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神殺しの獣  作者: Key-No.92
第四章 無数にある分岐点(上)
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第十七話 女神を見つけた




 大型船サンライト号が、大海原を颯爽(さっそう)と突き進む。

 咲弥は甲板(かんぱん)のふちに歩み寄り、潮風を全身に浴びた。


(うゎあああ……すっごい気持ちいいな)


 見渡せる景色は、まさに圧巻(あっかん)の一言であった。

 青い大空には、さまざまな形をした白い雲が流れている。そして青々とした海のほうでも白い波が立っており、まるで空と海が鏡のように思える光景だった。


 空の船とは違い、海の船は落ちない。

 その事実が、咲弥の心を一層晴れやかに澄み渡らせた。


「うぉおっ! ここも風が気持ちいいぞぉー!」


 咲弥の隣付近に、碧眼(へきがん)を持つ茶髪の青年がやってきた。

 怖いくらい綺麗な顔立ちをしている青年は、二十歳前後か――旅人らしさのある黒を基調とした服装なのだが、どこか気品めいた雰囲気が強く(かも)されている。


 このサンライト号には、いろいろな人達が乗っていた。

 (せわ)しなく働く船員達は当然のこと、旅人の姿も多い。

 彼もおそらくは、その内の一人なのだろう。


「おぉい、アルベルト! はしゃぎ過ぎて落ちんなよ」


 似た(よそお)いをした黒髪の大男が、野太い声で注意した。

 茶髪の青年アルベルトは、背で手摺(てす)りにもたれかかる。


「ガキじゃないんだから、わかってるって」

「充分、ガキのまんまだってぇの」


 呆れた姿勢で、陽気そうな金髪の男が深いため息を吐く。

 その彼もまた、黒一色に染まった服装をしている。

 もしかしたら、地域特有の格好なのかもしれない。


 なかば(くせ)に近い領域で、三人のオドに咲弥の目がとまる。

 とても流麗(りゅうれい)で力強い。かなりの使い手の様子であった。

 アルベルトはそのまま、茫然と大空を(あお)ぎ見ている。

 深く、より深く、大空を真正面へと捉えていた。


「うぉあっと……!」

「あっ!」

「ばかっ!」


 アルベルトの仲間が顔を青ざめさせ、大慌(おおあわ)てしていた。

 (あや)うく落ちかけたアルベルトに、咲弥もどきりとする。

 広大な大海原を、船は勢いよく進み続けていた。

 たとえ紋章者でも、落ちればどうなるか予想に(かた)くない。


「なっ、なぁんちゃって……?」

「なぁにが、なんちゃってだ! 今のガチだったろ!」

「やれやれ。これだから、アルから目が離せないんだよな」


 大柄な男が(けわ)しい顔で怒鳴り、もう一人は呆れていた。

 不意に、アルベルトと視線が重なる。

 にっこりと(さわ)やかに微笑まれ、咲弥は対応に少し困った。


(……それにしても、ほんといい顔してるなぁ……この人)


 ほかの二人も整った容姿をしているのだが、アルベルトはさらに頭一つ抜けた格好良さがある。同性の咲弥が見ても、少し見惚(みほ)れるくらいだった。

 ぼんやりとしていると、聞き覚えのある声が上がる。


「おぉい。咲弥さん!」

「あっ。リックスさん」


 青髪のリックスが手を振り、(そば)まで歩み寄ってきた。

 リックスはやや疲弊(ひへい)した顔を、にっこりとほころばせる。


「うちの船、どうっすか?」

「思っていたよりも揺れが少なくて、凄く快適です」

「この辺りは波も穏やかっすからね。よかったっす!」


 咲弥は周囲に目を向けながら、リックスに言った。


「それにしても……皆さん、お忙しそうですね」

「天候と海は機嫌がころころ変わってしまうんで、こっちも気が抜けないんすよ。自分も積荷の状態に、あれやこれやと点検が終わったところっすから」

「はあ……やっぱり、大変なお仕事なんですね」

「安全を最大限に――それが、先代のモットーっすからね」


 咲弥が相槌(あいづち)のごとく(うなず)くと、リックスがからからと笑う。


「でも、このご時世……どうしようもないんすけどね」

「あぁあ……魔物の活発化ですね」


 リックスは、げんなりとしながら(なげ)いた。


忌避機(きひき)で追い払えるのも、限りがあるんで困りものっす」

「ああ……」


 ふと記憶がよみがえり、咲弥は曖昧(あいまい)な声で応えた。

 忌避機の燃料奪還を終えて帰還したとき、咲弥は忌避機に関しての説明を受けている。見た目からでは、絶対にどんな役割なのか想像すらできない。


 忌避機室の中にある装置は、船首付近にまで伸びている。ただの装飾品と思わせる代物だったが、歯車みたいな装置が忌避機の一部なのだ。

 そこから、海洋生物が嫌う要素が放たれている。


「そういえば……海に関してはあまり詳しくないので、少し的外れな話しかもしれませんが……深海とかに行ける船ってあるんですか?」

「さっすが、冒険者っすね。潜水艇(せんすいてい)を知ってるって、とても博識(はくしき)じゃないすか」

「いえ……直接、実物を見たことはありませんが……」


 それは事実、本当の話であった。

 もとの世界で、潜水艦(せんすいかん)の写真や映像なら観た記憶はある。

 乗ったこともなければ、(そば)まで行った経験もない。


「潜水艇は国家レベルの機関しか、扱ってないっすからね。俺ら船乗りでも、噂程度っすよ。でも冒険者なら……上級の人ならって感じなんかもすねぇ」


 リックスは腕を組み、小首を(かし)げてから(うな)った。


「海洋生物の分析から海底遺跡の発掘と、いろいろな調査が実施されてるみたいなんすけど……海にはやばい生き物が、うようよいるっすから」

「海の中で襲われたら、ひとたまりもないですよね」

「それもあってか、あまり進展はしてないらしいっすよ」


 咲弥はふと、嫌な想像が浮かぶ。

 もし邪悪な神が深海、または簡単に行けないような場所に(ひそ)んでいた場合、どうすればいいのかさっぱりわからない。


 この世界は確かに、神秘的な代物で溢れている。

 だからといって、神秘一色で染まっているわけでもない。

 現に移動手段は、船舶(せんぱく)や飛行船のほか――迅馬(じんば)は神秘的の(たぐ)いと言えなくもないが、結局のところは自動車に匹敵した馬車でしかないのだ。

 (うな)りながら悩む咲弥に、リックスが爽快(そうかい)に告げる。


「でもまあ、咲弥さんがいれば、たとえどんな魔物が来てもへっちゃらっすよ」

「えぇ……それはどうか……」

「魔物が現れたら、そのときはよろしくっす!」


 咲弥は、リックスに苦笑で応えた。

 正直、他人事ではいられない。

 今度は墜落(ついらく)ではなく、沈没されても困る。

 魔物が現れないよう、咲弥は何にとなく祈っておいた。



    ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 アルベルトは再び、空を大きく(あお)いだ。

 青空には大きな白い雲が、まばらに浮かんで流れている。

 住まいから見上げた空と、それほど変わりはない。しかし船の上による雰囲気、あるいは場所によるものか、そこには確かな違いがあった。


「なぁに、ぼぅっとしちゃってんの?」


 幼馴染のエルヴィンが腰を低くして、まるで下側から覗き込むように見据えてきている。風に(あお)られた金髪を手でかき上げ、そして不敵な笑みを(たた)えた。

 アルベルトは対応に困り、肩を(すく)めて応える。

 もう一人の幼馴染、大柄なキースが呆れ声を投げてきた。


「おい。お前はもう、海側には近づくな」

「せっかくの旅なんだ。めいっぱい楽しもうぜ」


 アルベルトが軽口を叩くや、幼馴染達は苦い顔を見せる。

 エルヴィンとキースとは、幼い頃――それこそ、生まれた頃からの付き合いだ。それぞれ性格に違いは当然あれども、話も合えば気も合っている。


 だから幼馴染と呼んでも間違いではないが、しかし大衆のそれとは、ちょっと毛並みが異なるだろう。彼らは体裁上、アルベルトのお目付け役だからだ。

 ただそれは、あくまでも形上のものに過ぎない。

 なぜならアルベルトには、ほぼ存在価値がないからだ。


 形式上は、もしものための代替(だいたい)――アルベルトの上には、そもそも兄や姉が複数人いる。だから実際は、代替とすらも見ている者は誰一人としていなかった。

 とはいえ、生まれてしまったものは仕方がない。


 そんなアルベルトに課せられた使命は、普通に生き、妻を(めと)り、子を作り育て、血筋を絶やさないこと――

 それも兄か姉の誰かが本家に決まれば、もう用済みに近い状態となるだろう。


 兄や姉達には、最高の環境と教育を受けた者が伴侶(はんりょ)としてあてがわれる。

 アルベルトには、その恩恵が与えられる事実はない。

 自分で勝手に探せというのが、周囲からの答えだった。


 正直、このままエルヴィンやキースと失踪(しっそう)したとしても、それほど気にはされない。仮に誰も(めと)ることなく死んでも、何か言ってくる者もいないのだ。

 その事実を、そして人生を、別に恨んでなんかいない。

 (みにく)い権力争いなど、はなから興味を持てなかった。


 当然、自分の責務自体はまっとうしなければならないが、妙な野心があるわけではない。同時に、本家になるつもりも毛頭なかった。

 今まで通りに暮らせるのなら、それで充分に満足がいく。


 そんな理由から、幼馴染の接し方は気さくなものだった。

 名分はお目付け役だが、普通の友達とさして変わらない。

 その事実が、アルベルトにはとても居心地よく思える。

 呆れ気味の幼馴染達を見てから、アルベルトは空を(あお)ぐ。


(まあでも……嫁さんと子くらいは、やっぱ欲しいか……)


 アルベルトは茫然と雲を眺め、そんなふうに思った。

 しかし現状、別にお目当ての女性がいるわけではない。


 確かに兄達の嫁候補は容姿端麗であり、教養も文句なしの女性ばかりであった。もし自分が、兄の立場ならば――そう考えたことも何度かある。

 ただどの女性も、自分には合わない。何か違う気がした。


 こっそりため息を漏らし、アルベルトは首を横に振る。

 そして、視線を戻した――そのときだった。

 腰まである銀髪を、風になびかせた少女が横切っていく。


 端整な顔から少し寡黙(かもく)そうな印象を抱かせたが、人の目を()きつけるほどの神々しい美しさが宿っている。また彼女の洗練された肢体(したい)も素晴らしかった。

 動作が研ぎ澄まされており、重心のぶれがいっさいない。


 そして外見と同様、オドが恐ろしいほど流麗(りゅうれい)であった。

 正直、人生で初めてと言えるくらい視線を奪われている。それこそ兄の婚約者候補ですら、彼女の前では(そろ)いも揃って眉を(ひそ)めそうだと感じられた。


 銀髪の少女を、アルベルトは自然と目で追いかける。

 庶民的な黒髪の少年と船乗りの前で、彼女は足を止めた。


「あ、紅羽」

「どうもっす! 紅羽さん!」


 銀髪の少女は、紅羽という名らしい。

 表情一つ変えずに、紅羽は()らかな声を(つむ)いだ。


「こんにちは、リックス」

 簡単な挨拶をしてから、紅羽は黒髪の少年を向いた。

「咲弥様――さきほどようやく、ネイが眠りました」


 アルベルトは内心で、驚愕するほかない。

 黒髪の少年、咲弥と彼女は主従の関係にある様子だった。

 どう考えても、逆ではないのか――紅羽は、しかし咲弥のほうを向いている。

 咲弥は苦い顔を浮かべた。


「ああ、そっか。オドを(きた)え過ぎるのも、考えものだね」

「そういえば……赤髪のあの娘、どうかしたんすか?」


 船乗りの問いに、咲弥がげんなりとした顔で答えた。


「二日酔いのせいか、船酔いしてしまったみたいで……僕が持っていた睡眠薬で、着くまで寝るって言いだしまして」

「あぁ……それじゃあ、ゼイドさんもっすか?」

「ですね。今もきっと、いびきをかいて寝ています」


 仲間の話か、アルベルトにはよくわからなかった。

 少し眺めていると、不意に船が大きく揺れた気がする。

 アルベルトは妙な気配を、ぼんやりと感じ取った。


「咲弥様。南西の方角に、魔物らしき気配があります」


 紅羽が真顔のまま、南西を見ながらに言った。

 アルベルトは静かに驚く。極わずかな気配のはずだった。

 彼女の言葉通り、確かに南西の方角にある海が山のごとく(ふく)れ上がっていく。


「アルベルト! 下がれ!」

「アルはお留守番。そんじゃあ、少し運動でもしますかぁ」


 キースが腰から剣を抜き、エルヴィンが双剣を手にした。

 そのさなか、アルベルトは不思議な光景に我が目を疑う。


 咲弥が虚空(こくう)に描いた空色の紋様が、これまでの人生で見た記憶がないくらい、あまりにも特殊な造形をしていたのだ。まるで、天使を連想する形をしている。

 咲弥の隣で、紅羽は(けが)れのない純白の紋様を顕現(けんげん)した。


「おいで、黒白(こくびゃく)

「ヴァルキリー、降臨」


 声を(そろ)えて言った二人の紋様が、ほぼ同時に砕け散る。

 咲弥の両腕が光に呑み込まれ、そして黒色と白色の装具が装着した状態で出現した。紅羽はまばゆい閃光から、赤黒い色合いをした長剣を抜き取る。


 それは手に入れたいと願ったからといって、決して簡単に入手できるような代物ではない。アルベルトは内心、宝具に選ばれた二人から強烈な衝撃を受ける。

 激しい水しぶきが聞こえ、アルベルトは視線を移した。


 海から這い出てきたのは、クラーケンと呼ばれる魔物だ。

 巨大なイカを連想させる容姿をしたクラーケンが、一本の大きな触手(しょくしゅ)を振る。


「紅羽!」

「了解しました」


 何に了承したのか、紅羽がクラーケンの触手へと向かう。

 彼女の名を告げた彼は、なぜか関係のない方角を走った。

 この場を、少女一人に任せるつもりなのか――

 いくらなんでも、それは危険過ぎる。


 助太刀をするために、アルベルトは剣を抜いた。だがその前に見せた紅羽の剣技に、はっと息を呑む。それはまさに、閃光のごとき早業(はやわざ)であった。

 触手を切り分けるように、瞬時に細切れにしていく。


 本体と繋がっている触手の上に、紅羽は飛び乗った。

 そしてそのまま、本体を目指して駆ける。

 当然、これにはクラーケンも黙ってはいない。


 まず斬られたほうの触手を、海へと沈めていく。

 その最中、別の触手を紅羽へ向かわせていた。


「危ない!」


 アルベルトは我知らずに叫ぶ。そのとき、ふと気づいた。

 紅羽は長剣から、いつの間にか蒼い長槍を手にしている。

 触手を刺した長槍を大きくしならせ、上へと弾き飛んだ。


「うぉおおおおおお!」


 雄叫びが聞こえたほうへ、アルベルトは視線を滑らせる。

 咲弥が檣楼(しょうろう)から飛び、クラーケンを目指していた。


「紅羽! あとでちょっと助けて!」

「了解しました」


 咲弥の両腕の変貌(へんぼう)に、アルベルトは眉根を寄せる。

 それは、獣じみた形に見えた。

 クラーケンは咲弥を打ち落とそうと、複数の触手を振る。

 咲弥はただひたすら、クラーケンの本体を目指していた。


 咲弥が打ち落とされる――そう思った瞬間、今度は純白の弓を手にしていた紅羽が、閃光の矢を放つ。触手から少年を完璧に守ってみせた。

 漆黒の手を大きく振り上げ、咲弥は空色の紋様を描く。


「黒爪限界突破!」


 固有能力の発動か、咲弥は漆黒の爪をクラーケンに送る。

 ほんの少し、クラーケンの(ひたい)を裂いた程度に過ぎない。


 そのはずだったのだが、轟音(ごうおん)が響くと同時にクラーケンが四つに大きく裂かれていく。それはまるで、巨大な獣にでも引っかき殺されたようにもうかがえる。

 強烈な衝撃はクラーケンをも越え、海にまで達していた。


 大きな波が生まれ、船が大きく揺らされる。

 転びそうになりながらも、アルベルトは心配が先立つ。

 このままでは、二人とも海に落ちてしまう。

 アルベルトの不安をよそに、紅羽が純白の紋様を描いた。


「光の紋章第四節、白熱の波動」


 紅羽の右手から、凄まじい光の線が伸びていく。

 アルベルトは、訳がわからない心境だった。

 彼女が放った白い光芒(こうぼう)の方角には、落下する咲弥がいる。


 直撃する寸前、咲弥は白い手を前に差し出していた。

 閃光を受け止めるや、咲弥が船へと吹き飛んでくる。

 なるほどと、アルベルトは(うな)った。だが、問題はある。


(あの()は、何か戻ってくる方法があるのか……?)


 答えの出せない疑問に、考える余地はない。

 アルベルトは念のため、腰の(さや)を落とした。

 いつでも飛び込めるよう、身軽な状態になっておく。

 その最中、紅羽が再び純白の紋様を虚空に顕現(けんげん)した。


「光の紋章第七節、明滅(めいめつ)の流星」


 道標みたいに発生した光球を繋ぎ、紅羽は瞬間的な速さで船に戻ってきた。

 ほぼ同時に、吹き飛んでいた咲弥が彼女の(そば)に降り立つ。


「さっすがぁ! お二人がいれば、怖いもんなしっすね」


 周りの乗客や船員が、咲弥と紅羽を()(たた)えている。

 湧き上がる歓声の中、咲弥が苦い顔をして(つぶや)いた。


「ふひぃ……怖かった……落ちなくてよかった」

「咲弥様。ご無事でなによりです」

「紅羽は大丈夫? どこも怪我してない?」

「はい。問題ありません」


 アルベルトは、まるで世界が止まったような感覚に(おちい)る。

 無表情で、少し気難しそうな少女だと思った。

 そんな彼女が今、女神のごとき微笑みを(たた)えている。


 これまでの人生で、経験した記憶のない感情が湧く。

 ふと、エルヴィンの声が耳に届いた。


「いやあ……あの二人、すげぇな」

「何者なんだろうな……」


 キースの(つぶや)きも聞こえた。

 アルベルトはいまだ、紅羽から視線を外せない。

 そんなアルベルトの右肩に、不意の重みが発生する。

 エルヴィンが(いぶか)しげに肩を(つか)み、覗き込んできたのだ。


「おいおい? どうしたんだ。アル?」

「……俺は女神を、見つけた……かも……?」


 アルベルトは我知らず、そう応えていた。




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