67.G台座を破壊する
(フレア、メア。この台座を粉々にする魔法を使うから離れておるのじゃ。)
二人が十分に離れたのを確認してから魔法の準備に取り掛かる。
まずは闇魔法の吸収能力のみに絞った拳大の黒い塊を作り出す。
今のスキルレベルでは能力を絞らなければ吸収能力は発動しない。
絞った状態でも吸収能力が弱くて戦闘中では使い物にならないじゃろうがのぉ。
そこから黒い塊に対して火魔法で熱エネルギーを風魔法で運動エネルギーを吸収させてゆく。
すると唯の黒い塊だったものが非常にゆっくりとだが赤黒くなり渦を巻き始めた。
ここまでの準備でかなりの時間を消費しておる。
やはり現状では戦闘では使えないな。
しばらくエネルギーを吸わせ続けていると遂に外に漏れ始めたので作業を完了させる。
ふむ、戦闘ではまだ使えないがこれは闇炎爆弾とでも呼ぼうかのぉ。
これをこのまま台座にぶつけても表面が砕けるだけで粉々にはできん。
台座の中心で爆発させないといけないのじゃ。
そこで今度は闇の大嵐を一つだけ待機状態で発動させる。
この台座は再生能力を持っておるので闇の大嵐で空けた穴もすぐに塞がる。
そこで闇の大嵐の内部に闇炎爆弾を格納して台座の中心部まで運ばせる。
さて時間はかかったが準備は整った。
台座に向け漆黒のドリルを解き放つ。
台座の表面で再生と破壊が拮抗したように見えたがそれは一瞬だけだった。
甲高い音を立てながら台座の中心まで一気に突き進んだ。
それにしても台座の再生能力がとんでもなく高い。
ドリルが進んだ後の穴があっという間に埋まって行くのだ。
さすがは龍神の試練の一つということだろうかのぉ。
台座の中心にまで達した闇炎爆弾が内包した熱エネルギーと運動エネルギーを一気の全方位に向けて解き放った。
天才的頭脳を持つ我の予想を超える事態が発生した。
大地が震えるほどの大音量が発生したのは良い。
しかし次の瞬間には音が消えたのじゃ。
どうやらあまりの音の大きさに聴覚が完全にやられたようじゃ。
さらに音同時に我の暗視を無効にするほどの漆黒の闇が辺りを覆う。
その上台座を破壊してもなお納まらない破壊の衝撃が我を空高く巻き上げたのじゃ。
音に聴覚をやられ、闇に視界を奪われた我は咄嗟に動けずに衝撃を正面から受け上下逆さまな世界をそのままフレアとメアのところまで飛ばされたのじゃ。
メアとフレアは離れた場所から闇炎爆弾の爆発を見ていた。
爆発音は離れた場所でも耳を塞ぐほど大きく、爆発の衝撃は両腕で顔を覆うほどであった。
「びっくりした。りゅうじんさまは大丈夫かな?」
「大丈夫でしょう。もう少し大人しめで良いと思うんですがね。」
メアは爆発の大きさに驚くと共にりゅうじんさまの安否が気になるのは巫女故だろうか。
反対にフレアはりゅうじんさまのことは心配しておらずもっと小さな爆発にすべきだったと苦言を呈するのはりゅうじんさまの能力を買っての事だろうか。
しばらくは止みそうにない土埃が舞い上がる爆発の中心地を眺めていると小さな黒い影が土埃を抜けて空に舞い上がった。
「フレアお姉ちゃん、アレ何かな?」
「さぁ、爆発の衝撃に巻き込まれた岩か何かかもしれませんね。このままだと危ないので場所を移動しましょう。」
フレアはメアの手を引いて移動する。
小さな黒い影は段々大きくなりその姿が視認できるようになってきた。
「アレ?もしかしてりゅうじんさま?」
巫女であるからか高い気配察知をもつフレアよりも先にメアがりゅうじんさまに気がついた。
「フレアお姉ちゃん。りゅうじんさまだよ!」
「あ、どうやら戻ってきたようですね。」
どう見ても爆発で吹き飛ばされているようにしか見えないのにフレアはまるで飛んで帰ってきたように言う。
その一瞬が決定的だったようで我は誰にも助けられることなく背中から地面に撃ちつけられた。
(イッテー!あ~、まだ頭がグルグルするのじゃ~。)
「りゅ、りゅうじんさま。大丈夫?」
おお、メアは優しいのぉ。
そしてフレアよ少しはメアを見習え。
その呆れた表情は何なのじゃ!
「あ~、その様子であればりゅうじんさまは大丈夫そうですね。今後からはもう少し考えて行動したほうが良いですよ。」
ふん、ちょっと加減が分からんかったんじゃ。
それに威力が足りずに台座を粉々にできなかったら困るじゃろが。
(ちょっと加減が分からんかっただけじゃ。とにかくコレで試練とやらは合格じゃろ?)
「う~ん、どうでしょ?合格したなら何かしらの力を授かるはずなのですがその様子ですとまだですよね。」
え・・・・。
確かに特に何かしらの力を授かったようにはないのじゃが・・・。
確かに台座を粉々にしたはずなのじゃが・・・。
「りゅうじんさま、フレアお姉ちゃん!アレ見て!」
メアの声を受けて台座があったほうに目を向けると土煙や石、岩が集まっているのが見えた。




