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ソラミミ  作者: k_i
第1章
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1-4.草里ってちょっとひどくない?

 学園の朝。

草里(そうり)ってちょっと、ひどくない?」

 一年近く付き合ってきたけど、あんな草里って、見たことなかった……。

「何。そうーかな。そうは思わないけど……大体、わたしは戦系、あなたは手わざ系。主要科目が違う時点で、あなたはわたしの半分しか見てないんだし……一年一緒のクラスだけど、よく話すようになったのは半年前だから半分だし、それに、あなたは授業の半分寝てるから、そこでまた半分で」

「はっ? 半分も寝ていないっ」

「いや寝てるけど」

「エ……そうかな。そうかも」

「そうだよ。あなたにはあなたのやるべきことがある。わたしにはわたしのやるべきことがある。その分担で、いいじゃない」

「? ……その何か、ごまかされてるっていうのか。話が違わなくない?」

 草里は次の瞬間には真剣な表情に変わっており、今回は失敗だったけど、今度はパレード潰しを成功させよう、と言うのだった。そんなあ……無茶苦茶だよ。あんなの……。次はもうちょっと使える部下をつれていく、と草里は昨日言った。わたしは薄っすらとした草里という子への否定感情を持ったが、わたしはそのときはそれ以上何も考える気にすらならなかった。あのあとわたしは言葉もなく、帰途に着き、家に着き次第に眠りに落ちた。浅いところをぐるぐるぐる漂っている眠りでしかなかった。起きて、昨日のパレード潰しは、夢じゃなかった。と思った。

 

 ホームルームでは何も触れなかったけど、四副(しぞえ)さんは今日学園に出てきていない。

 けど、そこを思い出せば、四副さんは紙のなかで、し……死んでいた。それは確かにそうだけど。だけど、それはやはり四副さんの死を意味するわけではないでしょう。としか思えなかった。思いたくなかった。あれは、どういうことなのだろう。四副さんを、探しに行かなくては。

「そうだよ。草里、パレード潰しのことはわたしもまた考えるから、まずは昨日の場所に行って四副さんを探しに行こう?」

「四副って、これだろ」

 えっ。

 見ると草里が鞄から取り出したのは、昨日の、まったくあの紙になった四副さんだった。昨日と同じあの、無様で奇妙な死に様をその紙のなかで晒している四副さん。昨日のあの光景が甦る。わたしたち、なんてことをしていたんだろう。あんなことって……

「い、いや。こんなところで出さないで」

 草里はそれを鞄に仕舞う。

「まあ、今日の帰りに町通りの永眠画廊に持っていくよ。あそこの画家連中なら腕もあるしこれの治し方を知ってるんじゃないか。な?」

「そ、そうかしら。それよりも、うーん、保健室とかの方が……」

 そう言ってわたしは、このパレード潰しそのものが学園に内緒の事だったのを思い出した。だけどだからと言って……。

 一時限目が始まるので、草里は自分の席にするりと戻っていった。

 

 

 一時限目の休み時間に、隣のクラスから出てきた(こおり)さんと会った。

 一瞬はっとしたが、確かに郡さんだ。そのまま人間のままの。傷も、負っていないように見える。

 昨日、戦いのあと、郡さんの姿はなかったけど。

「あの、昨日……」

「悪かったわ。昨日は」

「えっ」

「途中で離脱させてもらって」

 そうだった……の。

「草里にこれは勝ち目はないって伝えたんだけど、じゃあ先帰れって。わたし、恥ずかしいんだけど初めて戦いで、……あ、ごめんなさい。あとにしましょう」

 郡さんはそれ以上何も言わずに教室に入っていった。

 でも、よかった。そうわたしは思った。必死だったのは仕方ないんだ。草里があんだけ普通に戦っていられることが不思議なくらいなのだ。草里は、普通じゃない。

 郡さんはピエロなんて斬りたかったのかな。草里は部下と言ってるくらいだから、無理に誘われているのかも。謝っておいた方がよかったかな……放課後、声をかけよう。

 

 二時限目は、急に自習になった。

「ピエロは斬ると、紙になるの……? あれがピエロというものの死?」

「いや。どうだろうな。銅像や模型になるのもいるし……巨大化するのとかもいるな。わたしもまだ序の口だから、そんなくらいしか知らないけど、もっと色々あるよ」

 授業では、実際にパレードにいたようなピエロを斬ることはない。先生が作り出すレプリカ・ピエロだ。草里はこの学年になる前までに、そうでない本物のピエロを斬っていたことがあるということだ。

「巨大化って……? それが、そのピエロの死の形なの?」

「そうだな……なんか、でっかくなって表情とかも変わるんだ。だけどとにかく、可愛いだろう。わたしはだから、ピエロは好きなんだ」

「可愛い……? す、好きって。殺しあう相手だよね」

「そうなんだけど、好きじゃわるい?」

 やっぱり、草里は普通の子じゃない。とは、今までにも思っていたけど……。やることも考えることも普通じゃないや。

 放課後、郡さんには会えなかった。

 それに、いつも一緒に帰っていた草里もいつの間にかいなくなっている。

 なんで……一緒に帰るのは、仲良くなってからいつも欠かしたことなかったのに。やっぱり、何かが変わってきている、のかしら。

 わたしも、草里にとって「部下」でしかないの? わたしもいつの間にか部下になったのかな? わたしはそんなの、いやだ。草里とは対等な友達で、いたい。

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