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神殺しの獣  作者: Key-No.92
第三章 訪れる邂逅
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第三十四話 相性の悪さ




 ゼイドの昇華(しょうか)が、素早く解かれていく。

 その状態から、咲弥は気絶したのだと判断した。


《先鋒ゼイド選手対ピプル選手――ピプル選手の勝利》


 アナウンスから、ゼイドの負けが告げられた。

 紅羽とネイと一緒に、ゼイドの(そば)へ駆け寄る。

 強靭(きょうじん)な肉体を持つ獣人とはいえ、あまりにも傷が深い。


《お知らせします。国際大会が始まって以来、初の出来事が発生しました。今現在、精霊の召喚を認めるか(いな)か、審議(しんぎ)が始まっております》


 アナウンスを聞き、咲弥は驚きに溢れる。


《一騎打ちの形式が崩壊(ほうかい)しかねないため、不適切だと(うった)える声が上がりました。精霊の召喚が不可だと見做(みな)された場合、紅羽チームは反則負けとします》


 咲弥は唖然となる。

 そもそも精霊は紋章石を媒介(ばいかい)に、術者のオドを代償にして召喚が可能となるのだ。だからもしそれが不可だとすれば、紋章術自体が不可になると思える。

 アナウンスに声を(あら)げたのは、近くにいたネイであった。


「んなっ? ふ、ふざけんじゃないわよ!」

 ネイはそのまま、大声で抗議(こうぎ)した。

「精霊がだめだって言うんなら、紋章術の使用だって同様にだめでしょうが! 術者のオドを媒体にしてんだから!」


 観客席からどよめきが起こる。

 そんな中で、ゼイドの声が飛んだ。


「すまねぇ……負けちまったな」


 ゼイドはかろうじて、まだ意識を(たも)っていたようだ。

 咲弥はゼイドに寄り、首を横に振る。


「ゼイドさん……別に、いいんです……」

「すぐに治癒(ちゆ)を始めます」


 紅羽が純白の紋様を浮かべる。

 ゼイドは、力を振り絞った声で否定した。


「いや、いい。だめだ。俺は……王都の、治癒師を、頼る」

「試合がまだ(ひか)えてんだから、オドを消耗するなってさ……こっちは失格になるかどうかってときに、ほんとばかねぇ」


 ゼイドの代弁をする形で、ネイがそう補足した。

 ネイはわざとらしく、大きなため息をつく。


「大会が終わったら……あんた、みっちり修行するわよ?」

「へへっ……(きび)しいぜ……まったく……」


 ゼイドは軽くうめき、ゆっくり呼吸を整え始める。


「なあ……」

「……はい?」


 返事をしたが、ゼイドは言葉を続けない。

 咲弥は首を(かし)げ、ゼイドをじっと見据える。


「……弱っちぃ仲間で、すまねぇ……仲間、失格もんだな」


 どうやら負けたことが、かなり(こた)えているらしい。

 その弱々しい声を聞き、咲弥は返す言葉を選ぶ。


「ゼイドさんからしたら……きっと、他愛(たあい)もない話だったのかもしれませんが……凄く、心に響いた言葉があるんです」

 咲弥はそう前置きをして、語り続けた。

「僕は最初……全部一人でやらなきゃって、思ってました。でもゼイドさんが――一人で背負い込む必要はない。役割を担ってこそのチームだと言ってくれました」


 咲弥は微笑みを作って、ゼイドに結論を述べる。


「僕だって全然弱っちいです。一緒に強くなってください」

「……そうだ、な……ははは……」

「なぁに一度負けたくらいで、へこたれてんの。(なさ)けない」


 ネイの苦言(くげん)に、ゼイドは苦笑を漏らした。

 そして、アナウンスが再び響き渡る。


《お知らせします。審議の結果がでました――精霊の召喚が認められました。精霊は自然界の存在であるため、生物とは見做(みな)されません。また、ゼイド選手が自身のオドを用いり、召喚している場面が確認されました。試合は続行されます》

「あったりまえじゃい!」


 ネイが拳を作り、声を大にして叫んだ。

 咲弥は安堵(あんど)のため息が漏れる。

 治癒師(ちゆし)がやってきて、ゼイドが風の担架(たんか)に乗せられた。


「あんた。モニター越しに、しっかり応援してなさい」

「ああ、気をつけてな」


 しばらく、運ばれていくゼイドを見つめた。


「驚きました」


 唐突(とうとつ)に聞こえた男の声を、咲弥は振り返った。

 そこには、ピプルが立っている。


「まさか精霊が存在していたとは……今も夢だったのではと疑います……失礼ですが、彼はいったい何者なのですか?」

「教えてあげない。あんたは、敵なんだからさ」


 ネイが、そっけない声で応じた。

 ピプルはばつが悪そうに首を振る。


「これは、残念。ですが、優勝は私達がいただきます」


 ピプルは言い捨ててから、仲間達のほうへ向かった。


《それでは、両チーム。次鋒を選んでください》


 アナウンスが響き、ネイが颯爽(さっそう)とリングの中央へ向かう。


「ほな――さくっと、一勝取り返してくるわね」

「ネイさん。気をつけてください」

「私を誰だと思ってんの? まっかせなさぁい」


 ここまで、ネイは圧勝していた。

 だからといって、安心などはできない。なんとも言えない不安が、咲弥の胸をぐるぐるとかきたてている。

 待機所に戻る前に、リングの上には両者が出揃(でそろ)っていた。


《次鋒は、ネイ選手対マジェン選手に決定されました》


 ネイの相手は、二メートルを超える筋肉質な巨人だった。

 あまり見慣れない巨人に、咲弥は息を呑んで見守る。


 薄い記憶では獣人と同様、紋章術は得意とされていない。ただ、全種族の中で、もっとも攻守がすぐれているようだ。

 大斧を肩に(かつ)ぎ、マジェンは豪快な笑いを飛ばした。


「ガハハッ! (ひね)り潰さねぇように気をつけねぇとな」

「ふぉおお……こりゃ、いい的になりそうねぇ」


 ネイが手を額にかざし、マジェンに向かって(つぶや)いた。


「あん?」

「あんたの名前、なんだっけ? ああ、木偶(でく)人形か」


 また(あお)りを入れており、咲弥は内心(おだ)やかではない。

 マジェンは不機嫌な面持ちで、戦闘態勢を整えた。


《決勝戦次鋒、ネイ選手対マジェン選手――開戦!》


 開始直後、咲弥は目を大きく見開いた。

 巨体のわりに、マジェンの動きはとても素早い。


「動かない木偶と、同じならいいなぁっ?」


 ネイの背後に回り込み、マジェンが大斧を横に(よこ)いだ。

 ネイは華麗に上へと回避しながら、若草色の紋様を描く。


「風の紋章第六節、暴君(ぼうくん)の宝玉」


 差し出した右手の先に、風が強烈に集い合う。

 丸い翡翠色(ひすいいろ)をした風の玉を、ネイは勢いよく放つ。まるで弾丸のごとく()ち出された風の玉が、マジェンの顔面付近で豪快に破裂する。

 表情を硬くしたネイと同様、咲弥も眉間(みけん)に力を込めた。


「ふぅん……いい風だ」


 マジェンはそう(つぶ)き、大斧でネイの着地を狙った。

 ネイは身を(ひね)り、くるりと宙返(ちゅうがえ)りをする。

 わずかに攻撃の感覚を狂わせたあと、ネイは斧腹に両手を()わせて空中で受け流した。神業(かみわざ)に思えたが、一歩間違えばネイの腕か頭が吹き飛んでいただろう。


 咲弥は嫌な想像に恐怖を覚え、全身の肌がぞっと粟立(あわだ)つ。

 マジェンの口もとに、不敵な笑みが張りついた。



    ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆



 ネイは(いぶか)しさから、巨人のマジェンを見据える。

 いくら死なない程度に威力(いりょく)を抑えたとはいえ、まったくの無傷は想定外だった。

 巨人ならではの耐久力に、舌を巻くほかない。

 よろめく程度は、最低限してほしい心持ちであった。


(防御力が高い……? それなら……)


 ネイは瞬時に気を張り詰め、全神経を集中させた。

 周囲に漂うマナをオドへ取り込み、エーテルを精製する。まるで無数の針にでも刺されたような痛みが、ネイの全身に襲いかかり、精製の成功を知らせた。


 迫る大斧をひらりと()け、ネイはまた空高く飛び上がる。

 やや下にいる巨体を見つめながら、ネイは静かに唱えた。


「雷の紋章第一節、天空の閃光(せんこう)


 若草色の紋様が、金色に輝いて砕け散った。

 ネイの指先から、(すさ)まじい落雷が生じる。

 マジェンは雷を浴び、野太い悲鳴を響かせた。


「ぐぉおおおおおおっ!」


 ネイの得意属性とは異なる、別属性の紋章術――得意属性以外の紋章術は、効果が格段に落ちるのが一般的であった。

 しかしオドの上位とも考えられるエーテルであれば、その限りではない。


 得意属性にも等しい効果が、期待できるようになるのだ。もちろん本来の得意属性なら、威力は桁違(けたちが)いともなる。

 雷の第一節は本来、足止めを目論(もくろ)んだ紋章術に過ぎない。

 エーテルにより、恐ろしいまでの一撃へと変貌(へんぼう)していた。


「なん、で……?」


 ネイは自然と、驚愕が言葉となって現れた。

 内部破壊を狙った雷は、マジェンに振り払われてしまう。さほど効いていないのか、訳がわからない心境であった。

 渋い顔をするマジェンの右手付近に、無色の紋様が浮く。


(げっ……無属性……?)

「ってぇな……斬撃の紋章第一節、剣神の一撃」


 紋様が弾けるや、途端に空間が(ゆが)んだ。

 その刹那――脇腹を(はさ)み斬られたような激痛が走る。

 それはまるで、斬撃を宿した風に裂かれた感覚にも近い。

 ネイは痛みを必死に抑え込み、またエーテルを精製した。


「風の紋章第五節、大空の波紋(はもん)


 着地した瞬間、ネイを中心に強烈な暴風が広がっていく。エーテルを込めた得意属性――もはやネイは、我が目を疑うほかなかった。

 マジェンは身構えているものの、吹き飛ぶ気配がない。


 ネイは理解に苦しんだ。

 きっと精霊に言わせれば、ネイの精製したエーテルはまだ(つたな)いものに違いない。そのことについては、ネイもしっかり自覚している部分ではあった。


 しかし魔人(まびと)ならいざ知らず、普通の人にとっては絶対的な脅威(きょうい)――それだけは、疑いようのない事実のはずだった。

 いずれにしろ、戦闘中に硬直などできない。

 自身の生み出した風に乗り、まずはマジェンから離れた。


「逃さんぞ! 弓矢の紋章第三節、天空の撃墜(げきつい)


 暴風をも突き抜け、白みを帯びた何かが飛んできた。

 まず紅羽のオドを込めた光の矢が、ネイの脳裏(のうり)によぎる。だが近くに迫ったそれは、矢というよりは(やり)を思わせた。


 ネイは腰から短剣を抜き、防御に(てっ)する。

 あまりに力強い衝撃に、短剣では(ふせ)ぎきれそうにない。


 ネイの体ごと弾くように、暴風を突き抜けた。即座に身をよじり、マジェンの紋章術を受け流すことに成功する。

 (あや)うくリング外にまで、吹き飛ばされるところであった。


(まったく……ありえないわ……)


 落下しつつ、ネイは心の中で(つぶや)いた。

 マジェンは無属性の紋章石を、咲弥と違って最低でも二つ宿している。無属性の紋章石は本来、滅多(めった)には手に入らない代物の一つであった。


 マジェンといい、ゼイドの対戦相手といい――サイラハス共和国の選手は、どの国にもない異質な気配が漂っている。

 サイラハス共和国は世界一、他種族が入り混じる国だ。


 それだけに、()え間ない問題を抱えた国でもある。

 黒い噂も多数あり、今回の件も妙なにおいを予感させた。

 リングに着地するや、その衝撃に受けた傷がひどく痛む。


「くぅ……」

 ネイは痛みを(こら)え、もう一度エーテルを精製した。

「風の紋章第三節、戦神の号令(ごうれい)


 けたたましい音を響かせ、激しい風が素早く凝縮する。

 (あざ)やかな翠色(すいしょく)をした風の槍が、右手付近に五つ誕生した。ネイは奥歯を()み締め、立てた人差し指をマジェンのほうへ勢いよく振るう。

 表情を硬くしたマジェンが、両腕で防御の姿勢を取った。


「つ、らぬけぇええっ!」

「ぐぅぉおおおおおお……!」


 ネイはただただ、絶句する。

 マジェンは両腕で作った肉の盾で、エーテルを込めた風の槍をかき消して見せたのだ。それはネイが、モニカの放った火球を打ち砕いた原理と似ている。


「女だてらにやるな! 無我(むが)の領域!」

「……っ!」


 一歩遅れ、マジェンが固有能力を発したと理解する。

 そこまで意識を、きちんとまわしきれなかった。

 ただ今は過ぎ去った過去を、(なげ)いている暇などない。


 どんな能力なのか、何もわからないのだ。

 見た目には、何も変化がない。無属性は他属性とは違い、異質なものが多いため、ネイは特殊系統だと断定しておく。


 無属性は、とにかく希少性(きしょうせい)がとても高い。

 だから正直、あまり詳しくなかった。

 マジェンが、再び紋様を顕現(けんげん)する。


「力の紋章第三節、重圧の静寂」


 紋様が砕けると同時に、大斧をリングに突き刺した。

 瞬間――ネイの全身が、リングに引っ張り込まれる。


「なっ……に……」


 (つぶや)くと同時に、マジェンの紋章術の正体を呑み込んだ。

 ネイだけではない。リング場の重力が、きっと倍くらいに(ふく)れ上がっている。リングに落ちている破片(はへん)が、重力の力で砕け散っているのだ。


 突然過ぎる重力変化のせいで、上手く動けそうにはない。

 しかしそんな中、マジェンは軽々(かるがる)と走り向かってくる。

 術者には影響が及ばないのか――考えている暇はない。


 このままでは、いいようにやられてしまうからだ。

 ネイは即座に、若草色の紋様を浮かべる。


疾風(しっぷう)の舞!」


 ネイも固有能力を発し、風の力で身体能力を強化する。

 相殺(そうさい)とまではいかない。だが、重いながらも体は動いた。

 その場から離れると同時に、マジェンの鋭い蹴りが飛ぶ。あと少しでも遅れていたら、場外へと蹴り飛ばされていた。


 疾風の舞を発動してもなお、重力に体が負けそうになる。

 ネイはリングに引っ張られ、()つん()いの姿勢を保つ。

 受けた傷のせいで、踏ん張りがきかなかったのだ。


「くぅ……」

「ガハハッ! まるで可愛い子猫ちゃんみたいな姿勢だな。最初の頃の威勢(いせい)はどこへ行った? ん? 子、猫、ちゃん」


 (あお)りのお返しか、案外マジェンは子供っぽい一面がある。

 ネイは痛みに耐え、ゆっくりと立ち上がった。


「くっ……」

「我は重力を自在に操作ができる。だから()()()程度じゃ、どんなに頑張ったって吹き飛ぶことはないぜ?」


 ネイは(いぶか)しく思い、眉間に力がこもる。

 第五節(大空の波紋)で吹き飛ばせなかった理由は、紋章術か固有能力を発動していたかららしい。敵が描いた紋様を見落とすなど、ありえない失態(しったい)であった。


(絶対に……ない……でも……)


 ネイは断言できなかった。

 意識が行き届かなかった可能性は、あり得なくもない――ゼイドに言っておきながら、自分もまるで練度(れんど)が足りない。心の中でこっそりと猛省(もうせい)した。


 マジェンは腕を組み、余裕といわんばかりの姿勢を取る。

 ネイは唇を引き締め、マジェンを(にら)んだ。


「なるほどね。こりゃあ、強いわ」

「どうだ? 降参でもするかい?」


 咲弥のような超攻撃型であれば、話は別だが――どの術を試そうとも、ネイの実力では相手の防御を破れそうにない。

 現状、ネイが最大の威力(いりょく)を出せる紋章術は第六節(暴君の宝玉)となる。


 しかしエーテルを込めたところで、きっと通じはしない。

 第三節(戦神の号令)での出来事が、それを如実(にょじつ)に物語っていた。

 それは、単純にネイの力量不足が原因なのか、マジェンの耐久力による問題なのか、または何か別の絡繰(からく)りがある。


 さらに固有能力の正体も、まったく見抜けていなかった。

 客観的に見れば判明する事柄以外、べらべらと語るようなばかではないらしい。なににしろ、今のネイではマジェンを強引にねじ()せられないだろう。


 そうはいっても、リング外に吹き飛ばすのは難しい。

 重力による問題は、かなり深刻であった。

 対戦相手を間違えたと思えるぐらい、とても相性が悪い。


(はぁあああ……)


 ネイは内心で、重いため息をついた。

 咲弥のお(かげ)で、現状を打破(だは)する方法がなくもない。ただしそれは最悪にして、もっとも危険な方法でもあった。


 とはいえ、体力やオドをこれ以上は消耗すべきではない。

 その奥の手すら、扱えなくなる可能性が出てくるからだ。

 ネイは諦めの境地で息を整え、静かに声を(つむ)ぐ。


「奥の手はあまり、見せたくないんだけれどねぇ……」

「どんな攻撃だったとしても、我には通じないぜ?」


 マジェンが大斧を構え、戦闘態勢を整える。

 ネイはゆらりと右手を伸ばし、若草色の紋様を浮かべた。


「風の精霊フェリアティール。召喚」

「んなっ? お前も精霊……だとぉっ?」


 若草色の紋様が強く輝きを放ち、盛大に破裂した。

 ネイの付近に、いくつもの碧色(へきしょく)をした円陣が描かれる。

 どこからともなく、陽気(ようき)な音色が響く。


 色違いの三角帽子をかぶった――幼児程度の大きさがある妖精達が、楽器を(かな)でながら円陣の中から飛び出してきた。

 妖精達の帽子には、それぞれ数字が刻まれている。


「ハイ! ハイ! ハイ!」

「ソレ! ソレ! ソレ!」

「ヘイ! ヘイ! ヘイ!」

「セイ! セイ! セイ!」

「ホイ! ホイ! ホイ!」

「やぁ! とぉ! だぁ!」


 六体の妖精達が、円を描くようにぐるぐると回り始めた。

 演奏の音が徐々に大きくなり、妖精達が通ってきた円陣が(ちり)のごとく砕けて舞う。小さな(きら)めきが流れ、妖精達が囲む中心へと集まっていく。


 すると爆発にも等しい風が、突如(とつじょ)として発生した。

 白い雲っぽい寝台(ベッド)で寝そべる、とても色っぽい容姿をした精霊が現れる。

 寝起きなのか、気品めいた衣服が少し乱れていた。


「ふぁああ、あぁ……んぅ。なんだか、劣勢ねぇ。てか……なんだか重いわぁ」


 フェリアティールは(あで)やかな声で、眠たそうにぼやいた。




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