2-1.瑠備姉妹
草里 楓はやはり、またパレード潰しを持ちかけてきた。
わたしの家に直接来て、象がいるのを当たり前のように確認して、「こんにちは」と象に挨拶していた。象も象で、無邪気に応えている。
「新しく連れてきたよ」と言う草里の後ろに、二人の女生徒が控えているのに気づく。
ましな部下を連れてくる、なんて言ってたな。
「瑠備カヲリと瑠備シヲリ」
姉妹、か。瓜二つで双子のようにも見えるが、妹のカヲリはわたしたちと同級で、姉のシヲリの方は一学年上なのだということだった。
「その、どうぞ初めまして……シヲリさん、カヲリさん」
こないだの四副さんのこともあるし、この姉妹も巻き込またのじゃないかという思いが挨拶に出てしまい、躊躇いがちな態度になってしまう。
対して二人は、おしとやかな微笑で返した。にこやかだが思慮深い印象がある。気品のある姉妹だ。戦いなんて、できるのだろうか。
「あの、どうぞあがってください」
「いや……」と草里が言いかける。
「それはわるいですわ。いきなりなのに」
言ったのは、シヲリさんの方、かな。
「そうだな。片付けとかもしてないかもだし」
草里はぶっきらぼうだな。とりわけこの二人が上品なので余計そう思える。
「だいたい小象がいるから、四人は入らないかな?」
ふふふ、と姉妹は微笑。わたしもふふふ、とやってみるけど、全然合ってなくてげんなりした。
「お近くのカフェにでも、いかがです?」
カヲリさんの方、かな。見分けが付かない。
わたしたちは四人で外へ。とは言っても、峠回りにはカフェなんて一軒もない。町まで行くかそれとも学園通りにでも行かなきゃ。現実、そんなとこまで足を運ぶのも面倒なので、峠の駄菓子屋とくっ付いているカキ氷だの餡蜜だのの売っているしみったれた茶店に入った。申し訳ないくらいに瑠備姉妹には不釣合いなお店だった。
「姉妹さん二人は……ピエロ斬り?」
聞くと、草里が応えた。
「シヲリは、ピエロ斬り専。だったけど、二年になるときに手わざ系に転向したんだ。なのでピエロ斬り歴は、わたしと同じくらい? で、カヲリはピエロ斬り。実戦経験はないけどセンスはあるから」
――四副のようにはならない、とでも続けそうだったが草里からその名は出なかった。
「草里さんのようには、斬れませんけど」
カヲリさんがカキ氷を食べるさじを置いて、ぽつりと言う。
斬ったことは、あるのか。そういうことをする子らには、見えないんだけどな。
「あの、お二人は」思い切って聞いてみる。「パレード潰しは、自主的にしたいものなの……かな」
二人は同時に押し黙ってこちらを見た。
「ええ、まあ」
「できれば」
あまり抑揚もない、とくに強い思い入れもない印象といったふうにしか見えない。
草里は、餡蜜をすすっている。
幾らなんでも無理に連れてきた、ということもないだろうし何か弱みを握られているとか。そんなふうに最近は、草里を見てしまうこともある。こないだの一戦があってからは。
「でも、わたしたち斬り手って」カヲリが明るいふうに言う。「やっぱり、自分の腕を試してみたくもなるものでしょう」
「空丘さん」とシヲリさんはわたしのことを名字で呼ぶ。「それにパレードのことは、学園では多くは習いませんけれど、ここに住む者でしたら憎く思うものです。わたくしだってそう」
わたしも、そう……。
「そう。わたしたちはもっと自主的に、パレード潰しをするべきなんだ。パレードだけじゃない、この世界には色々邪魔なやつらがいるからね」
草里は、いっそう決意の固い目付きでそう言った。
あとは雑談だけで、とくにパレード潰しに関する具体的な打ち合わせをするということもなく、日程を決めると解散になった。




