表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネコの花嫁  作者: 啓輔
2/19

1匹目

書き直し始めました。※2010.06/30

目の前を歩くのは白い軍服を着たちいさな白い猫。二足歩行で歩くそれには確かに人形とは違う鼓動があり、栖衣はそれが人形では無く生きたものとしてやっと認識し始めていた。

部屋を出て外の世界を見てまわる栖衣は下方に見える白い尻尾が左右に動くのを目で追いながらこの大きなお城を案内されていた。


「ここが、姫?」

「え、あ。すいません」


前を歩いていたアランがこちらを向いた。ぼんやりとする栖衣になにか考えることがあったらしい。左右に揺らしていた尾を止めると無いはずの眉を下げて栖衣に向かって話しかけた。


「いえ、姫も疲れてるのに連れまわしているのは俺ですから」


そう言って笑ったアランに栖衣は話しかけた。


「あの、姫って恥ずかしいんでやめていただけたら、その?うれしいんですけど」

「そうですか?じゃあ名前を聞いても?」

「佐藤 栖衣(すい)です。栖衣が名前なんですけど、あの。さっきは叫んですいません、もう一度お名前聞いても良いですか」

「もちろん。俺の名前はアラン・バーゴイン。皆はアランと呼びます、どうぞスイ様もアランと呼んでください」

「アラン、さん?」

「はい」


しゃがみこんだ栖衣はにっこり微笑むアランの顔を見て顔を引き攣らせた。


「(・・・ネコが笑ってる)」

「どうしました?」

「いえ。えっと、私が召喚されたのはこの国で子供を産むためなんですよね?」

「はい、そのためにスイ様を召喚させていただきました」

「でも、さっき女の子、いましたよね?」


栖衣が言ったのは寝台から落ちた栖衣に声をかけてくれたメイド姿のネコのことだった。とある喫茶店で見るようなパンツが見えそうな短いスカートや機能性を無視した格好ではなく、紺色のロングスカートに白色の清潔感があふれるエプロンをかけた正統派のメイド姿だった。


「さっきのメイドのひと、じゃなくて猫は・・・えっと女性、ですよね?」


アランに部屋から出てもらった後、栖衣は小柄なメイド姿の三毛猫にシンプルな長いワンピースを渡されて、着替えさせられていた。


「はい、ヘレンは女性です」

「・・・」


はっきりと答えられて栖衣はもっと戸惑ってしまった。


(じゃあ何のために私は呼ばれたんだろう・・・。女の人(猫)いるんじゃない、というか猫と人間の間に子どもなんてできないよね?私が間違ってるの?それとも結婚したら私も猫になっちゃうの?)


顔を引き攣らせた栖衣はできるだけそれを相手に悟らせないようにポーカーフェイスをつくったつもりで口を開いた。


「へ、へぇ・・・じゃあ私は要らないんじゃ・・・」


しかし、栖衣の口元は引き攣っていた。アランから見てもそれは顕著に分かるにもかかわらずアランは嫌な顔一つせずに栖衣に向かって言葉を返した。


「それは違います」


アランは栖衣の言葉をはっきりきっぱりと否定をした。


「詳しいことは俺よりクルト殿に聞いたほうが分かりやすいと思うんですが」

「クルト?」


そう言うとアランは前を向き、歩き出していき、栖衣は無言でそのちいさな背中について行った。アランは少し歩くと大きなドアの前に立った。豪華なその扉は栖衣の身長を大きく超えたもので、2メートル近い高さの扉は栖衣の膝程度しかないアランにとっては無駄な大きさだろう。

(何故こんな大きな扉があるんだろう?)と栖衣は疑問に思いながら目の前のアランの行動を静かに見ていた。


こんこん


アランは手を丸めてドアをノックした。


「どうぞ〜」


間延びした声に栖衣が脱力するとアランは扉の下についていた小さなもう一つのドアを開けて中へと入っていった。


(・・・!!)


さっさと入っていってしまったアランを横目に見つつ、栖衣は中に入って良いのかドアの前で迷っていた。


「スイ様、人間用のドアを使って入ってきてください」


中から聞こえたアランの声に栖衣は恐る恐る腰の高さにあるドアノブをまわして部屋の扉を開けた。


「お、お邪魔します」


中に居たのはアランと灰色の毛と瞳の猫、こちらも二本足で立ち引き摺る長さの濃色のローブを着ていた。


「は、じめまして佐藤栖衣。じゃなくて、スイ・サトウです」


アランの名前を思い出してこちらは西洋風の名前なんだ、と栖衣は言いなおした。


「・・・」

「あ、の?」

「・・・あ、あああああ!!」


手に持っていた書類をばっさりと落としたその猫はあっという間にアランの背に隠れた。アランより少し小柄な灰色の猫はぶかぶかに大きいローブを軽く引き摺りながらその場にしゃがみ込む。


「おい、クルト」

「な、ななななんで異世界の姫様がここにきてるんだよぉ!!」

「俺よりクルトの方が頭が良いから説明が上手いかなぁと思って?」

「僕はいいから!アランが説明しろよぉ――!!」

「クルトは姫の婿の候補者なんだからさぁ」

「お前もそうだろぉぉ―――!!!」


怯えたような声でアランに泣き付くネコを見て栖衣は目をぱちくりとさせた。というか、今の爆弾発言の方をしっかりじっくりと私に説明して欲しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ