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風が吹いている。
やはり、ユリュシオンの風はどこよりも心地よい。
しっかりと管理されている芝生に囲まれた道を進んでいくと見えてくるのが俺たちの基地だ。
基地は大きな六角形をした屋根を持ち、とにかくでかい。
基地には俺以外に四人暮らしている。
その四人の中の一人は……
「おかえりなさい、優介」
入り口で待っていてくれた紗奈。
「ただいま寺橋優介、任務を終え、帰還しました」
敬礼をしながら紗奈に帰還を報告する。
「ご苦労様。つかれているでしょ? お菓子作っておいたから好きな時に食べなさい」
そう、風上紗奈である。小さな体だが、年齢的には俺より一歳年上。優れた頭脳の持ち主で、風上隊、通称ナンバー0の装備研究及び開発を行っている。
これまで多くの戦場を共にしてきたが、謎が多い少女でもある。
「まだ誰も帰ってきてないのか?」
周囲を見渡すが、紗奈以外に人の気配を感じない。
「まだ帰ってないわよ」
紗奈は俺から荷物を預かると、近づいてきたロボットにそれを渡した。
この基地は五人で住むには広すぎるため、色々なロボットが働いている。
これもその一つで、指定した場所まで荷物を運んでくれるのだ。
「そうか、それじゃあシャワーを浴びてくる」
「わかったわ。ゆっくりしてらっしゃい」
この基地の構造は少し複雑で、外見では一階しかない巨大な豪邸だが、地下に色々な部屋が存在している。
その中にはもちろん自分専用の部屋もある。
エレベーターに乗り込み、地下へ降りていく。
自分の部屋に到着すると、荷物や服をロボットに預け、シャワーを浴びることにする。
いつもと同じだ。
戦場から戻ると必ずシャワーを最初に浴びる。これがまた格別なのだ。
戦場と平和なユリュシオンを行き来すると、どちらが現実で、どちらが非現実なのかわからなくなるな……。
これもいつものこと。
シャワーを浴びながら答えもないようなことを考えるのだ。その疑問は汚れと一緒に流してしまう。
さっぱりした後、用意された服に着替え、一階のメインフロアへ向かった。
「露天風呂行けばよかったな……」
この基地が存在しているユリュシオン島には他にも色々な施設が存在している。例えば星を見るために施設や海が見渡せる展望台、露天風呂やレジャー施設などなど、不便なことはないと言い切れるほど充実している。
久しく行っていない露天風呂のことを考えながら、メインフロアへ向かった。