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ネコの花嫁  作者: 啓輔
5/19

4匹目

書き直し始めました。※2010.06/26

細かな細工のされた鏡台の大きさは人間用のものだった。

ヘレンに誘導され、鏡台の椅子に座った栖衣は鏡の中を静かに見つめた。


「あ」


栖衣はまじまじと鏡を覗き込んだ。なぜならその鏡に映るのは瞳が金に染まった自分の姿だったからだ。


「・・・本当だ」


そのまま頬に手を当て、角度を変えながら色の変わった自分の眼を見ていた栖衣の後ろを何かがスーッと通った。


「え」


鏡に映った栖衣の後ろを通ったのはブラウンの髪を後ろでゆるく束ねたメイド姿の女性だった。



ばっ!!



急に後ろを振り向いた栖衣にヘレンはびくりとちいさな体を揺らした。


「栖衣様?」

「ヘレンさん、あ、あの変なことを聞くんですが・・・今、人間の女性が私の後ろを通りませんでしたか?」


周りを見渡す栖衣に最初は驚いた様子を見せていたヘレンだが、「あぁ・・・」と何かに納得したようにエプロンのポケットから手鏡を取り出した。


「栖衣様、私の後ろからこの手鏡を覗いてみてください」


ヘレンはそう言って自分自身を鏡に映した。


「あ・・・!」


ヘレンの鏡を覗き込んだ栖衣は声を上げた。

そこには先ほど栖衣の後ろを歩いていたブラウンの髪をゆるく束ねた妙齢の女性が映っていた。


ヘレンは手鏡を持っていないほうの手で鏡に向かって手を振る。すると鏡の中の女性が栖衣に笑顔で手を振ってきた。


「鏡に映っているのは人間の姿のときの私です。栖衣様にとっては珍しいかもしれませんが私たちはトッカの民は日が沈むと人間の姿になるんですよ」


そう言ったヘレンに栖衣はここに来てからの疑問がはれた気がした。


「へぇ・・・確かにネコの姿だったらあの人間用の扉は必要ないですもんね」

「普段は下の方にある小さな扉しか使わないんですけどね」


そう言ってヘレンは笑った。




ぐ〜・・・




「あ・・・」


リラックスしたのか、栖衣のお腹が容赦なく音をたてた。

恥ずかしそうな栖衣にヘレンは「お昼をお持ちいたしますね」と微笑むと部屋を出て行った。


ヘレンのいなくなった部屋で、栖衣は居心地が悪くなったのか鏡台の前から立ち上がると肖像画の方へと歩いていった。

栖衣がたまたま見上げた先代の女性が日本人に見えたのも立ち上がった理由だ。


「・・・こども、か。なんでこの人たちは受け入れられたんだろう?」


栖衣は触れていいのか迷った後、すっ・・・と先代の女性が描かれた肖像画に触れた。

この国にきてから子供を産んでくれと頼まれたが栖衣だが、積極的に男性と付き合いたいという性格ではなかった為、彼氏というものができたことがなかった。


(・・・それなのにいきなり子供って)


・・・それにしても、さっきのヘレンの話だと最初に会ったアランも、恥ずかしがって(なのだろうか?)顔を見せてくれなかったクルトも夜になると人間の姿になる・・・ということなのだろうか?


(・・・でも好きでもない人の子供を産むほど私だって流石にお人よしじゃ・・・ないし)


中学校の保健体育で・・・子供を産むのは鼻からスイカを入れる(出す?)くらい痛い、と聞いていた栖衣は正直、大人になっても子供は産んでも一人かな・・・と考えていた。


(・・・でも、このままじゃやっぱり「役立たず!」って罵られてここから追い出されちゃったりしたりするかも・・・、どうにかして職を手に入れたい・・・けど、人間の姿って目立つのかな?夜だけ働くとか?いや、それって夜のお仕事ってコト?そもそもここでそういう仕事ってあるの?・・・というか私を呼び出したってことは私はこの国の女性より魔力?があるってこと・・・だよね?)


うぅ〜ん・・・としゃがみ込んでうなりはじめた栖衣の肩にぽんとやわらかい肉球が置かれた。


「!!」

「栖衣様?」

「え、あ・・・ヘレンさん」

「どうされたんですか?頭を抱えて・・・どこかご調子が?」

「え!?あ、大丈夫です!元気ですから・・・!」


ヘレンの言葉に立ち上がった栖衣は、人間用の扉を押し開けてキャスター付きの台を押して入ってきた三匹のメイドネコを見つめた。


「それでは食事にいたしましょうか」


ヘレンの言葉に栖衣は慌てて姿勢を正した。

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