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「三人か……」
報告会に参加できたのは結局、俺と紗奈と梨花だけ。
「そうね、二人は堂々と話し合いをできる状況じゃないから、いつも通り情報だけ送ってもらったわ」
堂々話ができないということは潜入任務が山場を迎えつつあるのだろう。
「いつも通り私から説明するよ!」
梨花が勢いよく立ち上がり、地面から出てきたホワイトボードの前に立つ。
「私からの情報はWINDの新たな施設が完成したということだ。いきなり建設が始まって、私も参加したけど、何に使うのかはよくわからなかった。でも、すーごく大きかったよ!」
ホワイトボードを出したくせに、何も書かずに終わった。
「それに関しては私から後で説明するわ」
どうやら、紗奈は梨花の報告に関する詳細を知っているようだ。
「次は俺だな」
俺も立ち上がり、ホワイトボードの前に移動するが、ホワイトボードは使わないので戻しておく。
「俺はいつも通り最前線防衛ラインの維持の援護をした後、関東西部最前線防衛基地の状況及び周辺調査を行った。一般市民は高さ15メートル、最上部の幅12メートルほどの壁を建造中で、内部には層があり、一番深い層というか、壁の下では物資の移動用の道路が設けられている。その道路はほかの最前線基地までつながる予定で、関東をまるごと囲うつもりなのだろう。そのほかの層に関しては小さな工場施設や食料生産装置があった。もちろん壁内部の層はほとんどが防衛関連で、固定式のレールガンやレーザー兵器なども取り付けられていた。やはり、ミサイルなどの兵器は生産が追い付かず、あまり見られなかった。なお、壁付近の地形は平地が多く、見渡しがよくなっている。報告は以上だ」
壁の中が町のようなものになっている感じだ。
まだ建設途中で、作業員以外ほとんど人はいなかったが、完成すれば最前線防衛基地がすべてつながることになる。
「それで一番聞きたいのは紗奈からの情報なんだけど」
珍しく黙っていた梨花が、真面目に意見を言ったことに少し驚きを感じる。
「そうね、私からは重要な発表があるわ」
俺は席に戻り、紗奈は俺がさきほどまでいた位置に移動する。
「まず初めに、東京奪還作戦へのWIND参加は中止になったわ」
東京奪還作戦、今回で二回目だが、今回も反乱軍が指揮をしている。
前回は参加していなかったWINDも今回は参加する予定だったが、何かあったのだろうか?
「その理由は?」
「今から話すわ、そしてそれはりーちゃんからの報告にもあった、WINDの新施設にも関連するし、今後私たちの任務は一つ増えるわ」