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第四十三話 調査から戻って、ただいま。

 土壌の心配はこれでなくなった。

 あとは、この拠点からどの位置に町を作っていくか。

 地図の中央にかけて、魔獣の分布とか調べないと駄目だよね。

 なにせ、クレイテンベルグ領の半分からこっちだけでも、広大な土地の広さがあるんだ。

 俺だけじゃ治めきれないってば。

 かといって、山葡萄の群生地から離れすぎると駄目だろうし。


「地図のどの辺りだっけ、山葡萄の群生地」

「はい、この辺りから、こう。これくらいの広さはあると思います」


 うわ。

 確かに広いわ。

 クレイテンベルグの城下町に比べたら、うちの集落は小さい。

 それこそ、軽く三つか四つ位入っちゃうと思う。

 っていうか、それよりも大きいのか、群生地は。

 相当な量が収穫できそうだね。


 んー、悩むな。

 とにかく、中央方向に向けて調査をしてから、一度持ち帰って、グレインさん達と相談するしかないか。

 歩いて行く必要はないから、上空からささっと調査しちゃえば、今日中には終わるかな?

 終わるといいけど……。

 魔獣を見つけたら一応、倒しておかないと駄目だし、結構時間かかるかもしれないな。

 食料、持つかなぁ。


 ▼▼


 目が多い方が隈無く調査できるということになって、俺たちは上空から五人で広がった状態になり、見下ろすことになった。

 地図を見ながら、地図の下の方角を右回りに中央まで。

 中央まで行ったら、今度はそのまま上の方角へ。

 ぐるっと一週する頃には、また日が暮れてしまった。


 拠点に戻ると、意見の交換をしながら、地図に書き込んでいく。

 途中、単発で魔獣を発見すると、その場で駆除した。

 ぐるっと回る間に、十体くらいかな。

 それ程大きい物じゃなかったから、駆除してグリフォンさんたちに足で掴んで穴まで運んでもらって、その場で焼却。

 昨晩に比べたら、暇つぶし程度の駆除作業だったね。


「――ここですね。この辺りが林になっていて、ここからが森でした。ここに山李。ここには山林檎。山苺がこのあたりでした」


 上空から見ただけでそこまで確認がとれたんだ。

 アレイラさん、半端ないな。

 自生する根菜とかは、流石に下に降りないと見分けがつかないらしい。

 匂いも察知する情報の一つなんだってさ。

 魔獣がいるせいで、半分からこっち側に人が足を踏み入れないせいか、実がなっては落ちるの繰り返しで、自然と株が増えていくばかりだというアレイラさんの見解。

 こう見てみると、果物の宝庫なんだね。

 集落の畑は、休ませても状態が元に戻るまで一年かかってしまうらしく、かなり難儀してたみたいだ。

 そう考えてみると、半分からこっち側は、それこそ農地候補だらけということらしい。


 昨夜作った拠点より、中央寄り辺りが、土地の勾配がきつくなく、整地もしやすいように思えるね。

 整地は、どうせ俺が力業でやっちゃうんだけどね。

 それが終わったら転圧。

 家を建てる前の作業は、前に職人さんに聞いたことがあった。

 ある程度は知識として持ってないと、族長なんてできないからね。

 仕事をただやってもらうだけじゃ、指示はできないから。

 俺が族長になってから、覚えることが沢山ありすぎて、鳴きたくなったこともあったなぁ。


 地図に書き込んだ線や文字。

 下調べをきっちりやったもんだから、文字だらけになってるよ。

 でもさ、これ、バラレックさん達が調べた情報も、かなりのものだったよ。

 何せ、上空から見た訳じゃないのに、地図の形と上から見た形がほぼ一緒だったから。 正直、交易商の情報って、とんでもないものなんだと、改めて感心したよ。


「エルシー。だいたい調査は終わったからさ、一度戻って、マリサ母さんとクリスエイル父さんに挨拶してから戻った方がいいかな?」

「ウェル。それよりも、集落に戻って、皆に休んでもらいなさい。あなたも一度寝てから、デリラちゃんとナタリアちゃんを連れて、挨拶に行くといいわよ」

「ん、そうだね。みんなも疲れてるだろうし。そうしよっか。……と、その前に。みんな、最後の仕事いいかな?」

「「「「はい」」」」

『『『『何でしょうか?』』』』


 みんな元気だなぁ。


「この拠点の木材をさ、一度バラして、ここ。この場所に積み直そうと思うんだ。おそらく、ここが整地する次の拠点になると思うからさ。いい?」

「「「「はい」」」」

『『『『了解しました』』』』


 こうして、今回の調査では最後の作業。

 拠点の丸太小屋の移設に取りかかったんだ。

 まぁ、外して持ち上げて、移動して組み直すだけなんだよね。

 外すのと、組み上げるの。

 移動もグリフォンさんがやってくれる。

 俺たちは、申し訳なさそうな気持ちで見守ってるだけの、残念なお仕事。


 丸太小屋の移設が終わると、袋にひとつ分だけ山葡萄を取ってきてもらった。

 集落に戻ったら、皆で分けるつもりだったりする。

 これと、今回の収穫として、魔獣の肉と魔石があるな。

 十分、有意義な調査だったと言えるだろうね。


 魔石は基本的に、バラレックさんの商隊で取引してもらうレートが、平均的な価値だということになっている。

 今回は穀物を入れる袋で三つ分。

 結構な量になるな。

 王国の周りの魔獣を退治したときの報酬は、この魔石の一個分のレートの半額が入ることになっているらしい。

 魔石は魔石で、必要に応じて正しいレートで金貨等に交換する予定になってるんだ。

 俺とマリサ母さんが王国にもたらした、魔石による収入はかなりのものになってたということになる。

 クリスエイル父さんが、ロードヴァット兄さんに対して、強く出てたのは何となく分からなくもないね。

 マリサ母さんの二十年、俺の十九年。

 金額に換算したら、とんでもないものになってたんだろうね。


「よし、今回の調査は、ここで完了ということにしよう。皆、お疲れ様。魔石による報酬は、等分で考えてるから期待してていいよ。じゃ、集落に戻って休むことにしようか」

「「「「はい、お疲れ様でした」」」」

『『『『お疲れ様でした』』』』


 今後の予定は、集落に戻って休んでから、デリラちゃんとナタリアさんを連れて、クレイテンベルグ邸に挨拶に行くことになってる。

 そこで、今回の調査の報告をしてから、集落でグレインさん達に報告。

 整地や転圧等の基礎的な工事の予定等を詰めて、今後の予定を決めていかなきゃね。


「ルオーラさん、お願いします」

『はい、お任せください』

「お疲れ様、ウェル」

「うん、ありがと。エルシー」


 俺たちは集落に戻ることにしたんだ。


 集落に戻って、山葡萄を皆で分けて、鬼の勇者の詰め所で解散。

 俺は家に戻って、屋敷の入り口をくぐった。


「ぱぱっ、おかえりなさいっ」


 ひしっと俺の足に抱きついてくるデリラちゃん。


「ただいま、デリラちゃん」

「むふーっ」


 癒やされるねー。

 調査の疲れが吹き飛ぶ感じ。


「あなた、お帰りなさい。お仕事お疲れ様でした。お風呂用意するから、居間でお茶飲んで寛いでくださいね」

「ただいま、ナタリアさん。これ、お土産」


 小袋にいっぱいの山葡萄をナタリアさんに渡した。


「あら、とても良い香り。これはもしかして」

「うん。移転予定の土地に自生してた山葡萄だよ。かなり質が良いらしくて、期待できる場所だった」

「そうだったのね。デリラ、あとで一緒に食べましょうね」

「すんすん。いいにおいーっ」

「そうね。甘くて心地よい、良い香りね。あなた、今お茶を入れますから」

「うん。おし、デリラちゃん、いこっか」

「うんーっ」


 俺はデリラちゃんを抱き上げて、居間へ入っていく。


「ナタリアちゃん。その山葡萄、とても美味しいわよ。甘酸っぱくて、お茶請けにもいいわね」

「お帰りなさいませ。そうなんですね、エルシー様」

「えぇ。お酒のお供にもいいのよ。期待できる土地だったわね」


 エルシーとナタリアさんは並んで笑顔で台所に入っていく。

 俺はデリラちゃんを膝の上に乗せて、居間で一息つくことにしたんだ。

 やれやれ、やっと一段落だね。


「デリラちゃん。この後ね、ぱぱ、少し眠るから。そしたらさ、起きたらままと一緒に、マリサおばーちゃんと、クリスエイルおじーちゃんに会いに行こうね」

「ほんとっ? やったーっ!」


次は週末、と予定していましたが、できるときに更新していきますので、よろしくお願いします。

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異世界転移ものです

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勇者召喚に巻き込まれたけれど、勇者じゃなかったアラサーおじさん。暗殺者(アサシン)が見ただけでドン引きするような回復魔法の使い手になっていた。

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