関して思う。

 最初は横柄で、最悪な印象を抱いた。

 しかし彼は、やはり優しい人らしい。

 呪術の勉強以上に、それがよくわかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ