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52話 会長

ブクマ3000件・ポイント10000を突破しました。

多くの反応ありがとうございます!

「来たか。わざわざ俺を呼び出すなんて……この借りは高くつくぞ」

「そんなにつんつんしててもすぐ来てくれるんだもんな。どうせ借りも値切れば安くなるんだろ?」

「流石に今回は面倒だった。安くしてやるつもりはこれっぽちもないから覚悟しておけ。それでそっちが例の奴か?」


 本部の入り口を抜けると、ソファに座っていた片耳ピアスの金髪男性が明らかに不機嫌な表情で近づいてきた。


 話から察するにこの人を通す事で今回の件に対する提案をすることが出来るらしい。


「レベルは?」

「……57です」

「……ランクは?」

「C級、83位です」


 挨拶も無しに質問してきた男性は、はぁっとため息を漏らして眉間に皺を寄せた。


「いくらメタル系のスライムが倒せるからって、その程度の探索者を特別扱いするなんて提案は通らないと思うぞ。そもそも、A級のお前がダメージを入れられなくても俺みたいなS級ならダメージを入れられる可能性はある」

「試したのか?」

「……。それはしてない。そもそも滅多に出会えるものじゃないだろ」

「俺の予想であればあの椿紅ちゃんですらダメージが入れられなかった。だからあんな姿になった。S級で椿紅ちゃんより攻撃力の高い人なんて1人しかいないだろ。しかもその人はここ半年音信不通だそうじゃないか」

「そこだ、それがそもそも信じられない。お前が見た化け物は本当に椿紅だったのか? あの鬼を擬人化したような女がダンジョン【スライム】なんかでへまをするとは思えないぞ」

「俺も最初はそう思ったさ。でもあの小紫がこの件に関わっている。もしあいつがメタル系のスライムを強化するような研究をこっそり、しかも長期的に行っていたとしたら……」

「それでも――」

「何も俺はあの化け物に一撃貰っただけで撤退してきたわけじゃない。40階層以降のモンスターの殆どが強化されていて、そもそも道中でポーションを大量に消費する羽目になった。つまりあそこはもう高難易度ダンジョンのそれと同じような危険度にあるとみて間違いない。椿紅がやられたのもメタル系スライムだけが原因ではないだろう」

「なら尚更こいつを連れていくのは危険じゃないか。下手したら一撃で死ぬぞ」

「だからこそ、上と交渉する為にお前を呼んだんだ。察してく――」



「こんな場所で大声で討論はどうかと思いますよ。今回の件についての会議は間もなく始まります。そこの2人が柿崎(かきざき)が言っていた私に話のある探索者だね?」


 橙谷さんの言葉を遮るようにして、中年の男性が階段を下りながら話しかけてきた。

 この顔は俺もパンフレットやテレビで見た事がある。

 生の迫力はまた一味も二味も違い、その場に妙な緊張感が走った。


「会長……」

「S級探索者、柿崎琥珀(かきざきこはく)の要望で今回は特別に直接の対応をさせて頂きます。さぁ早く3階に行きますよ」


 こうして、俺と橙谷さんは探索者協会会長の跡をついていくのだった。


◇


「お集まりの皆さん。本日の定例会議の前に、こちらの探索者2人から報告、更には提案があるそうなのでお聞きいただくようお願い致します」


 3階の一番奥の部屋。


 その扉を開けると、俺でも知っているような各界の有名人が集まっていた。


 探索者協会の意思決定は外部からの圧力が殆どだったようだ。


「私はA級5位の橙谷と申します。数時間ほど前メールで連絡があったかと思いますが、モンスター研究者の小紫がダンジョン【スライム】で発見されました。こちらのC級探索者白石の話によると、小紫は同ダンジョンにてモンスターの研究という名のモンスター強化を行っており、私が調査したところその所為で40階層以降は相当な難易度に上がっていました。早急に規制のレベルを引き上げる必要があります。出来ればA級未満の探索者は侵入禁止に変更して頂きたい」


 橙谷さんの発言にその場はざわざわとし出した。


「すまんが、その条件の規制が出来る魔法紙は手元にない。今あるのはB級までの制限が出来る魔法紙だけだ。A級ともなればそれ用の魔法紙を作成しなければならない」

「そうなれば、それなりの時間と金がかかりますな。本当にそこまでのものが必要なんですか?」

「水瀬君程度の実力者が大怪我をしたからといって、それは大げさでは?」


 規制レベルの引き上げについて、あちこちで批判的な声が上がる。


「A級の俺が手も足も出なかった化け物があの奥にいます。おそらくその存在は椿紅がモンスターに飲まれたものでしょう」


 橙谷さんの発言にその場は一瞬静まり返った。

 しかし、少し経つと1人2人、それ以上の人数が一斉に笑い出した。


「あの椿紅が? そんな馬鹿な! 面白い冗談を言うね君は」

「冗談ではありません。白石君、悪いがシルバースライムのドロップ品を借りてもいいかい?」


 俺はそう言われ、アイテム欄からシルバースライムの心臓を取り出した。


「これはシルバースライムの心臓。あのダンジョンには誰も倒したことのない、倒せなかったシルバースライムが生息していました。もしこれが強化された状態で、いえ、これらが強化された状態、特に攻撃に特化された状態で襲ってきたとしたらあの椿紅と言えど撃退は不可能でしょう。因みに素のシルバースライムはA級トップの攻撃力を持つ私ですらゲージを全く減らせませんでした」


 笑っていた人達は橙谷さんの話に息を飲んだ。

 すると今度は探索者協会会長が口を開く。


「しかし、なぜ誰も倒したことがないシルバースライムのドロップ品を君が持っているんだね?」

「それは、ここにいるC級探索者が唯一これを倒せる存在であり、モンスターに寄生された椿紅を倒しうる存在だからです」

お読みいただきありがとうございます。

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