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「報告からするとこんな感じね」


 こんな感じ? 

「まさか、今の話って」


 俺は気になり紗奈に質問する。

「ええ、私が勝手に作った話よ。けれど報告に基づいたものだからだいたいはあっていると思うわ。それにだらだら報告をするよりストーリーにした方が分かりやすいでしょ?」


 一理ある。いつもは寝ている梨花もこの方法であれば起きていられるようだ。


「それで、それがWINDの新施設と何に関係するんだ?」


 紗奈はこの話を始める前、WINDの新施設に関係があると言っていた。

 今の報告を聞く限りでは新施設に関する情報がなかった。


「一〇九五隊が帰還した後、今回の新型のことなどを踏まえて、自分たちの能力不足を痛感したことをWINDに報告したのよ。それに対してWINDが出した結論が組織のレベルアップ計画」


「ほうほう、レベルアップとはゲーム感覚みたいだね」


 梨花が話に入るといつも脱線してしまいそうになる……。


「それで?」


 話を脱線させないよう、俺が誘導する。


「WINDに新しく階級ができるわ」


「ほう、それには俺たちも加わるのか?」


 正直なところ、ほかの部隊のことなんかどうでもいいというのがほとんどの人の意見だ。


「まあ、最後まで話を聞きなさい。新しくできる階級は、下から三等、二等、一等よ。いままでのWINDの方針としては、一つの隊に戦闘に長けている人から、長けていない人までを入れ、すべての隊を平均的に扱っていたわ。それが変わって、実力によってに分けることになったのよ」


 つまり、強い人は強い奴と部隊を組み、弱い奴は弱い奴と組むというわけか……。


「だが、今までもエリート部隊は存在していただろ?」


 今のWINDにもエリート部隊は存在している。

 それが一〇九五隊のような数であらわされた部隊だ。


「そうね、それがWINDの中で一等になるわ。今までの通常部隊の中で階級戦を行い、二等と三等に分けるわけ。そしてりーちゃんが手伝ってきた施設は階級戦に使われる場所よ」


 階級戦それは現在のWINDにも存在している。エリート部隊に入るためには現在のエリート部隊と戦い、実力を認めてもらわなければならない。つまり階級戦とは対人の模擬戦である。


「二等になった奴は一等に上がれるのか?」


 梨花が真面目に質問する。今回は話が脱線しなくて済みそうだ。


「ええ、階級戦は月に一度行われるわ。そこで一等に一回でも勝てば、そのチームと入れ替えになるわね」


「それで俺たちの階級は?」


 階級戦が行われようが正直どうでもいい。というかそんなことをやっている暇があるのか、そんなことをやってほんとにレベルアップするのかを聞きたい。だが、新型が人がという情報から、対人戦の訓練になることも予測できる。


「ないわよ。私たちはWINDに属してはいるけど、一般部隊とは少し扱いが違うのよ。他に質問はあるかしら?」


 質問……いろいろと出てくるな。


「階級戦をやる目的は新型にあるのはわかった。だが、本当にそれだけか?」


 新型が人型で対人戦である階級戦を今後多くやっていくのはいいが、新型に似た動きをするホログラムやロボットと戦った方が効率的だと思う。新型と言っても、バグは使えないだろ。


「私たちが裏切り行為をしたときのためね」


「というと?」


「私たちはこの島で隔離されている。WINDとしては最終兵器のようなものでもあり、使い方を間違えれば自爆ボタンにもなりかねない。そうならないために、私たちを倒せる部隊を作ろうとしているのよ」


 仲間を殺すために訓練する部隊か……。


「なるほど、だがなぜ今なんだ?」


「それはWIND本部に西日本の支部が加わったことにより、新しい体制になったからよ。今回偵察部隊ではなく一〇九五隊を東京偵察任務、オペレーションファントムアリアに任命した理由もそこにあるわ。西と合流したことでWIND本部は自分の席を確保するための醜い争いが怒っているのよ。そのせいで、今のWINDはまともに機能していないわ」


 つまり、一〇九五隊はWIND司令部の内部での醜い争いにより全滅の危機まで追い込まれたわけか。これだから組織というやつは。


「それで、俺たちの新しい任務というのは」


 この報告会の最初、紗奈は一つ任務が増えるといっていた。今回の報告会で一番重要なことがそれだ。


「あるわよ。私たちは新しくできた部隊の教官として付くことになるわ」


「嘘だろ」


 要はもしかしたら自分を殺すことになるかもしれない部隊を作れということか。


「言い分はわかるけれど、従いなさい。他に質問はあるかしら?」


「一〇九五隊が通信障害を起こした理由はわかったのか?」


 紗奈が作ったストーリーには通信ができないという場面が出てきた。通信ができないとなると今後の任務にも影響する。


「それは新型によるものよ。二班が見つけたという武器を搭載していない地上援護型が原因だと思うわよ。二班班長はレーダーのようなものと言っていたけれど、恐らくジャミング装置ね。それに、私たち風上隊の通信は現行の通信機器のような仕様ではないから影響を受けることはないから安心しなさい」


 風上隊の装備は隊長である風上紗奈本人がすべて作っている。誰よりも自分たちの装備に詳しい紗奈が言うのだから影響はないのだろう。


「つまり今回の東京奪還作戦中止の理由は一〇九五隊の出した結果によるもので、その結果に導いたのがWINDというわけか。ふざけた話だな」


「全くね。それと、さっきも言ったけれど私たちは教官になるかもしれないわけだから、いろいろと勉強しておきなさい」


「了解だ」


 これは忙しくなりそうだ。


「りーちゃんは聞いているのかしら?」


 さっきまで真面目に聞いていた梨花だが、やはり気が付いたら寝ているのだ。

 それは置いといて、少し最近の出来事などを勉強しておくか……。

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