俺でよければ返事を書きましょう
今時文通とか古風。
最後に手紙的なのを書いたのは、多分10年以上前。
背景 蒼宮一凛様
室瀬です。お手紙ありがとうございます。
この間、書店で「 気になるあの子を絶対に落とせる、109の魔法の言葉」と銘打った書籍を読んでいるところを妹の見られ、
「まあ……迷う素振りくらいはしてあげるよ」といわれました。
お前なんか口説くわけないだろと、いいたいですね……。
ほんと自意識過剰です。
でもちょっと傷ついたかな、ほら僕メンタル細いし(⌒-⌒; )
室瀬千博
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これを書いた直後に一度見直したが、その時に思ったことは
「あー、せっかく手書きで書いたのに顔文字テンプレにあるやつじゃん。どうせならオリジナルでかわいいやつでも作ったらよかったのに。ほんとつまんない男だなあ」
くらいだった。
しかし翌日、見返してみると「(⌒-⌒; )」なんて気にしてる場合じゃないことがわかった。
まず文の繋ぎ方。礼をいったものの、すぐ本文に突入。もうちょっと膨らませよ。
本文も問題だ。なんだこの苦笑を誘うような内容は。
異性との文通もどきに緊張して頭が真っ白になっていたとしても、なぜこれを書いた。
蒼宮さんがせっかく、好きなお菓子についてリクエストを聞いてきてくれたのだから、そのことについて書けばよかったのに。
ちなみに俺の最近のマイブームはマカロンです。
あと俺がメンタル細いことなんて知ったこっちゃないですよね。
そして最大の失態は、背景の誤字。
手書きなのにタイプミスでやらかしちゃったような感じで間違えてます。
語頭入れたなら結語も入れるべきでしょう。
拝啓は割と覚えてたけど、敬具がわからなかった俺。
というかそもそも取引先に送るような手紙じゃあるまいし、なぜこんな堅苦しいのか。蒼宮さんの文章と比較して温度差あり過ぎだろ。
「…………」
なにはともあれこれが下書きでよかった。
俺は「ゴミ」をゴミ箱に捨てた。
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俺の懇切丁寧な状況説明の甲斐もあり、莉音は両親へ口外することはしないと約束してくれたが、あくまで深夜外出については黙認するスタンスだそうだ。
まだ考えがまとまっていないのかもしれない。
昨晩は家から出られなかったので、俺はいつもより少々早くマンションへ向かった。
結局あの駄文からまともに文章が思いつかず、向こうで続きを書くためにも時間が欲しかった。
例の部屋に着くなり、頭を悩ませに悩ませた結果、文にまとまったのは学校でのささいな出来事や妹の紹介など。
あと寝ぼけていたのか署名が「マカロンより」となっていた。
相変わらず語彙力がなくて辛いです。