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201話 【5】

「……。俺の言葉が分からないような低レベルな訳がないよな。ただ返事がないという事は……お前中々がめついな。分かった、レアな肉やシェルプリーストもお前にわけてやる。この条件でど――」


俺は【5】のシードンの言葉を遮ってジャマダハルで背後からその首を攻撃した。

急所狙いで一気に片を付けることも考えたが、こいつのオーラというか雰囲気がどうしても正面から攻撃する事を躊躇わせてしまった。


リスクは負わなくていい。

着実にこいつを殺す。


「返事はNOか。そんでまぁまぁ痛いな。これは受けてやるのは止めた方がいいか……。しかも」


ジャマダハルでの攻撃は確かに当たった。

しかし、その分厚い皮を貫くには至らず、これ以上刃が入っていかない。


それでもダメージはあるようでHPゲージは僅かに削れている。

しかもそのゲージは紫色へと変化した。


「はぁ。毒なんて小賢しい事をしてくるなんてな。……あんまり俺を怒らせないでくれるか?」


【5】のシードンは振り返ると俺にその顔を向けた。

さっきまではなかった鋭い殺気が針のように刺さる。


俺はカウンターが飛んでくる可能性を考えてすかさず距離を取り、毒ダメージを見る。

ある程度毒へ対応出来るのか、HPの減りは芳しくない。


相手の様子を見るに最悪時間経過で自然治癒されるか……。


ずっと逃げ回って勝てるならそれでいいと思ったが、攻撃は必須か。


「俺はあんまりそういう戦い方は好きじゃなくてな。まぁ武器もたまに使うが、頼るのは自分の拳」


【5】のシードンは左手を翳すように前へ出すと、右手で拳を作って腰の辺りに移動させた。


そして、俺の姿が見えないにも関わらず【5】のシードンは勢いよくその右拳を正面に打ち出した。



――ぶお



風を切る音、それに続くように衝撃波が広範囲に放たれる。

灰人が使っていた『鎌鼬』に似ているその衝撃波にはキラキラと光る水の粒も何故だか混じっていて一応可視化されているが、それでも避けるのは困難。


俺は咄嗟に岩影に隠れる事で何とかやり過ごせたが、衝撃波更にはそれに乗った水の礫は岩を砕き、地面に穴を開けた。


2回目が放たれたら次に隠れられるものはない。


ヒットアンドアウェイの長期戦を予想していたが、そんな事をさせてくれる相手ではなかった様だ。


「次が来る前、隠蓑があるうちに突っ込むしかない。『瞬脚』」


瞬脚を使って俺は再び【5】シードンに近づく。


「そこか?」

「なに!?」


すると【5】のシードンは俺のいる方向に走り出した。


隠蓑の効果はまだ活きているはず。

何で場所がばれた?


「おらっ!」


【5】のシードンはさっきと打って変わって構え無しで豪快に腕を振るった。

どうやってこの場所を特定されたのかは分からないが、まだ姿自体は追えていないらしい。


「なら……」


俺はその攻撃をかわして一歩踏み込むと、ジャマダハルを突き出した。


「――おいおいおいおい随分強気じゃないか」


だがそれと同時に【5】シードンは身体を反らして笑みを浮かべたのだった。

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