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5話 高価買取

「おっ! いらっしゃい!」

「今日はよろしく頼むよ」


 一夜明けて俺は忠利の営業している店に足を運んでいた。

 ダンジョン【スライム】がある池袋の路地。

 店の見た目は汚かったが中はそれなりに綺麗だ。


「探索者専門の店とかダンジョンのあるビル以外にもあるんだな」

「儲けは少ないけどな。それに武器の精製、販売の権利取得は大変で、一々契約の魔法紙を使わないといけないのがなんとも……」

「でもわざわざこうしてるってことはやりがいがあるってことだろ?」

「勿論! 俺の作った武器が活躍してくれてると思うとワクワクするし、それが誇りにもなる。仕事は給料だけで決まるもんじゃないよな」


 ブラック企業に勤めてた俺には刺さりすぎる言葉だ。

 20歳にもなっていない忠利だが、俺なんかよりも立派な人間じゃないか。

 敬語じゃなくてもいいって昨日メールで返信したのも正解だったようだ。 


「それじゃあ、約束通り買取をしてくれ」

「了解だ」


 俺はアイテム欄からレッドメタル鉱石とレッドメタリックスライムの魔石を取り出した。

 レッドメタル鉱石は真っ赤ではなく、ワインレッドのような色合いで光沢があり、いかにも高そうな雰囲気を醸し出し、レッドメタリックスライムの魔石は普通の石に1つの赤い突起が付いているだけで一見高価そうには見えない。


「レッドメタル鉱石に関しては高難易度ダンジョンの上層で発見が確認されている。相場は大きさにもよるが3000~5000円位。このレッドメタル鉱石の大きさなら4000円での買取が妥当だとは思うが、売却所での買取金額を参考にして……6000円でどうだ?」

「いいんですか?」

「この鉱石は汎用性が高い鉱石で、質の高い武器を生み出すことが出来る。この大きさなら将来倍以上の買取額になってもおかしくはない。それに、あんな売却所と同じ金額にしたくはない」

「それなら、6000円で買い取りをお願いします」

「毎度っ!」


 忠利は店のキャッシャーから現金を取り出すと、6000円をカルトンに乗せて渡してきた。

 そして、素早くレッドメタル鉱石をレジ奥に引っ込め、レッドメタリックスライムの魔石を手に取った。


「いやぁ、それにしても凄いなこれ。本物だよ」

「これがそんなにすごいんですか?」


 俺からしてみれば雑魚モンスターのドロップでしかないんだけど……。


「レッドメタリックスライムは防御が硬すぎてダメージが与えられないんだ。倒すには防御無視の会心の一撃を出すしかないんだが、その確率が恐ろしい程低くて……探索者歴2年近い俺ですらまだ会心の一撃を出せた事はないくらいさ」

「じゃああの時の赤い光は会心の一撃だったのか……」

「それは運がよかったな。たまたま出た会心の一撃がレッドメタリックスライムに命中したってことだろ? しかも新米探索者が一撃で倒せたってことは攻撃に極振りか? いやー何もかも運がいいな」

「いや、攻撃にジョブポイントは振ってない。5回連続会心が出たら倒せたんだ」

「えっ!?」

「俺の持ってるスキル≪透視≫が覚醒して、それから赤い点が見えるようになって……」

「≪透視≫のスキル? すまん、ちょっと『鑑定』させてもらうぞ」


 忠利の目が青色に光った。そしてその目で俺を凝視すると、じんわり噴き出る汗を手で拭った。


「≪透視≫は相手の急所を丸裸にするスキル、だそうだ。だからその赤い点が急所でそこを攻撃したから会心の一撃が出た……輝明、とんでもないスキルだぞ、これ」

「やっぱりそういうスキルだったか」


 俺の予想は当たっていた。

 という事はこれからはレッドメタリックスライム狩りが捗って仕方がないってことか。

 やばい。凄いワクワクしてきた。


「うーん。このスキルはしばらく隠しておいた方がいいかもしれないな」

「ん? なんでだ?」


 俺が胸を高鳴らせていると忠利は思いもよらない言葉を口にした。


「便利スキルを持ってる探索者を狙う企業、個人、パーティーっていうのが居るんだよ。実は俺が今使った『鑑定』も本当は簡単に見せられるものじゃないんだが、輝明が信用できる男だと思って使わせてもらったんだ」

「そうだったのか。それでスキルを狙われると何がいけないんだ? 別に殺されるわけじゃないだろ?」

「いや、殺される」

「殺、される?」


 まさかの返答に言葉が詰まってしまった。

 殺される。まさかちょっと便利なスキルを持っていたからってなにもそこまで……。

 それに殺したところで殺した側にはメリットがないじゃないか。


「モンスターが魔石をドロップするようにダンジョン内で人間が人間に殺された場合、低確率で魔石がドロップするらしい。俺も実際に目にしたことはないが、とにかく気を付けるに越したことはない」

「人間が魔石を……」

「ああ。前も言ったが魔石を取り込むと、スキルを取得できる可能性がある。これが奴らの狙いだ」

「そんな……じゃあ、忠利みたいな『鑑定』が出来る奴に見つかったら……」

「だからこの店ではそれを阻害する装備品も売っているんだ。結構値段はしてしまうが、レッドメタリックスライムの魔石の買取金額があれば余裕で買えるぞ」

「そ、そうだ。買取金額は、魔石の金額は?」

「レッドメタリックスライムの希少性、それに得られるかもしれないスキルにダメージを受けないものが含まれているとして……こんなところかな」


 忠利は、電卓を使ってその金額を見せてくれた。

 1、10、100、1000……85000円。


「因みに鑑定阻害の装備品が税込み35000円だから差し引き50000だな。どうする?」

「もちろん、よろしく頼む」

「毎度っ!」

 

お読みいただきありがとうございます。

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