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65話 将軍

「ヴォヴァゴォオオォオォォォォオ!!」


 俺の呟きに気付いたのか将軍サイリアはけたたましくその場で鳴いた。

 その鳴き声で部屋が揺れると、地面から生えるようにしてサイリアが2匹現れた。


 サイリアは斧を構えじりじりとこちらに迫ってくる。

 流石に慣れた敵ではあるが、未だにダメージを受ける事があるモンスターではあるから一応『回避の加護』を発動させ、渋らずに≪透視≫も発動させた。


 最悪一発攻撃を受けそうになっても大丈夫な状況を作れた俺は、サイリア目掛けて駆けだした。

 まだ分からないが、もし、連続してサイリアを呼び出されて、囲まれでもしたらたまったもんじゃない。

 早いうちに雑魚モンスターは処理する。



 ドスン。



「なっ!?」


 俺が駆け出し始めると、将軍サイリアは右足で地団太を踏み、地面を揺らした。

 足場が悪くて思うように動けないでいると、サイリアが俺を挟み撃ちにして、襲いかかってきた。


 なぜだかサイリアはこの揺れをもろとしない。

 なんていうかフェアじゃないだろ、これ。


 2匹のサイリアは俺の首を狙いながら、斧を振り回す。

 問題なく避けれるが、いかんせん反撃は出来ない。

 

 俺は仕方なく一方のサイリアの斧に自ら当たりに行き、わざと『回避の加護』を発動させた。

 『回避の加護』はリキャストタイムが長いだけに一回一回大切に使いたかったところだが、この状況なら仕方ないだろう。


「はぁっ!!」

「ぶあっ!?」


 ジャマハダルがなんなくサイリアの首筋を突き刺した。

 『即死の影』を使っていないせいで、HPは削り切れていないが、かなりでかいダメージを入れる事が出来た。

 俺は怯んだサイリアに追撃を食らわせようともう一度ジャマハダルを突き刺す。


「ぶ、あっ!!」


 すると、サイリアはジャマハダルが突き刺さった状態で俺の腕を掴んだ。

 カランと落ちる斧を最早拾おうともしない。


 動きを拘束されているともう一方のサイリアが攻撃を仕掛けてきた。

 必死にもがくが、サイリアは俺の腕を離そうとはしない。

 

「早く! 早く、消えろっ!!」


 俺は刺さっているジャマハダルをぐりぐりと動かし、もう一方のジャマハダルを何度もサイリアの体に斬り付けた。

 

 その甲斐あってなんとか俺はその拘束を解く事が出来、直前で攻撃を避ける事に成功した。

 ずっと単体のみで行動していたモンスターだが、主が居る事で連携も獲れるようになっているらしい。



 ずおっ!



 窮地を脱し、ふっと息を吐くと、上から重々しい音が響いてきた。

 

 天井……。いや、手だ!!


 勢いよく降り注ぐのは将軍サイリアの手。


 俺が動けないのをいいことに将軍サイリア自ら攻撃を仕掛けてきたのだ。


「『瞬脚』!!」


 俺は慌てて瞬脚でその攻撃を受けない場所まで移動すした。

 だが、その場に取り残されたサイリアは、それを防ぐ術もない。


「べぎゃっ!!」


 情けない鳴き声と共にサイリアは将軍サイリアに潰された。

 通常のサイリアは将軍サイリアにとってただの手駒でしかないようだ。


 将軍サイリアは俺を潰せたと思ったのか、その状態で天を仰ぎながら笑い出した。

 俺はその間に、将軍サイリアの手に乗ると、一気に駆ける。


 また変に大声を上げられたり、大きく動かれれば吹き飛ばされてしまう。

 今のような止まっているときしか、攻撃のチャンスはない。


 急所はサイリアと同じ首筋。

 俺はその地点まで全力で走る。


「ヴォア?」

「気付いたか!?」


 将軍サイリアは腕を駆け登る俺に気付いたのか、腕をぶるぶると振るわせた。

 足元が揺れまともに動けなくなった俺は、一か八か今いる場所から肩まで『瞬脚』を使って飛び上がった。


「届ぇぇぇええ!!」


 なんとか将軍サイリアの肩に脚をかける事が出来た。

 俺はそのまま『即死の影』を発動させて、一気に首筋を狙う。



 ぶおっ!!



 その瞬間俺の後方から凄まじい風が吹いた。

 おそらく、将軍サイリアが蚊みたいに俺を潰そうと手をこっちまで向かわせているのだろう。

 手の大きさからしてこの場所で避けるのは不可能。更に『回避の加護』も『瞬脚』もリキャストタイムに入っている。


「なら、突っ込むだけだ!!」


 俺は更に足を加速させ、首筋目掛けてジャマハダルを突き出した。

 刺さっても、『即死の影』が発動しなければ……。

 最悪の場合に俺に襲いかかる悲劇。それを想像しただけで額から汗が流れ、目から涙がこぼれる。


「くっ、ぁぁああああぁあああ!!!」


 そんな最悪を吹き飛ばすように俺は大声で叫んだ。

 

 風が余計に俺を加速させる。


 間違いなく、こっちの攻撃が先行出来る。



 即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ即死しろ。



 俺は頭の中で念仏を唱えるようにその言葉を連呼して、ジャマハダルを将軍サイリアの首筋に差し込んだ。



「ヴォ、あ……」


 『即死の影』のエフェクトが発現し、風が止んだ。振り返ると手はすぐそこ。

 本当にぎりぎり。もう一発攻撃する事も許されない状況。


 ぐらぐらっと揺れ、ゆっくりと倒れだす将軍サイリア。

 俺はそれにガシッと捕まり、一緒に地面に落ちる。


「いったたた……」


 将軍サイリアの体がクッションになり、落ちたダメージは殆どない。

 

 こんなにデカい敵を一発で倒せたことに清々しく思っていながら、痛む尻をさすっていると、『+3000』の文字と、目的である魔石が俺の目に映った。


「一仕事終えたが……まだ今日は寝られないんだよな」


 俺は解放感を感じると共に次の仕事の事を考えた。

 このやってもやっても終わらない感じ、会社員だった当時を思い出す。


「取り敢えず一服するか」


 俺はドロップ品を拾うと、再びコーヒーを取り出し、その場で腰を落ち着けるのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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