148話 豪邸
夜勤帰り地震で電車遅延……はぁ疲れた
「こっちこっち!」
「はーやーいー」
翌日俺達は全員で家を出ると、アルジャンにコカトリスのいるダンジョンを案内してもらっていた。
途中まではタクシーで移動していたが、目的地までもうそんなに遠くないらしいという事とルージュが若干乗り物酔いなっていたので歩いて行くことに。
楽しそうなアルジャンと文句をいいながらも酔いが治った様子のルージュ。
そして……。
「あ、あんまり速すぎるとちょっと頭が……」
「だらしないですわね。灰人はそんなに飲んでなかったでしょ。でもまだ眠いと言えばそうですけど」
アルコールにやられて二日酔い気味の灰人と遅くまで飲み過ぎて睡眠不足の桜井さん。
俺はアルジャンとルージュを寝かしつけるタイミングで飲み会の場から退避したお陰で被害無しだけど……それでも昨日の疲れがまだ残ってる感じだ。
元気な子供達とグロッキーな自分達を見比べるといやに歳を感じてしまう。
「灰人も桜井さんももうちょっと後から魔法紙でダンジョンに行っても良かったんじゃ?入り口は俺達だけでも探せるし」
「それはだって、私ずっと気になっていたんですもの。いつも潜ってるダンジョンが何処なのか。もうこのもやもやを早くとりたくてとりたくて……あなたもそうでしょ?灰人」
「例えるなら歯になんか引っ掛かったままって感じなんだよ。それに多分俺達の潜っているダンジョンは探索者協会保有のものじゃない。という事は誰かが発生したダンジョンを探索者協会に知らせず隠しているって事で、しかもそのダンジョンで俺達は勝手に狩りをして……。何か問題になった時の事を考えてダンジョンを隠している人とは色々交渉したいからね」
ダンジョンを隠しその存在を知っていた人物、恐らく一色虹一だろう。
つまり灰人は問題が起きた場合の責任の所在をどうにか自分の師匠に押し付ける為交渉がしたいらしい。
「そっか。それにしてもまだ他の場所にダンジョンがあったなんてな」
ダンジョンは見つけ次第探索者協会に報告。これは3年前に国から国民へ出されたお達しだ。
私有地に出来たダンジョンは莫大な額で引き取られる為嫌でもダンジョンを見つけた、というよりもダンジョンの出来た場所の土地を持っている人は連絡をよこす。
報告をわざわざ法として定めていないのはこの為だ。
ただ、とあるダンジョンだけその交渉がゴタついたという噂も聞いたことがある。
今確認されているダンジョンは全て探索者協会保有になっているし円満に交渉は終わったのだろうとは思うけど……その時の情報があまりに世に出ていなさ過ぎるのが嫌な想像をさせる。
「着いたっ!!ここっ!!」
「でかーい!!」
アルジャンが立ち止まったのは、立派な門構えの一軒家。パッと見たかぎり奥行きも凄そうだ。
都内でこの広さの家ってどんだけ金持ちなのさ。
「これ中入れてくれるのかな?と、とりあえずインターホンを……え?」
「ん?ああ!あなた達はっ!」
俺がインターホンを探していると門の奥に人影が映った。
その人影は次第に鮮明になり、親しげに俺達に話し掛けてきたのだった。