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風呂上りの衝撃。(2)
修くんには、付き合っていた彼女がいた。
その彼女は、病気を抱えていた。
修くんは、その彼女を懸命に支えながら生きていた。
その人は、病状が悪化して去年の12月に入院することになった。
そして春を迎える間もなくに、帰らぬ人となった。
『生きて。でも、忘れないで』
それが、彼女が病床で修くんに言った最期の言葉だったという――――
……以上が、俺が電話で修くんから聞かされた話の概要なのだが――――
――――俺は何も知らなかったんだ。
ただ、適当に歌詞を書き上げただけなのに……
それが、こんなに身近な人の――
同じバンドのメンバーの、悲しい想い出をなぞるような歌詞になっていたなんて――――
頭が混乱する。わけがわからない。
こんな偶然ありえるのかよ。信じられねえ。
修くんは嘘をついた?
いやそんなはずはない。あれが作り話だなんて思えない。何より修くんがあんな嘘をつく理由なんてない。
――――そうか。
現実にあったこと、なのか……