43.G高らかに笑う
行商人と護衛の男が7度目の喧嘩を終えたころようやく街へ入る人が並ぶ列にたどり着いたのじゃ。
「な、なんだ!?あの気持ち悪い魔物は?」
「こ、子供!?獣人の子供が乗っているぞ!?」
「誰の従魔だ!?」
我の姿を見て注目するのは良いが気持ち悪いとはなんじゃ!
失敬な!
(ふっふっふっふ、我の姿を見て恐怖しておるぞ!もっと我を畏怖するのじゃ!)
「なに言っているんですか。単純に気持ち悪いから騒がれているだけですよ。りゅうじんさま程より怖い魔物なんてたくさんいるんですよ。ワイバーンやデスナイト、オークキングにリッチ、スカルドラゴンにバンパイアなどなど他にもたくさんいるんですから。」
(嫌にたくさんアンデット系もモンスターをあげるのぉ?)
「アンデット系は面倒なんですよ~、物理攻撃が聞かないものが多いし光魔法以外には耐性をもってたりほんと厄介ですよ。」
ふむ、なぜに視線を逸らしながら以下にアンデットモンスターが倒し辛いことを強調するんじゃ?
もっとデスナイトの剣術やリッチの魔法などもっと強調すべき点があるのではないかのぉ?
(さてはフレア。アンデット系モンスターが苦手じゃな。)
「ええ、ええ。苦手ですよ。寧ろ得意な人なんていないんじゃないですかねぇ。そんな人は変人で変態で性格も悪くて友達もいないんじゃないですかねぇ。だから、私がアンデットが苦手なのは普通ですよ!」
おいおいフレアよ。
それじゃ光魔法が使える人間はみんな変人で変態で友達がいないのかのぉ。
あ、確かに勇者はそうかもしれんのじゃ。
「え~、それじゃりゅうじんさまもへんたいなのぉ?」
こらメア!
我が華麗にスルーした点を掘り返すんじゃない。
「そうですよ、メア。りゅうじんさまは常識を知らない変人で幼女を巫女にする変態で私を苛めるので性格も悪くて私とメアを除けば知り合いすらいないボッチなんですよ。改めて言葉に出すとりゅうじんさまって人ではないですけど碌でもない生物ですね。」
残念フレアのくせに言ってくれるではないか!
(ぐぬぬぬぬ、役立たずフレアには暫く褒美は無しじゃな!)
「な!僕の忠言を聞き入れないとは懐の浅い主ですね!」
(これが我巫女であるメアに言われたのなら別じゃがな!フン!)
「な!泣いて謝らないと許しませんから!フン」
「りゅうじんさま、私はりゅうじんさまがへんたい?でもりゅうじんさま大好きだよ?」
おうおう、やはりメアは違うのぉ
(うむうむ、メアは優しいのぉ。フレアとは大違いじゃ。)
「でもフレアお姉ちゃんと仲良くしないとダメだよ?お姉ちゃんがいないとメアもりゅうじんさまも大変だよ。お泊りするところを探したり、冒険者ギルドでお話したり、お買い物したり。」
むむむ、確かに今のところ役に立っておらんフレアじゃがメアを世話するには我だけではできないことも多い。
冒険者ギルドでの交渉も魔物である我だけではできん。
「そうですよ。私がいないと出来ないことのほうが多いんですから。強いだけじゃダメなんですよ。」
「お姉ちゃんもりゅうじんさまに助けられたんだから、もっとりゅうじんさまを敬わないとダメだよ。自分が言われたら嫌なことを人に言ったらダメだよ。
「そ、それはりゅうじんさまに会うためにやったことで自分一人でも問題は。」
「お姉ちゃん!」
初めてメアが大声をあげたのじゃ。
我もドキっとしてしもうたぞ。
「はい!」
「それじゃ、二人共仲直りの握手してねぇ!」
何となく今のメアを怒らせたらダメな気がするのじゃ。
それにメアの言っておることは間違っておらん。
フレアの評価はもう少しの間保有とするのじゃ。
今はメアの好意に賛同しよう。
我は《巨人の手》をフレアに差し出した。
(コレから人間との交渉ごとではフレアが便りじゃ。我は大丈夫じゃがメアのためにもしっかり頼むのじゃ)
「私もりゅうじんさまが私の想像からかけ離れていたからと言って扱いが悪くなってゴメン。」
フレアは《巨人の手》を握りしっかりと握手を交わしたのじゃ。
それを見てメアは大きく頷いて嬉しそうに笑ったのじゃ。
「仲直りは済んだかい?これからも一緒に旅をするんだから仲良くしろよ!」
「「(お前には言われたくない!)」」
ここに来るまでに7度も護衛の男と喧嘩した男のセリフではないぞ!
そしてこのとき初めて我らの思いは一致したのじゃ。
「おお、何だ仲良いじゃねぇか。そろそろ俺達の検問の番だから準備してくれよ。」
「「ふふふ。」」(ははは。)
大声を上げて笑う我らの声が外壁門の前に響き渡ったぞ。
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