19話 3500
日間ローファンタジー12位!
総合日間184位!
ブックマーク・評価をつけてくださった方々ありがとうございます!
「な、なんですのこれは!? スライムがスライムの中に入って、しかも見た目まで変わって……」
「桜井さんはミニドラゴンスライムを逃がさないようにしててください! 俺はこっちを倒します」
俺はジャマハダルを装備してスルースライムだったそいつを凝視した。頭には『レッドメタルスルースライム』の表記。
メタリックは『金属的な』、メタルは『金属の』という意味であると考えれば、レッドメタリックスライムの上位版がスルースライムに寄生したのだろう。
しかもこいつは寄生対象の中で膨れ、完全に体を乗っ取ることが出来るようだ。
素手で触ったら自分に寄生する可能性もある。
もし俺が≪透視≫を持っていなかったらと、考えただけで背筋がぞっとする。
「きゅぅ」
レッドメタルスルースライムは霧に紛れ込むようにして俺と距離をとった。
おそらくだが、寄生したレッドメタルスライムはまだスルースライムのその特性を完全に理解していないのだろう。
レッドメタルスルースライムは自分が安全だと思い込んだようで、ゆっくりゆっくりと今度は俺の真横辺りに移動し、何やら力を込めだした。
だが、認識阻害の効果は一度解けてしまうと同じ相手に通用しない。
そんな余裕ぶった行動は丸見えで、滑稽としか思えない。
「……どこだ?」
俺はわざとその姿に気付いていないフリをすると攻撃を誘った。
くさい演技ではあったが、やはり演技の上手い下手はモンスター相手であれば関係ない。
「きゅうっ!」
「残念だが全部わかっていた」
するとレッドメタルスルースライムは案の定、体当たりを仕掛けてきた。
俺がその姿にほくそ笑む。
レッドメタルスルースライムは全身に力を込めて飛び掛かりすぎた為か、それとも俺が気付いている事に気付いていないのか、俺から体を逸らすことなく体当たりを強行。
俺はそれに合わせて予め右手に装備していたジャマハダルを突き出した。
「きゅうっ!?」
「本来よりもHPが高いのか」
俺は完全にレッドメタルスルースライムの急所を捉え、会心の一撃を発動させた。
だが、元来のスルースライムの様に一撃では倒しきれず、続けて2発、3発打ち込むことでようやくレッドメタルスルースライムを倒す事に成功した。
そして、今までは寄生先を倒すと中から黒い点の正体であるレッドメタリックスライム、今回でいえばレッドメタルスライムが姿を現すという図式だったが完全に寄生先と一体化していたためか、そんなことはなく、通常の一匹のモンスターとして倒すことが出来た。
『+3500』
「えっ!?」
レッドメタルスルースライムが倒れ、次第に姿を消していくと、そこにはあり得ない経験値の取得量が表示されていた。
3500っていう事は従来のレッドメタリックスライムの10倍に当たる。
これは……経験値が旨すぎる。
『レベルが38に上がりました』
「さっき上がったばかりなのに」
俺の頭にレベルアップのアナウンスが流れた。
予想はしてたが、ここまで来ると必要な経験値量が多すぎてこれでも上がったレベルは1。
もっとレベルの高い探索者達は一体どれだけのモンスターを倒して……いや、難易度の高いダンジョンはこれと同等又はそれ以上の経験値を取得出来るモンスターが沸いているのだろう。
「やりましたわね! あっ! ちょっ! 引っ張らないでくださいまし!」
俺が思考していると桜井さんの陽気な声が40階層に響いた。
そして、飼い犬に引っ張られる飼い主の如く、ミニドラゴンスライムに悪戦苦闘している。
「そういえば、霧が……」
いつの間にか霧が大分薄くなっていた。
これであれば遠い先まで問題なく見通せる。
「次はこの子を倒しましょう! 私も一撃加えてますし、もう思いっきり倒してくださいまし!」
辺りを見回していると、桜井さんがミニドラゴンスライムを倒す提案をしてきた。
このボスも散々俺達を苦しめてきて、かなり憎らしい奴だったし、すぐさま倒すのが普通だとは思う。
「よーし、よしよし、これを飲め」
「ごぁあ!?」
「な、なにをしてますの!? なんでこの子にポーションを!?」
俺はアイテム欄からポーションを取り出すと、瓶の口をミニドラゴンスライムの口に突っ込み、無理やりポーションを飲ませたのだった。
「少し酷な事をするが、お前も俺達を殺そうとしたんだ。これくらい覚悟は出来てるよな?」
お読みいただきありがとうございます。
面白いと思っていただけましたらブックマーク・評価を何卒宜しくお願い致します。