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133話 撤退

「おーい!大丈夫か?」

「白石君! ミドルヒール」

「兄さん!」


戦闘が終わり、灰人達がこっちに駆け寄ってきた。


桜井さんは俺の側に来るなり回復スキルを発動させてくれたが……先に師匠を治してあげなくていいのかな?


「おうお前ら! ここはもうすぐ崩壊するぞ!」


一色虹一の言葉に灰人達は一瞬驚くが、それを疑う事はなく、直ぐに逃げ出す準備をし出した。

信頼関係なのか、既に似たような経験があるのか……。


「おーもーい。何でキュートな私がこんなことを……」


倒れていた探索隊を次々に肩に乗っけられる剣がとうとう文句を言い出した。


3人まで余裕な表情だったところを見るとこの中では一番力がありそう。

流石S級1位の愛用武器……だからもう1人くらい担いでくれるとありがたいんだけど。


「全員移動準備は出来ましたわね? 師匠、崩壊まであとどのくらいですの?」

「ダイヤモンドスライムを倒して結構経ってるから――」


なんとか倒れている人達全員を担ぎ上げ、さて逃げ出そうというタイミングで、フロア全体が軽く揺れ始め、下に向かう階段の奥で何やら崩れる音が。


 出口まで距離があるが本当に間に合うのか?


「まぁ小走りで行けばギリ間に合うって! それに時間が経てば全部のモンスターは消える! それまでの辛抱辛抱!」


 そう言うと一色虹一は小走りとは思えない早さで階段を駆け上がり始めた。


 魔法紙が使えればこんなところから出るのは直ぐなのに……。


 いるんだよなぁ。

 マジックキャンセラースライムがあちこちに……。


 俺はフロアの角や天井などを見回し、溜め息を吐くと一色虹一の後を追うのだった。



 がらがらがらがらがらがらがらがら!


「はぁはぁはぁはぁ、しんど、い」

「おいおいおい! そのままじゃダンジョンに飲まれるぞ灰人!」

「何で、何で、マジックキャンセラースライムは消えませんのお!?」


 倒れている全員を担ぎ上げ、しばらく地上を目指していると遂に崩壊するダンジョンの最前線が俺達の見える範囲まで訪れていた。


「うーん。マジックキャンセラースライムは自然発生のモンスターじゃないからダンジョンが生まれ変わることになっても消えないのかも……。おーい!マジックキャンセラースライム担当! 様子は?」

「はぁ、はぁ、ん、マジックキャンセラースライム担当って……。まだまだいますよ!」


 ここまでの道中で俺がマジックキャンセラースライムの位置を把握出来る事を知って、一色虹一は俺の事をマジックキャンセラースライム担当と名付けてしまった。


 別に嫌ではないけど……。


「もうむ、り……」


 寡黙に走っていた忠利が遂に脚を止めた。


 探索者としてダンジョンに潜る回数が多くはないのは分かるが……。

 忠利の奴、完全に運動不足だな。


「カバー頼めるか?」

「ええ!? なんで私なの?」


 一色虹一は剣にカバーを頼む。

 案の定嫌そうな顔はするもののこの状況で今1番元気そうなのは彼女で間違いない。


「ほら、これを試す良い機会だしさ!」

「まぁそうかもしれないけど……。はぁ、しょうがないわね」


 一色虹一はアイテム欄から進化の薬を取り出すと、栓を抜いて走りながら剣の口の中に突っ込むのだった。

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