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第1話 マジカル☆シューティングスター

 プロローグを見て、デキるメイドさんがしゅばばばーって物語を期待した方はすいません。

 彼女は主人公ではないのです。ないのです……!!!


 あと、例によってサブタイトルには何の意味もありません。

 ノリと勢いと思考停止して付けてますので。

「―――ハァッ!」



 かつーん。


 鋭く吐きだす息と同時、風を斬る音と共に宙を銀閃が奔る。

 両手で握り槍の先端よりも眩い銀糸の髪を風に流し、ただ只管に正面へと得物を突き出す。


 かんっ、かんっ、かんっ――


 目にも止まらぬ速さで、一息の間に三発、四発と刺突を繰り出す。

 しかし、対する甲冑の鎧戦士は何事も無かったかのように見切り、右手の盾を少し動かすだけで全てを捌いていく。


 かんっ、かっかっかっかっかっ―――


 十秒、二十秒と続ける内に連打は加速し、遂には連続音として盾を打撃し続ける。

 それは木に穴を穿つ啄木鳥の様でもあるが、実際の所、威力は岩板を砕く破砕機に近い。ただ、それを受ける鎧戦士が大樹が如き存在を放つ為に、啄木鳥のような印象を受けてしまうだけだ。



「――――ッ!!!」



 ずがががががががががががっ


 連続音から破壊音へ。

 槍刃が欠けようとも気にする事も無く、ただ重量だけを武器として打撃する。

 継続は力なり、唯一点を連打し続けた甲斐あってか、城塞の如き存在を持つ盾の表面に傷が出来……一度傷が付いたならば、その傷が拡がるのは早い。

 穂先が削れた分だけ、盾が削れる。


 槍を突く事に集中しながらもその先へ視点を向け、最後の一撃を放つ。

 全身をバランス良く強化していた不可視のエネルギー……“魔力”を操り、それを左脚先から腰、腕を通して一本のエネルギーラインとする。左足を下げて半身になり、槍を突き出し、その先端が触れる瞬間、イメージしたラインが一直線になるようにしながら、全身を持って突撃を慣行する。



「―――ッこれで、トドメです!」



 借り物であるが故、魔力を流し辛い得物には下手な強化を行わず。純粋に自身を強化する事で強力な一撃を放つ。それがこの場での最善策だと考えた。


 先端一点に込められた莫大なエネルギーが盾と衝突し、破砕し、打ち砕く!









 ―――と、思った。



「はい残念」


「えっ、ちょっ……えええええーーーー?!」



 相手の方が上手だった。

 全力を込めた一閃は、しかしながら鎧戦士の持つ訓練用の棒に巻き取られる様にして流され、宙を舞い、草原を突き抜ける。


 まるで地から天へと至る逆流れ星。リバース・シューティングスター。

 槍と共に飛ぶ少女の名前は星の名を冠するだけに、実に様に成っていた。


 想定外の出来事に一瞬思考が空白になるものの、放物線を描いて飛ぶ中で意識を取り戻す。

 とりあえず、槍を持ったまま無理な姿勢での着地は危険だと判断し、地面へと突き刺してブレーキとする。直後には草原が目前に迫っていた。


 ……手袋付けてて良かった!


 手を伸ばし、大地へと触れ、身体を丸めて強烈な衝撃を受けながらも強引に身体を転がす。

 飛び込み前転の形で吹っ飛ばされたエネルギーを受け流し、ずしゃあああーーと勢いに乗ったまま草葉や砂埃を巻き上げながら数メートルを駆け抜けて漸く止まった。



「……えっと、イヴ、大丈夫かい?」



 流石にやりすぎたと思ったのか、鎧戦士が盾と棒を置いてがしゃがしゃと駆け寄って来た。

 閉じていたフェイスマスクをかこんと開いて覗くのは碧眼、そして灰色の髪の青年だ。

 転がる少女の実兄である彼の名はユスティ、この城塞都市アルクシアの騎士団に所属する立派な貴士である。



「だ、大丈夫でぅー?」



 それに対し、起き上がろうとして目を廻して尻餅を付き、起きるのが億劫になってそのまま寝転ぶ。

 腰程まで伸ばした青み掛かった銀髪を草原に散らして兄へと碧眼を向ける。

 イヴ・ステッラと言う少女は、疲労からか半笑いの表情で返答した。


 まだ、幼女と言っても差支えない程の年齢の彼女は、その年齢に似合わず落ち着いた様子を見せる。


 この世界において、髪の色は重要な意味を持つ。

 それは古来から伝わる、6人の英雄の伝説。


 曰く、青髪の魔法使いは素早い思考を持ち、精密な魔法制御で敵を穿った。

 曰く、赤髪の闘士は頑強な肉体を持ち、巨竜の攻撃を受け止めた。

 曰く、紫髪の射手は強大な魔力を持ち、万の敵を纏めて粉砕した。

 曰く、緑髪の軍師は強靭な精神を持ち、常に冷静に皆を導いた。

 曰く、黒髪の剣士は超感覚を以て攻撃を流し、悪魔を仕留めた。

 曰く、白髪の賢者は膨大な知識を持ち、仲間の窮地を幾度も救った。


 6人の英雄にあやかった能力を人々は賜能、あるいはギフトと呼んだ。

 賢者に近い髪色を持つ彼女は、その伝説の通り、産まれた時から様々な知識を持っていた。

 それは剣や槍といった武器の知識を始め、手早く簡単に作れる料理の知識など多岐に渡る。

 とは云え、自分の持つ賜能の全てを把握している訳でもなく、必要になった際に「ああ、私はこんな知識を持っていたのか」といった程度であり、事実過去には純白の髪を持ちながらも、その生涯で一度たりとも人々が知らぬ知識を見せずに死んでいった者すら居た。



 白銀の少女が持つ知識は世界にどのような影響を齎すのか。

 それは、彼女自身も、その知識すらも誰も知らない。

 賜能は「シノウ」と読む。

 何か作品固有の名称とか作ってみたかっただけなので、まあ普通に先天技能とかそんな感じに脳内変換して貰えれば。普通にギフトでも可。

 要するに厨二ネーム。

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