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12話 ボスポイズンスライム

日間ローファンタジー61位!

ブックマーク・評価をつけてくださった方々ありがとうございます!

「きゅふっ!?」

「このまま一気に片付ける!」


 10階層と同じく楽勝で20階層を突破することが出来た俺達は勢いそのままに30階層に挑んでいた。

 

 30階層のボスはボスポイズンスライム。

 毒々しい紫色の体とこんもりと突き出したこぶのようなものが印象的で、見た目と名前通り毒を使って攻撃をしてくる。

 ちなみに20階層のボスグリーンスライムは召喚術無しな分HP高めのボススライム色違いといったところか。


 俺はそんなボスポイズンスライムに対して速攻をかけ連続で斬りかかった。

 ボスポイズンスライムのHPの減りが以前に比べてハイペースだったこともあって、このまま毒を使われる前に倒しきろうとしていたのだが……。


「きゅふぁぁああぁぁああ」

「しまった!」

「白石君!?」


 ボスポイズンスライムは俺が連続で攻撃しているにも関わらず、こぶの部分から毒を吐き出したのだ。 



 ――こいつ、口以外からも毒を撒けるのかよ。

 


 俺は慌てて自分のステータスを確認すると『状態異常:毒(割合)』の表記が追加されていた。

 減ったHPを確認した限りだと2ずつダメージを負うようだ。


「ヤバい、毒が……くっ!」


 ずきずきと胸が痛む。

 割合ダメージだからこれだけで死ぬという事はないのかもしれないが、この痛みはまずい。動きが鈍る。


「大丈夫ですの? 私もそちらに――」

「桜井さん、近づいちゃ駄目だ!!」


 後方で戦闘を傍観していた桜井さんがこっちに来ようとするのを俺は止めた。

 幸い、毒を身体から噴出させた反動でポイズンスライムは動けない様だが、辺りにはまだ紫色の毒霧が漂っている。

 近づけば桜井さんまで毒に侵されるだろう。


「舐めないでくださいませんか? 私はあなたより優秀で……立派に戦えますのよっ!!」


 桜井さんは俺の忠告を無視して、ボスポイズンスライムに鞭で攻撃を仕掛けた。

 鞭はボスポイズンスライムの身体を捉えるが、HPが大きく減る事はない。


 聞いたところ桜井さんはまだ職業の解放が出来ていない。

 道中レベルアップはしていたようだが、30階層のこのモンスターを相手するには荷が重すぎる。


「きゅふぁああぁあぁ!」

「な、なんですの? そんな鳴き声で私が怯えるとでも?」


 ボスポイズンスライムは体をぷるりと震わせ、鳴き声を発した。

 桜井さんは強がって見せているが、HPの表示が紫色。俺と同じで体がきついはずだ。


「俺よりレベルが低いのに……。俺、情けなさ過ぎだろ。そんなんじゃ、そんなんじゃ」



「きゅふぁあああ!!」

「いやっ。脚が動かな、い」



 再びボスポイズンスライムは鳴き声を上げると、体をグイっと伸ばし、体当たりする構えをとった。

 桜井さんはそれを回避しようとするが、どうやら体がいう事を聞かないらしい。


「きゅふぁぁああぁああ!!」

「きゃああっ!!」



 ザシュっ! ドンっ!



「きゅふ……」

「は、ははは、体当たりするときに頭を突き出すのは止めた方がいい、ぞ、ぐっ……」



 俺は痛みを我慢しながら、両手に持っていたジャマダハルをボスポイズンスライム側に突き出した状態で、体当たりの軌道上、桜井さんの正面に駆けた。


 そうして、ジャマハダルは見事ボスポイズンスライムの急所を貫き残りのHPを削り切った。


「痛ってぇ……」


 しかし、巨体なポイズンスライムの体当たりの衝撃を殺す事は出来ず、俺はかなり遠くまで吹っ飛ばされてしまった。

 HPは残り13。大分レベルアップしたがまだまだ防御面が不安な事が露呈してしまったかもしれない。


「え、えっと……これをタップして……。えっと、新しく手に入れたスキルは……よかった! ありましたわ!」


 桜井さんはレベルアップしたのか何かスキルを手に入れたようだ。

 それより、このHPは流石にまずい。勿体ないがポーションを使う――


「『キュア』」


 俺がアイテム欄からポーションを取り出そうとすると、桜井さんの身体が薄緑色の光で包まれ、HPゲージが正常に戻った。


「白石君にも『キュア』ですわ」


 桜井さんは急いで俺に駆け寄ると俺の手に触れながら、スキルを発動した。

 身体から痛みがすうっと消えていく。


 これは状態異常回復のスキルか? という事は桜井さんは……。


「間に合いましたわね。まったく無茶しないで下さいまし」

「桜井さん、職業は?」

「私は僧侶見習いにしましたの。どうかしら、私は足手まといではないでしょう?」

「はい。でもよかったんですか? 探索者で食べていくなら攻撃職の方が――」

「何を言ってますの? 今ここで私と、それに仲間が辛い思いをしなくなるのなら最善の手ですわよ」


 桜井さんは俺の言葉に首を傾けた後、俺の知っている我儘お嬢様の桜井さんから想像もつかない言葉が漏れ出た。


「桜井さんって、あの会社じゃなければいい上司だったのかもしれませんね」

「それどういうことですの! 答えてくださいまし! 答えてくださいまし! 私の言う事は聞かないと駄目と教えた筈ですわよ」

「ははは」


 桜井さんに抱えてたトラウマがどこへやらだ。

 まぁ、それでも魔石の件は断るが。やっぱり、自由自適に探索者生活したい。



 ただ、今回の件のお礼で1個くらいプレゼントするなら良いかもしれないな。



お読みいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたらブックマーク・評価を何卒宜しくお願い致します。

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