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7話 再びの強敵はただのカモでした。

「昼間だけどあんまり人いないなぁ」


 ダンジョン【スライム】のあるビルの自動ドアをが開くと、心地よい冷気が身に染みる。

 平日の昼間なんていうのは仕事のゴールデンタイムだと思っていたんだが。思ったより人がいない。


「皆【獣】の方に行ったのか? んっ?」


 ダンジョンの受付付近に見覚えのある後ろ姿を見つけた。

 あの後ろ髪、間違いない。


「椿紅ね――」

「すみません私並んでるんですけど」

「あ、すみません」


 昨日の件について弁解しようと、椿紅姉さんのいる受付に走ったが、ダンジョン侵入待機列の女性にぶつかってしまった。

 椿紅姉さんはそのままダンジョンへ……。


「はぁ、仕方ないか。俺も並ぼう」


 俺はポケットから顔写真の付いた探索者証をポケットから取り出すとたった8人の列に並ぶのだった。



「よし、やっと着いた」



 ぶるん。



 昨日ぶりに見た巨体は大きく体を震わせながらこちらを凝視している。

 中ボスは30分おきに∞にリスポーンされるのだ。


「ボススライムを≪透視≫」


 俺は早速覚醒したスキル≪透視≫を発動した。

 ボススライム体は透け、急所が赤い点となって表示される。

 思った以上のタフさで削り切れなかったHPも急所を突けば、削り切れるだろう。


 俺はほどよい緊張感と強くなった自分を試したいという気持ちで高揚感に包まれていた。


「急所は眉間か……。位置が高いのは厄介だな」

「きゅるああああぁぁあぁああ!!」

「早速か!」


 ボススライムはその巨体で突進してくるとその勢いのまま宙に跳ねた。

 昨日見たのしかかり攻撃。

 だが今は仲間のスライムはいない避けるのは簡単だ。



 ドスン。



 ボススライムの巨体は俺から離れた所に着地した。

 やはりあの状況で無ければ遅くない攻撃。

 それどころか着地した反動でボススライムの体が横に伸びて眉間が攻撃の範囲内まで下がったのだ。

 


 これはまたとないチャンスっ!



「喰らえっ!」



 べちょべちょっ!



 俺の振った剣は寸分狂わず急所を斬りつけた。

 2回斬りつけた事で会心のエフェクトも2回発現。

 傍から見たらとんでもないスキルを使ったように思われるかもしれない。それくらい攻撃が派手に決まった。


 これは……快感だ。


「きゅるああああぁぁぁああ!!」

「もうお仲間を呼び出すのか? 弱虫な奴だな、お前」


 ボススライムが鳴き声を上げると地面から3匹のスライムが現れた。

 ここまでは昨日と全く同じ。

 

 ただ、違うところが1つだけ……。


「あの黒い点も急所か?」


 ボススライムの腹の奥。体の中心に黒い点が現れたのだ。


 赤い点と黒い点が見えるようになったボススライム。一体どっちを攻撃すれば……。



 ぽよん。ぽよん。ぽよん。



「鬱陶しいがもうお前らに邪魔は出来ないぞ。なぜなら」


 スライム達が俺を取り囲み襲いかかってきた。

 しかし、今の俺であればこんなスライムは……。


「きゅっ!」

「一撃で倒せるからだ」

「きゅるああぁあぁあぁぁあ!!」


 俺が格好つけているとまたボススライムは飛び上がった。

 それに合わせて残りの2体は突進してくる。


「その戦法はもう効かない!」

「きゅっ!」

「きゅっ!」

 

 俺は残り2体のスライムも会心の一撃で葬った。

 スライムはたちまち姿を消し、いつものドロップ品スライムゼリーだけを残した。


「きゅるああっ!」

「ふっ」


 ボススライムののしかかり攻撃を今度はギリギリの位置で避けると、すかさず眉間の赤い点を剣で斬りつけた。


「あああああぁっ!」

「きゅ、きゅきゅるぁああっ!!」


 ボススライムが逃げる暇もなく何度も何度も同じ個所を斬った。

 俺の与えられるダメージが飛躍的に増えたお蔭で、あのボススライムのHPはその度10分の1ずつ減っていく。


 ボススライムはというと切られる度に怯んでしまい、ゲームでいう嵌め技を貰っている状態になっていた。

 少し可哀想な気もしたが、俺は最後の一撃まで手を止める気はない。


「終わりだっ!」

「!?」


 ボススライムは遂に動かなくなり、その場に横たわった。


「勝った……それも簡単に。は、ははははやった。やった! はははははっ、は?」


 勝利の喜びに浸っているとボススライムの中に見えていた黒い点がゆっくり動き始めた。

 そして、それはボススライムのお尻付近に近づくと黒ではなく赤い光沢の身体を見せてくれた。


「お前もしかしてボススライムに寄生して……」


 姿を見せたレッドメタリックスライムはそそくさとその場を去ろうとした。


「逃がすわけないだろ」


 俺はそれを先回りしてレッドメタリックスライムの正面に立ち道を塞いだ。

 

 なるほど。

 ボススライムは仲間を呼び出すときレッドメタリックスライムも呼び出している。

 ただレッドメタリックスライムは臆病な性格なのか、積極的に襲ってこないでボススライムの中に居座り、いや寄生していたのだ。


 実はレッドメタリックスライムがここで出現した理由がランダムで低確率或いは厳しい条件での出現だったらどうしようかと思っていた所だった。



 それにしても出現方法がこんなに単純だったなんて……。

 さて、楽しい楽しい経験値の荒稼ぎをさせてもらおうかな!



「≪透視≫。……くっ。くくくくくっ。30分でリスポーン。30分でリスポーン。30分おきに高経験値っ!」


 俺は効果が切れた≪透視≫を再び発動させると悪人の様に笑ってみせたのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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