世界は変わった
ひのきの、心の奥底から魂丸ごと搾り出してぶちまけるような熱い叫びが、鼓膜を通って俺の脳を揺さ振る。
何なんだよこれ……!
マックで聞いたときと、全然……
違うじゃねえか!
歌詞とかメロディとか、それ以前に……
『想い』が、違う。
決定的に。
無理矢理感動を誘おうとしていた、あのときの俗な想いから……
本気で人に、想いをぶつけたい。ぶつけて、感じ取って欲しい、といった想いに――
そういった気迫が
ありありと、生々しく伝わってくる。
まるで、この広場という空間がひのきによって支配されているような――
そんな奇妙な気持ちにもさせられた。
……ひのきは、俺がいることには気付いていないようだ。しかし、5人のギャラリーからさらに数メートル離れているところで俺が観ているとはいえ、あいつがいつ気付いてもおかしくはないだろう。
だがしかし、俺は気付かれたくはなかった。
動揺させて、歌を中断させたくないから。
最後まで、この歌を聞いていたいから……
『消えて欲しくない ずっと一緒にいたい』
ひのきの言葉が、ダイレクトに俺の魂を穿つ。
『俺が一緒に死んでやると わがままな愛を振り撒いてた』
目頭に熱を感じたときには、すでに涙は頬を伝っていた。
『笑って君は 最期を告げる』
――ちくしょうっ!
――もう泣かないと、決めていたはずなのに……
『生きて。でも、忘れないで ……と』
ギュっと握りしめていた拳の甲を、ゴシゴシとこすりつけるようにして、俺は涙を拭った。