7/7
失った者の苦しみが。
ある人は言う。
「思い出がたくさんある分、思い出が深い分、失ったときに辛くなる」と。
それは“思い出がないほうが楽”だと、言いたいのですか?
じゃあ、思い出がない人の気持ちが、あなたにわかるのですか?
思い出があれば、その姿を思い出せるじゃないですか。
その声を、仕草を、思い出せるじゃないですか。
その分傷ついたって、その分辛くったって。
その分、その影に支えられ、助けられ、頑張れるときだって、あるじゃないですか。
思い出がない私は、どうすればいいんですか?
“その人”を知っている人に、話を聞けばいいですか。
聞いて、想像すればいいですか。
……そこにあるのは、虚無感だけだと、知っていますか?
“あの人”に、会いたいんです。
話したいんです。
触れたいんです。
……“あの人”との思い出が、欲しいんです。
会いに行けばいいですか?
思い出を作りに行けば、いいですか。
“彼”に、会いに逝けば、――いいですか?