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90話 スキルレベル30

首が3つあるという事は急所もそれぞれにあるのだろうか?

 

 俺はそんな疑問を抱え、ギドラスライムがこちらの様子を窺っているうちにジャマダハルを装備し、構えた。


「うるがぁ……」


 するとギドラスライムは俺が構えたのを見ると低く唸り声を上げ、今度はゆっくりと後ろに下がる。


行動の意図が分からない。だが、考えてばかりでも仕方ないか。

 とにかくギドラスライムが攻めてこない今がチャンス。


「≪透――≫」

「白石さん。ここは私が」


 俺が≪透視≫を発動させようとした時、それを阻むようにして猩々緋さんの口が開いた。


「ポーションだって限りがあるし、白石さんはメタル系のモンスター、それと万が一に備えてMPを温存しておいてください」

「でもそれだと猩々緋さんばっかりに負担が……。俺も一緒に戦います」

「うーん。はっきり言ってしまうとメタル系との戦闘以外で白石さんの力を借りるというのはむしろマイナス。端的に言えば邪魔です」


 猩々緋さんはさらりと自尊心が傷つくような言葉を吐いた。

 だが、その顔に悪意がない所為で怒るに怒れない。


「邪魔って……」

「誤解しないでください。一般的に見て白石さんは強いですよ。あの闘争心と戦闘センスはA級、いやS級下位グループと同じ位だと思います」

「だったら……」

「そう、同じ。あの中途半端な人達と……」


 猩々緋さんは少し寂しそうな表情を一瞬だけ見せると、またすぐにいつもの余裕綽々な表情に戻った。

 

 今のは一体……。


「うるがぁあ!!」

「なるほど、後ろに下がったのは近距離戦闘を避けるためでしたか」


 猩々緋さんの一瞬見せた表情から様々な事を勘繰っていると、ギドラスライムが遂に攻撃を仕掛けてきた。


 真ん中の頭が吠え、こちらから見て右側の顔が勢いよく炎をまき散らす。

 

 その炎は横方向に広がり、まるで壁のようになって押し寄せる。


「白石さんは階段の前の辺りにいてください。そうすれば攻撃を受ける事はありませんから」

「えっでも、炎が」

「炎……。ああ。これですか……」


 猩々緋さんは俺から炎の壁に目を移すと、そっと右手を炎の壁に向けた。

 焦っている様子はまるでない。


「『ウォーターボール』」


 猩々緋さんがスキル名を呟くと、右の掌の前にうねるように水が集まりだした。

 そのうねりは激しく速く、強い風をも起こす。


 その風に飲まれるようにして炎の壁は渦となり、水に吸われていく。

 まるで猩々緋さんが生み出した水に炎が食われているようだ。


「うるぁがぁああ!?」

「あれ? 私はまだスキルを放つ準備をしていただけなのに……。あなたの炎はとってもおしとやかで、弱いんですね」


 猩々緋さんが言葉を言い終わるころには、縦横数メートルはある大きな水の塊が俺の目に映っていた。

 

 そしてその水の塊は猩々緋さんが右手を少し前に倒すと凄まじい勢いで飛んでいく。


「ヴガッ!!」


 ギドラスライムは3つの首でそれを受け止めようとしたが、案の定受け止めきれず、ふっ飛ばされ、背中を壁に打ちつけた。


「うが、が……」

「あれ位の炎ならこのように最初に覚えられる低消費MPの魔法スキルで十分防げるんですよ」

「こんなに簡単に……そのスキルレベルとかって聞いても……」

「えーっと、確か30位だったと思います。ある程度レベルを上げていくと、スキルポイントが余り出すので……」

「レベル30ですか!?」

「ああ。そっか、そうですよね。白石さんのレベルだと驚かれて当然でした。それよりも見てくださいあのギドラスライム。私が炎を消す為だけに使ったスキルでグロッキーですよ。ははははっ!」


 ころころと表情を変える猩々緋さん。ここまでコロコロと表情を変えられると、全部別の人格があるんじゃないかとさえ疑いたくなる。

 普通そうな見た目とは裏腹に大分変った性格であることは間違いないだろう。


 それにしてもこの人がS級2位。一体1位はどれ程強い人物だというのだろうか?

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