エピローグ
本日2話目。
短いです。
「ねぇ、腕が治ったってことは、もしかしてダンジョン踏破したの?」
「まさか。これのおかげだよ」
探索者組合を出てすぐのところで、ビアンカに問われた私は、軽く否定した後、ポーチから茶色の小瓶を出した。
「へぇ、きれいな小瓶ね」
空の小瓶を妻の目の前で軽く振ってやる。
「あの、もし!?」
突然、横合いから声をかけられた。
「はい?」
「突然のお声がけ失礼しますが、その小瓶はもしやダンジョンで手に入れたものでは?」
「ええ、まぁ……」
「もうお使いになられたので?」
「はい、すぐに……」
「それは……、どのような効果が?」
「えっと」
俺は少し考えたが、金さえ積めば治療院で欠損の再生は可能だし、ダンジョンのクリアボーナスでも不可能ではないので、正直に答えることにした。
なんとなくの直感でしかないが、ここではそうした方がいいと思ったからだ。
「失っていた右腕が治りました」
「おお!! ではそれが噂に聞く聖女の霊薬か……」
「聖女の……?」
聖女という言葉に、私はなぜかあの飲食店で出会った女性の顔を思い出していた。
「ぜひお譲り願いたい!!」
「はい? でも、もう飲みきってますけど……」
「ええ構いませんとも! その瓶にも価値があるのですよ!!」
すると男は懐から革袋を取り出し、私に押し付けてきた。
「これで! これでお譲り願いたい!!」
ずっしりと重みのある革袋の口をビアンが緩め、軽く広げた。
「「っ!?」」
中には100枚以上の金貨が入っていた。
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「なぁ、帰り王都に寄ってニンニクとレッドペッパーを買って帰ろう。あと麺も。いや、小麦から作ったほうがいいか……?」
「なによ、急に」
「美味しい料理を食べたんだ。あ、塩と油はあるかな?」
「あるわよ。岩塩とオリーブ油が」
「オリーブ油!! それはいい!!」
「ねぇ、それだけでそんなに美味しい料理ができるの?」
「ああ、できるのさ。ペペロンチーノと言ってね。実は作り方をハッサク殿に教わったんだよ」
「ハッサク……?」
「ああ、そのあたりの話は帰ってゆっくりな」
「ふふふ、よっぽど美味しい料理なのね。あなたさっきからずっとニコニコしてるわよ」
「はは、面目ない。しかし思い出しただけでもよだれが……」
「そんなに美味しいんだったらさ、お店でも出しちゃう?」
「店……?」
「そ。お店くらい出せるでしょ? それだけあるんだから……」
「……………………」
「ねぇ、あなた……?」
「ぐふふ……」
「……それ、やめなさいよ」
次回、舞台は現代日本へ。
プロローグの続きからです。
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