68.G試練を突破する
粉々に砕いた台座のカケラが再び集まりだしているのを見て思う。
さすがにコレでは試練を突破できんじゃろと。
(フレアよ。さすがにこれ以上にあの台座を粉々にするのは不可能じゃろ?)
「そうね。これで試練に合格できないとなったらどうすれば良いのか想像できないわね。本当に台座が元に戻っているのか確認してみましょ。」
フレアに提案に従って土煙が晴れた広場を縦断して再び台座があった場所に戻ってみるとそこには龍の像が鎮座しておった。
ふむ、我には及ばんがなかなかの面構えじゃないか。
見事な龍の像を眺めていると突然、龍の目が光ったと思ったら我は強烈な光に包まれた。
(ぬおぉ!目が!目が!!!)
様々な耐性を持つ我でもその強烈な光に耐えられず視界が白く埋め尽くされた。
目の痛みが引いたところで目を開くとそこは本当に目を開けたのか不安になるほどの漆黒の空間であった。
そこに先ほどまで見ていた像とそっくりな龍が浮いていた。
ただしその龍は像ではなく生きた龍のようである。
『其方が我が試練を突破せしものか。まさか其方のようなものが突破するとはさすがに想定外じゃな。しかも既に龍の因子までも所持しておるとはな。ただその割には脆弱なようだが・・・。』
頭の中に大変失礼な言葉が響いてくる。
どうやらこの漆黒の空間に我を連れてきたのは目の前の龍のようじゃ。
(勝手に我を連れてきた癖に失礼なヤツじゃ。)
『それはすまんな。ただ人でも龍でもなく虫の魔物が試練を突破するとは欠片も想像しておらんかった。その上その虫の魔物が龍の因子まで所持しておるとは創造神でも予想できんじゃろ。』
これは褒めておるのか?
褒めておると思っておこう。
そのほうが我も気分が良いからな。
(まぁ、我の偉大さに驚くのは仕方が無いがそれで試練を突破したから力が貰えるのじゃろ?)
『そうじゃ、力を与える。その前に聞いておきたいことがある。』
わざわざこんな空間に連れてきて聞きたいこととはいったいなんじゃろか。
聞くだけなんら問題ないじゃろ。
(それで聞きたい事とは何じゃ?)
龍は一瞬考えるような素振りを見せて我に視線を戻した。
その視線は全てを見透かすようなそして偽りは許さぬと言っているようじゃった。
おそらくこの龍が龍神と呼ばれる存在なのだろう。
であるならば本当にすべてを見透かしていても不思議ではない。
『汝は我が力の一部を受け継いだならばその力を何に使う?』
《適応》スキルが反応していないと言うことはこの龍が我に対して何もしておらんと思うのじゃが我の本能が警鐘を鳴らしておる。
ここは素直に答えておくべきじゃろう。
この空間はこの龍の領域とでも言うべき場所であろうからな。
(うむ、勇者と魔王を倒すためじゃな。)
『そうか。これはただの願いなのじゃができるだけ多くの命を助けてやってほしいのじゃ。』
(誰彼構わず助けることはできん。ただ我の都合上、信者を増やすためにいろいろなことをするじゃろう。その一環として命を助けることは吝かではないのじゃ。ただ敵には慈悲を与えるつもりはないがのぉ。)
我の言葉の真偽を探っておるのか龍の瞳に魔力が集まっておる。
『それで十分じゃ。それでは我の力の一部を授けよう。今後会うことはないじゃろうから改めてこの世界のことを頼むぞ。』
龍の全身から力強い光が漆黒の空間に満たされて我は再び視界を奪われた。
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ピコーン
≪御神体≫を獲得しました。
・御神体
神の力の一部を使い安全地帯を作り上げる。
効果範囲や強度は御神体に祈りをささげる信者の数に比例する。
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