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156話 成長

 20階層ボスフロア。


 灰人と桜井さんはモンスターの攻撃を巧みに躱し続けるが、なかなか決定打を与えられないでいた。


「ぐぁぁあああああ!!!」


 じれったく二人の戦闘を見守っているとモンスターがカパッと口を開いた。


 燃え盛る炎が口から勢いよく噴き出され、2人の進路は完全に塞がれる。


 それを灰人は鎌鼬で切り裂き、桜井さんが突っ込む。


 絶好の攻撃タイミング。


 しかし……。


「や、めて……」

「また……」


 モンスターが発するのは人間の言葉。


 それだけではない。モンスターの顔までも人間のそれに変わるのだ。


 モンスターの名前は『イミテーションスネイク』。


 通常時は赤色の大きな蛇でしかないが、攻撃を受ける瞬間になると人間の顔、上半身を模す。


「桜井さん!! 躊躇しないで!!」

「分かってますわ!!」


 灰人から激が飛ぶと桜井さんは握っていたメイスでイミテーションスネイクの腹部を殴打した。


 痛みで歪む顔。

 イミテーションスネークの見せる反応は、いちいちに人間である俺達に罪悪感を与えてくれる。


 桜井さんは必死に戦ってはいるものの、無意識に全力で殴る事は出来ていないようだ。


「タフですわね。でもこれで――」

「ぐ、おお……。た、助けて、桜井さん」


 イミテーションスネイクは俺の顔を模倣しただけでなく、桜井さんの名前を発した。

 こんなに姑息なモンスターは初めてだ。


「あなた……」


 桜井さんの手が止まった。


 するとイミテーションスネークはその隙を突いて桜井さんの体に巻き付き、一気に締め付け始める。


 みしみしという鈍い音が締め上げる強さを物語っているが、桜井さんは一切声を上げない。


「ちょっとまず――」

「大丈夫だよ兄さん」


 俺は桜井さんを助けようと一歩踏み出す。


 しかし灰人はそんな俺を止めると口角を上げた。


「あなた如きが……。お遊びが過ぎるんじゃありませんこと?」


 桜井さんが何か呟くと、力強く締め付けているはずのイミテーションスネークの体が押し返され始めた。

 

 そして隙間が生まれると桜井さんはふわっと飛び上がりイミテーションスネークの締め付けから脱出。

 更に桜井さんはイミテーションスネークの首根っこを左手で掴むと地面へと叩きつけた。


「ぐぁぁあああ!!!」


 イミテーションスネークは首根っこを掴魔れたままで動揺してしまったのか、模していた顔は酷く崩れていた。

 それでも抵抗する意思は失われておらず、炎を吐こうと口をカパッと開いた。


 まずい、これは避けられない。


「ぐぁぁあああ――」

「ふぅぅぅ」


 炎が吐かれるのと同じタイミングで桜井さんも息を吐いた。


 すると、炎はその息によってかき消えてしまったのだ。


「『天使の息吹』。まだスキルレベルが低くて範囲は狭いし効果は薄いのですが、吐ききる前の弱々しい火炎位ならかき消せますわよ。本来ヒーラーの私はこういったサポートスキルが得意ですの」


 桜井さんはにやりと笑ってみせると、イミテーションスネークを空高く放り投げた。


 さっきの締め付けからの脱出といい、ヒーラーなのに怪力過ぎる。


「灰人っ!!」

「『鎌鼬』……5連!!」


 桜井さんの合図で灰人は鎌鼬をディレイ無しで5回も放って見せた。


「ぐ、ぎゃあ、あっ!!」


 全弾命中イミテーションスネークはHPをあっという間に0にするとボトリと地面に落ちた。


 この連携といい、スキルやステータスの向上……相当レベルが上がっているんだろうな。


「消えてしまう前に早く食べさせませんと!」

「あっ! はい」


 そうだ。

 今までのモンスターとタイプが違うし、アルジャンとルージュに食べさせないと。


 それにしても……桜井さんと灰人のどや顔すごいな。

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