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191話 焚きつけられる

「がぁっ!」


俺が腹を擦っているとトゲくんがシードンに自分の尻尾を叩きつけた。


ベチンと大きな音を立ててはいるがシードンは折れた牙を両手で抑えたままで、トゲくんはまるで相手にされていない。


それに苛立ったのかトゲくんは自分の尻尾に氷の息を吐きかけ、氷の刺を纏わせるとそのままシードンの頭を叩いた。


しかし氷の刺はシードンの石頭に負けて弾ける。


レベルは上がってる筈なんだが、どんだけ硬いんだよ。


「ぶお」


それでも攻撃を続けるトゲくんにシードンは流石に鬱陶しく感じたのか、その尻尾を右手で受け止めた後握り掴んだ。


あまりに強く握られた為、強い痛みがトゲくんん襲ったのだろう。

低い呻き声が辺りには響き、トゲくんは身体をじたばたと捩った。


それでもメアは暴れるトゲくんの上に乗ってバフを掛け続ける。

あれがなかったらもしかしたらトゲくんの尻尾は握り潰されているのかも……。


「『瞬脚』」


俺は痛みを堪えて今までのやり取りで少し生まれたシードンとの距離を縮めて左手のジャマハダルで今度こそその鳩尾を狙う。


「ぶおっ!?」


俺が攻撃を仕掛けて来たことに気付くとシードンは驚くような顔を見せた。

牙を折った事で恐怖心をその心に刻む事は出来ていたらしい。


「があ!?」

「きゃっ!?」


俺を近づけさせまいとしたのか、シードンは掴んでいた尻尾ごとトゲくんを投げ飛ばしてきた。


「くっ――」


俺はジャマハダルを手放すと剛腕で強化されている腕を使ってトゲくんを受け止めた。


トゲくんの重みと投げつけられた勢いで、足が砂に埋まる。

脹ら脛や太腿は小刻みに震え、悲鳴を上げているようだ。


「ぶおっ!」

「速っ――」


いつの間にか俺の真横まで迫っていたシードンは大きく右腕を振り上げ俺と目を合わせた。


その視線は馬鹿にするようなそれではなく、俺を称えてくれているような真剣なもの。


モンスターというか一流スポーツマンに近い。


だからといってこれを受け入れる事はしたくないんだが……駄目か――


ぎゅっと目を瞑り痛みが襲うのを待つ。

だけれど痛みは一向に襲ってこない。


それを不思議に思い俺はそっと目を開ける。


「「いったぁぁぁぁあああああい!!!」」


するとそこには頭でシードンの拳を受け止めて大声で叫ぶアルジャンとルージュの姿があった。


自分の意思で人間の状態になって俺を守ってくれたのか。

2人が武器っていう認識がまだかなり残っていたが……もっと仲間、人間の仲間という風に扱ってやらないとな。


「トゲくん!! 2人に負けてられないわよ!! 思いっきり巻き付きなさい!!」

「がぁっ!」


アルジャンとルージュに焚き付けられたメアはトゲくんに命令をしては俺の腕から離れさせると、シードンに身体を巻き付けさせた。


シードンがそれを解こうとギシギシと音を立てるが、トゲくんは奥歯を噛み締めて粘る。

よく見れば巻き付けた身体の内側がシードンに傷つけられて、その下に血貯まりを作っている。

メアもバフを掛けるにあたって付加が掛かっているのか、口から血を垂らしている。


「アルジャンっ!ルージュっ!」

「「うん!」」


俺の合図で武器になった2人を俺は強く握ると、メアとトゲくんが必死に抑え込んでくれているシードンに刃を向けたのだった。

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