82話 強敵の予感
「ごがごが……ぷふぁっ」
シルバードラゴンスライムは美味そうに『回避の加護』のエフェクトである光の球を咀嚼し、それを飲み込んだ。
まさかそれを食われるなんて思ってもみなかっただけに、遂その光景を傍観してしまった。
「白石さーん。HP回復されてますよぉ。大丈夫ですかぁ?」
遠くで戦闘を眺めていた猩々緋さんに声を掛けられ、はっと気付いた。
俺がなんとか与えたダメージはすっかり回復され、ゲージが満タンになっていたのだ。
スライムを操ったり、回復したり、『回避の加護』のエフェクトが食われたってことはバフをかき消すスキルでも持ってるのだろう……こいつは満場一致で害悪モンスターだな。
「ごがぁ……」
「しかもなんかでかくなってる」
光の球を喰ったシルバードラゴンスライムの体はさっきまでよりも長く、太く成長していた。
対象を捕食する事で成長、回復するスキルってことなのか?
そういえば、ミニドラゴンスライムが仲間を呼び出したときに居たスルースライムの姿がどこにも見えない。
成長スキルにスルースライムの不在。
推測するにこいつはスルースライムをアイアンメイデンの中で捕食し、進化したってことか?
「ごがぁっ!!」
「いっ!!」
思考に耽っていると、シルバードラゴンスライムは長くなった身体を思い切りしならせ、尻尾で俺とそこらに落ちているスライムを薙ぎ払った。
俺はそのまま壁際まで吹っ飛ばされ、地面に落ちた。
「痛ってぇ」
身体に痛みはあるものの、致命傷にはなっていない。
シルバードラゴンスライムの攻撃力は見たほど高くはないようだ。
「ごがぁっ!!」
「こいつ……。でもそっちのがありがたい」
シルバードラゴンスライムはまるで蛇のように体をうねらせながら、追撃をしようとする。
俺としてはまた空中に飛び上がられた方が嫌だったからこれはむしろありがたい。
「『瞬脚』」
シルバードラゴンスライムが目の前まで引き付けてから俺は『瞬脚』を使った。
そして、すかさずシルバードラゴンスライムの尻尾をジャマダハルで突こうと右手を思い切り引く。
バシっ!!
「いっ! こんの……」
しかし、それに気付いたのかシルバードラゴンスライムは尻尾をぶんぶんと振り回す。
「大人しくしろ!! 『剛腕』」
俺は『剛腕』を発動させると、尻尾を脇に挟み込み、無理やり動きを封じた。
シルバードラゴンスライムはまずいと思ったのか今度は身体ごとねじって抵抗を試みるが、『剛腕』を発動中ならこの程度の抵抗はわけない。
「喰らえっ!!」
俺は押さえつけたシルバードラゴンスライムの尻尾の先にジャマハダルを突き刺した。
相当痛みを感じているのかシルバードラゴンスライムの抵抗は一層強くなる。
だけども俺の攻撃は終わらない。
俺は突き刺したジャマダハルをぐりぐりとねじり、シルバードラゴンスライムの尻尾を貫通、更にはそのまま深く地面にジャマダハルを突き刺してシルバードラゴンスライムを完全にその場に固定させた。
状態を例えるなら、鎖に繋がれてその場から動けない飼い犬ってとこだろう。
「ごが、ぁあ!!」
シルバードラゴンスライムはなんとかその場から逃れようとするが、それはもう不可能。
しかも、ここに来てスキル『毒の神髄』の効果が現れ、毒状態に。
この時点で俺の勝ちは確定したも同然。
「ご、が、……」
毒が全身を巡り、辛そうに身をよじるシルバードラゴンスライム。
口からは、粘液が噴き出し、動きも鈍くなる。
「お、げぇっ!」
「これは!?」
シルバードラゴンスライムが嗚咽を漏らし、盛大に口から粘液を吹き出した。
すると、それと同時に口からにゅるりと銀色のなにかが飛び出した。
それはレッドメタリックスライムでもレッドメタルスライムでもましてやシルバースライムでもない。
「【シルバージャックパラサイトスライム】」
そう表記されたスライムはドロッとした見た目から次第に変化し、そして人間の子供のような姿で俺の前に立ち塞がったのだった。




