183話 下へ
「おーよしよし」
「「よしよし」」
「がぁ」
シーサーペントを受け取った後俺達は集落の1つしたの階へ移動していた。
ここにはそこまで強いモンスターがいないからなのか、メアに緊張した様子はない。
それにつられるようにアルジャンやルージュ、それにシーサーペントもリラックス状態で、雰囲気は遠足のそれに近い。
シードンのいる階層は40層下って聞いてるし、今は身構えなくてもいいか。
シーサーペントの状態も確認したいし。
「それにしてもレベルアップにどれくらいかかるのかな」
シーサーペントのレベルはメチルダいわく200。
進化まであと50程らしい。
モンスターは人間よりもレベルアップに要する経験値が少ない為、レベルが異様に高いのだとか。
ただその分ステータスの上がり幅は低く、進化によってモンスターとしての『格』を上げ、ステータスを大幅に上昇させる事が最重要なのだとか。
とは言え残り50レベルを上げきるのは簡単な事ではないはず。
それなりの日数は覚悟しないと……。
「想像よりレベルが高かったからそんなにかからないと思うわ。それより問題は『シードン』よ。あいつらが『トゲくん』の餌を食い尽くしてなきゃ良いんだけど……」
「『トゲくん』?」
「ああ。それはこの子の名前。アルジャンとルージュがそう呼んでたからまぁいいっかって」
リヴァイアサンを目指してるシーサーペントにしちゃ可愛らし過ぎる名前だなぁ。
それだけお互いの距離が縮まってるって事なんだろうけど。
「アルジャン、ルージュ。それでもここは結構深い層で危険だから武器の状態に――」
「「わわっ!」」
「これって……」
これからの戦闘に備えて2人を武器状態にしておこうと声を掛けようとした。
すると2人とそれにシーサーペントこと『トゲくん』の足元が高く盛り上がった。
盛り上がった砂がさらさらと落ち、その原因であるモンスターの顔が浮かぶ。
『グランドタートル』
大きな甲羅と表情の読み取れない不気味な顔付きを持つそいつはのっそりと動き始めアルジャン達をどこかへ連れていこうとする。
「「うごけなーいっ!」」
足元に何か細工があるのか、アルジャンとルージュはその場から動き出せないようだ。
とにかく連れ去られるのは面倒過ぎる。
ここは『即死の影』で一気に――
「待って」
俺が戦闘態勢に入るとメアがそれを止めに入った。
「でもこのままじゃ」
「大丈夫。こんなやつ私の『トゲくん』なら簡単に倒せるわ。『トゲくん』っ! 思いっきりそいつを殺しなさい! それがあなたのご飯よ!」
メアがどや顔で『トゲくん』に指示を出すと、その場は殺気に包まれ、和やかな雰囲気は跡形もなく消え去ってしまうのだった。