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「なんだこれは! 誰でもいい、状況を説明しろ!」


 戦場に響き渡る一〇九五隊隊長、武の声。


「説明している余裕はないです」


 武の声に負けない大きさで二班班長、鈴善。


「くそ、一回全員座れ!」


 その叫びとともに、その場にいた一〇九五隊全員が地面に張り付く。


「二班班長、久井! 状況を説明しろ! 何故二班と三班で戦闘が起きている!」


 爆音が響く戦場から一変、隊長の声しか耳に入ってこない空間が生まれた。


「隊長との無線通信ができないため、我々二班は隊長が向かっていた三班へ合流する判断をとりました。ですがいきなり三班から奇襲を受けまして、正確なことはわかりませんが三班は裏切りを働いた可能性があります!」


 武のバグにより、地面に這いつくばらされた鈴善が、必死に状況を説明する。

 砂埃をまとった風がその修羅場に吹き付ける。


「三班班長! 言い分を!」


 隊長の怒りは相当なものだと皆が感じた。

 だが、怒りの中でも的確に現状を把握しようとしていた。


「俺たちは間違っていたんだ……」


 涙を流し、地面に這いつくばる三班班長は戦場では珍しくない絶望の顔を浮かべていた。


「どういうことだ、説明しろ!」


「僕たちが戦っていたのは、無人機なんかじゃない。俺たちは人殺しだよ」


「どういう……」


 意味の分からない説明に、再度質問をしようとする武だが、そんな余裕は戦場にはない。


「おい、お前ら後ろにいるのはなんだ? まだ倒していないじゃないか!」


「倒す? こんなかわいい少女が敵だと?」


 三班班長はすべてを失い、ただ泣き叫ぶことしかできないような人を連想させる状況下だった。


「これは……」


『助けてくれてありがとう、お兄ちゃん』


 見た目、声、動作、そのすべてが可愛らしい女の子だった。


「隊長、これが敵ですか?」


「……」


 見た目からは区別ができない。


「敵だ」


 こんな女の子がここにいるわけがない。

 だが、武も少女にバグを使用することはできなかった。


「敵ではありません。この新型は本物の感情を持っています」


 三班班長はうつむきながら言った。


「なぜそう言い切れる?」


「隊長も見えているでしょ? 俺の後ろに流れる赤い液体が。もう俺には何もわかりません」


『お兄ちゃん、なんで泣いているの?』


「苦しいからだよ」


『だったら私がその苦しさから解放してあげる』


 女の子がそう言うとスカートの中からナイフを取り出し……。


『少し待ってね。すぐに新しい体を上げるから』


 血の付いた首、涙が頬を伝う顔。出来事は一瞬で、その場にいたものは口を開けて見ているほかなかった。

 女の子は切り取った頭の髪の毛を掴み、その場を去ろうとした。


「総員……戦闘態勢!」


 隊長の叫び声とともに行われた戦闘。

 敵も戦闘型の増援が到着し、地獄の戦場となった。

 ファントムアリアにおける損害は三班全滅、その他多数負傷者が出たものの、全員無事であった。

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