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177話 与える

「氷冷留竜玉か……また面倒くさいアイテムを求めるているな」

「もしかして今持っているとかは……」

「ない。以前はたまたまダンジョンで手に入れたものをオブジェとして飾っていたが、それも人間達が暴れまわった時に割れてしまったからな」

「そうですか……」

「それよりもお前は食べんのか?旨いぞ」


セレネ様と呼ばれる女性は旨そうに血の滴る生肉を口にする。

所作が綺麗だからか旨そうに見えてしまうがやっぱり生肉は無理だ。


「すみません。生はちょっと……」

「そうか。そう言えば人間は偏食が酷かったな」


こっちからすればあなた達の方が……とは言いづらいな。


「氷冷留竜玉はリヴァイアサンが生成するアイテム。ですから、輝明にレベルの高いシーサーペントを与えて育成させたいと思っています。そうして氷冷留竜玉を手に入れれば早急に記憶を消し、ダンジョンを出ていくと本人も言っています」

「なるほどな。しかしシーサーペントは見張り役に認められた者等一部の者にしか与えていない特別なモンスターだ。それを人間に渡してしまえば、他の者は不信、不快に思ってしま――」


セレネ様は言いかけて言葉を詰まらせた。


「それはそうかもですが……。そのセレネ様?」


セレネ様不自然に動きを止め、メアはその顔を不思議そうに覗き込む。


「輝明か……。妾とした事が、先の話ばかりに気をとられていた。遅れたが妾はこの集落の長セレネ。改めてお前の名前を教えてくれ」

「……白石輝明です」

「そうか、ならば妾も輝明と呼ばせて貰おう」


ここまで話を進めているのだからもう自己紹介なんてどうでもいいと思っていたが、上に立つ人はその辺りを無下にしないものなんだな。


「その、続きをいいですか?」

「すまんすまん。そうだな、率直に言うと輝明にシーサーペントを与えるのは難しい。しかもレベルの高い個体であれば尚更だ。どうしてもそれを求めるのであれば相応の理由で民衆を納得させねば」

「……人間に、輝明に直接シーサーペントを与えるのは難しい。でも、それが私だったらどうでしょう?」

「貴様にか……。だが既にシーサーペントを与えているものに2匹目というのは――」

「実を言うとシーサーペントは輝明を攻撃した際に失ってしまい……元々もう一度シーサーペントの受け取りをお許し頂こうと思っていたところでして」

「まぁ果敢に人間に挑んだメロウにより強いシーサーペントを与えるのは不思議ではないか……」


セレネ様は手を顎に当て少し考えるような素振りを見せる。

この溜めの時間は心臓に悪いな。


「分かった。輝明の監視役を勤めてもらうことを条件に新しいシーサーペントをメアに与えよう。以前と同じくレベル上げは好きにして良い。ただし仲間同士の争いに使用する事は禁ずる。また、仕方がない戦闘での消失以外、例えば餓死や逃がすなどがあった場合処罰を与えるものとする」

「心得ています」

「よし。それでは新しいシーサーペントを――」


「「わああああああああああ!!」」

「こ、こらセレネ様の部屋に勝手に入っては……」


新しいシーサーペントを無事与えられる事になり、安堵していると、部屋の扉が勢いよく開き、涙でぐしゃぐしゃの顔をしたアルジャンとルージュが押し入ってきたのだった。

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