80話 【シルバードラゴンスライム】
「S級2位!?」
「ええ。万年2位の猩々緋です。はははっ。……はぁ。あんまり時間がたつと追いつくのがきつくなりそうなので早速始めましょうか」
猩々緋さんの口の端がぴくぴくと動くのが見えた。
どうやらS級2という序列が猩々緋さんにとっての地雷ワードらしい。
「ごがぁぁああああぁああ!!」
「おお、元気いっぱいですね! この【アイアンメイデン】は珍しい拷問スキルで、じわりじわりと中の針がダメージを与え、死ぬ一歩手前になると今度は回復を促します。活躍の場が限られるから殆ど使ってなかったんですが、新しい規制の魔法紙の作成中40階層のボスを拘束し続けられたおかげで見張りの人達の負担を減らせたんですよ。ちなみに今もこのスキルを使っているのは、スキルを解除し忘れてたとかそういうのでは決して、決してありませんからね」
アイアンメイデンから漏れた声に嬉しそうな表情を浮かべると猩々緋さんはスキルの説明を始めた。
つまり、猩々緋さんはこのスキルをあの日から今の今まで発動し続けていたというわけか。
消費MPが無いスキルなのか、それとも……。
「それで、機会を与えるというのはもしかして……」
「はい。この中のモンスターを私の前で討伐して見せてください」
「それは俺の事を舐めすぎてませんか?」
今更ミニドラゴンスライムで俺の力量を試そうなんて……流石に馬鹿にされているとしか思えない。
「舐めている、ですか。その自信もいつまで持ちますね」
猩々緋さんは不敵な笑顔を浮かべると、そうっとアイアンメイデンの扉部分に触れた。
するとその扉はぎいっと音を立ててゆっくりと開きだし……。
「「「きゅっ!!」」」
「これは!?」
扉の隙間から雪崩のように大量のシルバースライムとレッドメタリックスライムが零れてきた。
ずっと閉じ込められていたせいなのか、どの個体もHPは減っていないがどこか疲れたような動きをしている。
というか、その場からなかなか退こうとしない。
「ごがぁぁぁああああぁぁ!!」
「きゅっ!!」
そんなスライム達を弾き飛ばしながら奥に潜んでいたこの階層のボスが遂に顔を現す。
ただその顔は俺が良く知っている者とはまるで違う。
もはや経験値ドラ太郎なんていう名前さえも付けられないほど、凶悪な顔と照りだ。
「【シルバードラゴンスライム】……」
「いやぁ、反応が大きくなっているから【アイアンメイデン】の中でミニドラゴンスライムが進化したのは分かっていたんですけど、ここまで立派になられているとは……」
そんな言葉を漏らす猩々緋さんだが、その顔に焦りは見えずどこか楽しげにも見えた。
この人にとっては、その程度のモンスターにすぎないという事なのだろうか?
「これを見てもまだそんな自信満々でいられますか?」
「……勿論です」
「……そうですか。ではどうしても助けて欲しくなったら言ってくださいね。新米B級探索者白石輝明さん」
アイアンメイデンがゆっくりと消え、それに合わせるようにして猩々緋さんは階段近くに移動し始め、そこに腰を下ろした。
うーん。それにしても明らかに年下の青年に試験官面され続けるのは、気分が良くない。
ここは出し惜しみせずに、全力で畳みかけてやるとしよう。
「『毒の神髄』『透視』『回避の加護』『即死の影』『隠蓑』」
「へぇ、これはちょっと……面白いかもですね」
俺はジャマダハルを取り出すと、全てのバフ系スキルを発動させて【シルバードラゴンスライム】にその刃を突き付けるのだった。




