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87話 橙谷サイド:分断

「きゅあぁぁああ――」


 目の前で飛び散るスライム達の体液。

 俺や桃ちゃん、それに他のA級探索者が攻撃に転じようとする隙さえも与えてはくれない。


「はは、S級探索者様の力はいつ見ても見惚れるもんだな」

「桃だってあれくらい出来る。柿崎も他のS級探索者もちょっと飛ばし過ぎ」

「2人も周りに敵が居たらガンガン攻撃してくれよ! 特に橙谷はおっさんの癖にさっきからそわそわして気持ち悪い。集中しろっ!!」

「気持ち悪いって……それは言いすぎだろ」


 俺が桃と話をしながら前に話されないように走っていると、後方から柿崎の激が飛んできた。

 歳は俺の方が上だが、S級とA級っていう立場上、こういう仕事の場面だと柿崎が上司の様に振舞う。


 最初は違和感があったが慣れてしまえばそうでもない。


「ん? 階段が2つか、どうする栗宮くりみや

「そうだな。今の敵の強さであれば常にこの人数で固まっている必要もないだろうし、もし報告にあった椿紅と遭遇してもこのメンバーであれば逃げ帰る事は簡単だろう。今回は一刻も早く小紫を捕らえ、モンスターの異常化を食い止めなければいけない、その為にここは2手分かれて進むと――」

「その判断、ちょっと待ってもらってもいいか?」


 この探索隊の指揮を執るS級7位の栗宮博くりみやひろしとS級8位の藍沢鉄平あいざわてっぺいが2つの階段の前で足を止めた。

 この2人は如何にも真面目といった風貌で、ここ54階層に来るまでの印象も良かった。

 もちろん2人の指示に不満があるなんてことはなく、黙ってここまでついてきたが……。

 

「……橙谷さん、でしたね。2手に別れる事は不満ですか?」


 俺が話に割って入ったのが意外だったのか、栗宮は少し驚いたような表情で振り返りこっちを見た。

 歳は俺よりも下で、敬語なのが更に印象がいい。

 柿崎なんて敬語を使うような素振りもないのに……。


「不満というか、不安だな。この先のモンスターの強さは実際に肌身に滲みている。戦力は少しでも多い方がいい。それに……」

「それに?」

「メタル系スライムが寄生した椿紅は強力過ぎる。はっきり言って、S級トップ3と白石君がいない現状で遭遇したら……最悪死人が出る」


 俺は栗宮の目を見つめ訴えかける。

 

 すると栗宮はふっと息を吐き、やれやれといった表情を見せた。


「そんなに熱く訴えかけられたら、その意見を飲まないわけにはいかなくなりますね。……。みなさん!! ここから先もこのまま突き進みます!! 俺と藍沢に続いて――」


 ごごごごごごごご……ずどんっ!!!!


 その時、フロア内に大きな地響きの音が鳴り響き、俺達の立っている地面を大きく揺らした。

 後方で何かが崩れるような音も聞こえ、立っている事さえままならない。



 ボゴっ。ズサッ!!!



 唐突に発生した地震に身を揺らしていると、今度は俺達を分断するように地面が盛り上がり、階段と階段の間に壁が生まれた。


「しまった!!!」


 俺の立っているギリギリのところに壁が出来てしまい、藍沢と栗宮、それに探索隊にいたS級の殆どと分断されてしまった。


 こちら側に残っているのは俺と桃と柿崎とA級1、2、4位とS級10位の京紺さなえ(きょうこんさなえ)の計7人。

 はっきりいって戦力に不安しかない。


「おさまったか……おーい、そっちは大丈夫か!!」

「大丈夫です!!」

「そっか、それは良かっ――」



「きゅっ!!」



 揺れが収まると俺は壁の先にいる栗宮達に大声で声を掛けた。

 そして返ってきた返事にほっとするのも束の間、どこからともなく銀色のスライム達、『シルバースライム』が現れたのだ。


「こいつらは!?」

「そっちにも出たか……」


 藍沢の驚く声がこっちまで聞こえ、同じような状況だという事が何となくわかった。


 俺はとにかく壁を取っ払おうと、地面に手を当て、スキルを発動させる。


「『アースディ――』」


 その時だった。

 シルバースライム達が勢いよく壁に張り付きだし、茶色い土の壁を銀一色に変えてしまったのだ。



「『ティアドロップ』」



 その壁に向かって、小さな水滴が飛んでゆく。

 水滴がピトリと壁に当たる瞬間、俺は慌てて身を屈めた。



 バンっ!!!



 強烈な破裂音。

 壁の合った場所からはもわもわと白い煙が上がり、俺の視界も白に変えてしまう。


 桃の最大火力スキル『ティアドロップ』。

 硬い皮膚を持つドラゴン種ですら一撃で粉々になるような強力な攻撃。


 だが……。


「……ちっ。堅い」


 煙が消えたそこには傷一つない壁が聳え立っていたのだった。

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