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67話 吸引

 俺は巻き上がった砂とは反対を向き、ジャマダハルを振った。

 しかし、ジャマダハルは空を裂き、ファングヒポモスの姿はない。


 先程と同じ攻め方は危険と察したのだろうか?

 とはいえ俺は『回避の加護』を発動させている。

 どんな不意打ちであろうと一回はやり過ごせ――


「なっ!? 足元が!」


 いきなり足元の砂が何かに飲まれるようにして沈み始めた。

 その勢いは凄まじく、あっという間に膝下まで飲まれてしまった。


「かぱぉあぁおお」


 『ずさぁあ』という砂の流れる音に紛れて聞こえるファングヒポモスの鳴き声。

 気付けば砂の中からファングヒポモスの鼻先が微かに見えている。

 

「まさか、俺を砂ごと飲み込むつもりか!?」


 ファングヒポモスの鋭い牙も見え始め、自分の置かれている状況を察した。

 俺の真下で大口を開けて砂を飲むファングヒポモスと砂と同様に飲まれそうになる自分。

 まるで蟻地獄とその餌のようだ。


「かぱぁ」


 あり得ない程大きく開いていた口が閉じ始め、その鋭い牙が迫ってきた。

 そしてファングヒポモスのぶよぶよの上唇が俺の身体に触れると、ファングヒポモスは地上に飛び出す勢いを利用しながら、一気に砂と俺を吸い込み、その口を閉じた。


「……。かぱぁ?」

「『回避の加護』は直接ダメージを受けるときに発動するのか……。危なかった」


 地上でもしゃもしゃと口を動かすファングヒポモス。

 だが、確かに口に入れた筈の俺の触感がないことに違和感を感じたのか、その首を傾げた。


 そんなファングヒポモスの様子を俺はその背中に乗りながら、眺めていた。

 無事『回避の加護』が発動された事で、ファングヒポモスの腹の中に進まずに済んだのだ。

 だが、ひやりとしたのは本当で、飲まれるだけでは『回避の加護』は発動せず、咀嚼しようと口を閉じ、歯が当たる瞬間に『回避の加護』は発動した。

 つまり、直接ダメージを受けるようなタイミングでないと『回避の加護』は発動しないのだ。

 

 あのまま、飲まれていたら一体どのタイミングで『回避の加護』が発動してくれていたのか……。


「『透視』『即死の影』」


 俺はファングヒポモスに気付かれる前に、『即死の影』を発動、念のため『透視』を上書きして、急所の鼻先を一気に貫いた。

 ファングヒポモスは勝った事を確信していたのだろう。驚きのあまり声も出せない様で、ただただ、目を見開くばかり。

 

 俺はそんな無防備なファングヒポモスの鼻先を今度は左のジャマダハルで突く。

 すると、ファングヒポモスは巨大だが、シュッとした図体を横たわらせ、ゆっくりと消えていった。


 HPの減少はそこまで見られなかったが……『即死』のお陰で攻撃さえしっかり決まれば、問題なく倒せる敵のようだ。


 『+3000』。予想通り牙を折った事で経験値は跳ね上がった。

 この経験値量は殆どレッドメタリックスライムと同じ。通常モンスターでこの経験値。うまい、うますぎる。


 ドロップ品も無事回収し、一先ず状態異常を回復させる為休憩をとろうとすると、近くで再び砂がプシュッと吹いた。


 どうやら俺が戦っているのを偵察していたファングヒポモスが居たようだ。

 

 そのファングヒポモスは何度か砂を吹かせながら、俺からどんどん遠ざかっていく。

 仲間でも連れて来る気だろうか?


 であればここで逃すのは得策じゃない。


「状態異常回復のポーション……これも高かったんだけどなあ」


 俺はアイテム欄から赤色のポーションを取り出し、それを飲み干した。

 すると、麻痺はゆっくりと治まり始めた。

 速攻で回復できるHP、MPのポーションとは違い、状態異常回復のポーションは即効性が低いようだ。


 それでも、直ぐにファングヒポモスを追いたい俺は、ゆっくりゆっくりと歩き始めた。



「やっと、治った」

 

 約20分ほど経つと麻痺は完全に抜け、自由に動けるようになっていた。

 そして俺の目には、さっきまでとは違う光景が映り込む。


 5体ほどのファングヒポモスの群れと、のっそりと体を地上に姿を現した俺の追っていたファングヒポモス。

 それに、数本のヤシの木と、涼し気な美しい池とその先に見える階段。


「階段の在りかはオアシスでもあり、ファングヒポモスの巣でもあるってことか……」


 階段の存在に喜ぶのも束の間、そこがファングヒポモスの巣であったことが分かり、足を止めると、今まで追っていたファングヒポモスが仲間をオアシスから連れ出そうと鳴く。


 6対1。

 だが、距離はある。

 俺は自分の存在に気付かれる前に、アイテム欄からスルースライムゼリーを取り出し、口いっぱいに放り込むのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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