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6話 商売人忠利

「ほい、これが鑑定阻害のアイテム、神蟲のお守りだ。アイテム欄に入れてるだけで効果がある」

「うっ……」


 忠利から手渡されたのは蟲の死体。いや蟲のミイラと言った方がいいか。

 掌ほどの焦げ茶色の蟲で胴回りと頭の辺りに布切れが巻かれている。

 ぱっと見はでかいゴキブリ。


 俺は急いでアイテム欄にそれを押し当てて収納した。

 

 やばい鳥肌が……。でも匂いがなかっただけいいか。


「あ、ありがとう。それと今日はちょっと相談したいこともあるんだが、いいか?」

「もちろん。店の経営で同期の探索者よりランク自体は低めだが、知識はA級だと自負してるぞ」

「それじゃあ早速で悪いんだが……」


 俺はステータス画面の職業ツリーの部分を忠利に見せた。


「暗殺者見習いか、結構渋いのを選んだもんだな」

「本当は初級剣士にしようと思ったんだが、手違いで……」


 忠利は顎に手を当てながら、俺の表示した画面を覗き込んだ。

 やはり、見習い暗殺者はマイナー職業みたいだ。早速転職したい。


「ツリーが解放されたはいいが、どれを上げればいいかと思って……」

「それなら職業ツリーは基本的に攻撃を上げていくのがおすすめだ。職業によってはパーティー向けにツリーを進める人もいるけど、個人でダンジョン探索するのが主流の今はとにかく攻撃。次点で防御だな」

「なら怪力暗殺者に進化する方向の方がいいかな?」

「普通ならそれをお勧めするが、輝明には≪透視≫があるだろ? だったら間違いなく会心威力を上げて必殺暗殺者をとった方がいい。確か必殺暗殺者をとるとパッシブスキルの『即死』が取得出来たはずだからな」

「『即死』……」


 今までのゲーム経験上『即死』スキルは発動しなかったり、或いは命中がやたら低かったり、使い勝手が悪すぎるイメージがこびりついている。

 正直なところいい印象はない。


「『即死』は会心の一撃が出た時に低確率だが相手を一撃で倒せるスキル。そもそも会心が出ないんだからこんなしょうもないスキルは使えないと思っていたし、初めて必殺暗殺者に進化した人が慌てて転職をしたっていう話も結構有名だ」

「そうなのか……。えっ? 転職って可能なのか?」

「ん? もちろん出来るぞ。それが可能なレベルになればアナウンスが流れるはずだ」


 さらっと聞き流してしまうところだったが、転職は可能らしい。


「ただ、会心の一撃が簡単に出せる輝明なら必殺暗殺者も活かせるはずだ。しかも会心の一撃の確率補正は無理だが、『即死』の確率は武器で補正出来る。場合によっては『即死』を発動させまくれるかもしれない。とんでもなくロマンがないか?」

「確かに。……じゃあ取り敢えず会心威力に振ってみようかな」

「それで問題ないと思う。攻撃も大事だが、そもそも会心の一撃が通常攻撃の2倍ダメージになるから進化出来るポイントが集まるまで火力は十分なはずだ」


 俺は忠利に背中を押され、会心威力に40ポイントを注ぎ込んだ。


『40ポイントのジョブポイントを消費しました。3段階解放で会心威力が1.15倍になりました。ステータスに会心威力の項目が追加されます』


「よし。ありがとうかなり参考になった。困ったらまた頼らせて貰てもいいか?」

「もちろん! ただ、俺も商売人ってわけでな……ここからちょっとだけ商売の話をさせてもらってもいいか?」

「そうだな。手持ち金も増えたし、もうちょっとくらい買い物もしようかな」

「そりゃあ助かる! 実はさっき言った『即死』の確率補正の武器なんだが……特別価格でいい。俺に作らせてくれないか?」


 俺が持ってる武器は鉄の剣が一本だけ。

 作ってもらえるのにこしたことはない。

 

 それに、忠利のこの目の輝き。商売の話と言っていたが、多分鍛冶屋として新しい武器を作りたい衝動に駆られているだけなのだろう。


「それは有難いが……高いだろ? それに素材とか提供出来るものもないし」

「素材はさっき買い取らせてもらった。それにいったろ特別価格でいいって。今回は特別に5万で武器を作ってやるよ」

「5万って……」

「本当なら倍額以上はかかる仕事なんだけどなぁ」

「……わかったよ。まったくとんでもない商売人だな。まだ20歳前だっていうのに」

「へへへ、毎度ありがとうございます!」


 俺はさっき受け取った5万を忠利に渡すと店を出た。

 

 武器が完成するまでは数日かかるらしく、又連絡をくれるらしい。


「さてと……。飯食ってダンジョンに潜るか。今日の目標はレッドメタリックスライムを1匹以上……また忠利に高価格で買い取らせてやる」


 俺は自然と笑みを溢しながら、意気揚々とダンジョン【スライム】に向かうのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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