3 階級 途中
東京都新宿区、歌舞伎町に林立する怪しげな雰囲気のビル群の中に、『Melte.』の本部があった。
「ひょろガキにテキサスが全滅させられたのか」
如何にも強そうな雰囲気の仮面を被った青年。彼は結社のボス『Zelo』で、元X段ヒーローだ。
「私の出る幕でしょうか?」
こちらは側近の『Mony』。12歳の少女だが、ヒーローの裏界隈では《神童》と呼ばれている。
「いや待て。手始めにオレの駒を送っている。」
「私はいつ??」
モニーは少し可愛げのある声で尋ねる。
「多分お前の出番はすぐ訪れる」
ゼロは少しニヤけた。
「ちょっと!さっきのは流石に可哀想だったよ」
「だ、大丈夫ですって…」
深夜3時、私と楓くんと代田は何故か私の部屋に集まっている。
「腕相撲しよって言われたんだもん!」
楓くんは私を指差して、
「君も勝負だっ!」
「はぇ?」
私は少しずつ後退するが、楓くんは構わず壁際まで追い詰めてきて、強引に私の手を掴んだ。
「田園ちゃんやっぱ彼氏??」
「違う!」
さらに楓くんは笑顔を浮かべて、私の左手を徐々に痛めつけてきた。
「まだいける?」
「も、勿論」
「じゃあ」
明らかに力が入った。
「死ぬぅぅぅぅぅぅあぁぁぁぁぅぅぅア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」
1番に起床した私は、黒のフード付きトレーナーに黒のミニスカートに黒のロングソックスに黒のスパイクに黒のハットで身を包み、準備満タンでランニングに出かけた。
代田とは一旦別れ、同じような格好の楓くんを連れて試験会場である新宿のセンティペーデタワーに訪れた。全ヒーローを集めたからか、かなりの人数で埋まっているエントランスの照明が一旦全落ちして、中央のモニターが起動する。
『やぁやぁヒーロー諸君、おはようございます。』
モニターには、ヒーロー理事会人事部長の英雄 ヒロの姿が堂々と映し出された。
『皆さんの実力は疎らだと思われます。ですので現時点での段位ごとに試験部屋を分けていきます。また、本試験での不正発覚は、強制的にE段ヒーローに組み分けさせて頂く所存です。』
少しざわついたが、照明が戻り係員の誘導の下移動を開始した。
E段ヒーローの実技試験会場は何故か、最上階の一つ下で執り行われた。因みに私のE段ヒーロー内での交友関係は最悪で、(言ってしまえば殆どの人がシングルなのだが)完全たるアウェイである。
最初の実技はヒーローにとって1番大切なパンチ力測定。見るに足らない筋力を測る種目だ。
「お前誰だ?滅茶苦茶弱そうじゃん」
滅茶苦茶頭弱そうな人に絡まれた。因みに今日の私はいつもとは違う、能力保持者だ。
「あなた次じゃないの?」
「うるせぇ!お前が先にやれ」
背中を押され、仕方なしに測定位置に付く。
「ヒーロー名、年齢」
「ミオリ16歳。」
スタッフに二項を問われ、回答する。私は深呼吸をすると、構えた。
「打て」
全力でパンチを放った。
「190kg!」
一方、楓くんもその頃、パンチ力測定を受けていた。
「なんやこれ、errorってなんや!」
スタッフの人は若干焦っていたが、少し上の者が対応し、結果をだした。
「判定:X」
「やったー!自己ベストーっ」
と呑気に次の測定《跳躍力》のブースに向かう楓くんを、周りはかなり危険視していた。
跳躍力、楓くんは天井を突き破った。回避力、マッハ1000000000000000↑、これ以上の投球は不可能。視力、2.0↑。瞬発力、判定error。その他殆どerror。
休憩時間。私は楓くんと待ち合わせして、最上階の食堂に集まった。