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俺でよければ  作者: はしばみ
9/19

俺でよければ気場巡回にお供しよう後編

すげえスパンが空いた。

食事を待つ間スマホを触らないのは果たしていつぶりだろうか。

携帯所所持者の目の前で独りだけスルスルやるほど俺は配慮に欠ける人間ではないつもりだ。



さてここは近くにあった和食処。昼時だが、あまり客は入っていなかった。

俺はオムライス、佐伯はハンバーグ御膳をオーダー。



…和食とは。



「さて午後はどこから攻めるよ?」



「…まだ行くんですか」



文科系貧弱科の私はもう働きすぎたよ。



「まだ神に祈りを捧げたりないね。もっとアピールしていかないと」



「ユーは就活でもうまく立ち回れそうですネ」



就活というか特に面接に。君ならこの氷河期も乗り越えられる。

最近は売り手市場らしいが。



「なにその話し方」



なんかツボに入ったそうだ。なんかハズい。



「和風オムライスをご注文の方?お待たせいたしました」



いいタイミングでオムライスが運ばれてきた。

ナイスオムライス。



「…………っ」



佐伯がまた噴き出す。口に出ていたようだ。



**********



そのあと3か所ほど回るとだいぶ日が西寄りに傾いていた。

まあこんなもんだろ、と佐伯がいった時、何気に今日一テンションが上がる俺。



朝集まった駅まで戻ることとなった。その電車の中で。



「お前のおかげで勝てるわ」



本心か分からないがとりあえず礼をいってきた。



「次の相手。そんなに強いの?」



「下馬評じゃあナナサンで向こうだと」



「そうなんだ」



なるほどわざわざオフに勝利祈願までするわけだ。



「まー俺の出来次第で、ンなのひっくり返るよ」



「…………」



こういうことをさらりというところが実に佐伯らしい。自信ありげというか、ただ事実を口に出しているだけのように聞こえた。



「んで勝ったらまたパワスポ巡るから付き合えよ。つか試合も来い」



「あ…そっちはね。試合は行けたら、で」



「来るというまでかえ帰さねえ」



「ええー……」



そんなこんなで目的の駅に到着した。



俺は行く方向で検討してみるみたいな事をいって帰る筈だった。

そうなればちょっと疲れたけどまあ充実してたかな?くらいで終われた筈だった。



「みいなーとおーっ!」



背筋に冷たい汗が流れた。悪寒がする。

ホームにいたのはピラニアの群れだった。



佐伯をこの公衆の場で大声で呼びやがった大男はここで会ったが何年目か五里男。傍に控えるのは嶋。佐伯を視界に入れるなり猛然とこちらにやってきますはえっちゃんこと高崎。

キャップかぶってる人……知らない。

ネックレス2つ下げてる人……知らない。

なんか外なのにバッシュ履いてる人……知らない。



でもみんな多分バスケ部。つまり肉食系。よってピラニア。



「オフに会うの久しぶりじゃん」



「ああ……まあな」



佐伯が五里男に捕まっている。

しかしやばい。俺にとってはバスケ部とチンピラに絡まれるのとは同義に等しい。



「じゃ、じゃあね」



逃走を図ろうとすると五里男が気づく。



「誰?」



忘れられとります。というか覚える気がないようだ。

でもチャンス。今なら他人のふりをして帰ることができる。



「あははは……」



得意の愛想笑いで去ろうとしたとき、えっちゃんがこっちを向いた。



「あれー室瀬君じゃん」



「はあ?」



俺よりも早く五里男が反応した。



「ああ、こないだの奴か」



あまり親しくない人を「奴」呼ばわりですか。



「うわー、あまり親しくしてない人にヤツ呼ばわりされたって顔してるよー」



えっちゃんこわ。



「ああ、わりーわりー。それにしても湊、前も一緒にいたよな。仲いいの?」



「ああ、さっきもパワスポ行ってきたぜ」



「パワスポ?」



それを説明している佐伯の傍ら、俺は目付きの変わったえっちゃんこと高崎ににらまれていた。



「へえ……。何度もあたしが誘っても付き合ってくれなかったのにねえ。キミは誘われたんだ……」



「え、ええ……」



見えない位置からお腹をさわさわされた。寒気がやばい……。



「これからカラオケとか行くんだけどよ。お前も行くよな?」



「今からか。お前マジ?」



「特別にあいつも連れてってやるからよ」



そういって五里男がなぜか俺を指した。



「いや俺ら帰るとこだって」



「今帰ったって家でなにすんだよ」



だらだらするとごろごろするとかあるじゃん。あれは至福だよ。



「でもなあ」



「あーマジ頑固。友達くんからもなんか言ってやれよ」



「え? ええ?」



行くなんて一言もいってないのに。



「…………」



「わかったよ」



俺の無言をどう受け取ったのか佐伯が頷いた。



「あ、でも切符ここまでだしなー」



俺が思わずいうと、



「うわあざと」



「……え」



「それ俺に乗り越し分払えアピールだろ。……わかったよ」



「おおー」



勝手な解釈をする五里男。拍手をしつつも不機嫌な高崎さん。

背後からは「え、なにそいつもくんの」

「つかいつまでも立ってると迷惑だから」

「ゴリぱねえ」とか聞こえてきた。

夏までには完結させたい。

暑くなってきたなあ。


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