表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/223

第六話 生と死の境界線上で~初めての戦闘とピンチ~

 俺は敵の襲撃の知らせを聞いて、校舎を目指して走っていた。

いよいよ魔族との戦いが始まる。刻印のない俺は魔族にかてるのだろうか、不安で一杯だった。これからいくのは戦場、遊びではない。殺し合いの場だ。少しでも隙をみせればこちらがやられる。俺は死との恐怖に震えていた。


 俺たちは校舎にたどり着いた。しかし不自然すぎるほど中は静かだった。魔族が襲撃してきたとあらばパニック状態になってもおかしくないはずだ。


「なんでこんなに静かなんだ?」


俺は走る健と玲にきいてみる。


「そりゃあ魔力のない人間たちは止まっているからな」


健が答える。止まっている?どういうことなのだろう。俺はさらにわけがわからなくなっていたが玲が補足してくれる。


「えっとね。伊集院さんと工藤君が結界をはっているの。この結界でこの空間は魔力を持つもの以外は動けなくなっているわ。つまり人間の目を気にせず私たちは戦えるわけ」


「へえ~」


あたりを見渡してみるとたしかに人が固まっている。しかし固まっているだけでそこに人がいることにはかわりない。


「この状態で人は大丈夫なのか?」


俺は玲にきいてみる。いくら人の目は気にならないとはいってもこれでは人は自分の身を守ることはできない。どうぞ攻撃してくださいといっているようなものだ。


「大丈夫なわけないでしょ。もちろんこの状態でも魔族の攻撃を受ければ即死よ。だから私たちが守るんでしょ、人を、そして命を」


命、その言葉が俺にズシリとのしかかる。ここにいる人間の命は俺たちにゆだねられているんだ。俺はこの戦闘の自分たちの重要性を再認識した。生半可な気持ちで挑めばたくさんの命を奪われることになる。それは許されないことだ。たとえそれが自分の命を脅かす場面であっても俺たちは命を守らなければならない。


「おっと、おしゃべりしている暇はなさそうだ。魔族共のおでましだ」


俺たちの前に槍をかまえる魔族三体が俺たちの前にあらわれる。これが魔族なのか、全く生きているという感じがしない。何も考えずただ俺たちに刃をむけているだけ、いわば戦闘兵器のようだ。


「コロス・・・そして魂をウィスパー様に捧げる」


魔族達はおなじことを何度もつぶやいている。まるで何かに操られているように。


「さあ片づけるぜ。リファイメント!」


「来るわよ蓮君!かまえて!」


「お、おう」


俺は意識を集中する。


「リファイメント!」


漆黒の剣が俺の前にあらわれる。


俺は剣をかまえた。落ち着け、あれだけ鍛錬したんだ。自分にそういいきかせるが、体は震えている。俺の目の前で今命と命のぶつかり合いが始まろうとしている。少しでも集中がとぎれればやられる、その恐怖に体は正直に反応していた。


「いくぜ!!」


俺たちは魔族に向かって一歩を踏み出した。




「こんな雑魚にやられてたまるかよ!」


 健が先に抜け出して魔族に攻撃する。


「烈火の魔弾、我に敵すものを貫け!フレイムラビット!!」


烈火の炎に包まれた無数の弾が魔族を貫く。


「ぬうおおおおおお!!」


攻撃をくらうと魔族は悲鳴と黒い煙とともに消えた。


「今度は私の番ね!」


玲がくさり鎌を自在に操る。まるでくさり鎌が生きているように動く。


「震える氷の刃、我に敵するものを切り裂き冷風の彼方へといざなえ!ブリザードブレイド!!」


氷のくさり鎌は蛇のようにうねりそして華麗に魔族を切り裂く、その様子はとても美しかった。


「ふう、一丁あがり!!」


さすがに二人は刻印を持っているだけあってその力を解放しているためか、普段からは想像できない圧倒的な強さを誇る。


だが俺には刻印がない。このままの状態で魔族に勝てるのだろうか?剣を持つ手が震える。怖い、たまらなく怖い。目の前に俺を本気で俺を殺そうとしている奴がいる。だめだ、体がうごかない!!


すると魔族は俺めがけて飛んできた。やばい、このままじゃ・・・


「蓮君なにしてんのよ!!相手をちゃんとみなさい!!」


「はっ」


その玲の声に俺は正気に戻る。そうだ俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ。人間を、命を俺は守らなくちゃいけないんだ!!


「はぁぁぁあああああああ!!」



俺は突っ込んでくる魔族めがけて足を踏み込んだ。


「こんのやろうがあああああ!!」


俺の剣は魔族を真っ二つに切り裂いた。


「のわあああああ!!」


魔族は悲鳴をあげて消え去った。や、やった!俺は勝ったんだ。


「やったじゃない蓮君!!」


「全くひやひやさせやがって!」


二人がかけよる。俺はその姿を見てほっと肩をなでおろす。よかった、俺は自分が生きていることに安堵した。


「しかしさっきのは・・・」


俺はさっきの魔族たちが気になった。生きている感じはなくただなにかに操られているようだった。


「あれはターゲットがだした幻影ね。私たちを足止めするためのものでしょう。あんなのがまだうじゃうじゃいるわよ」


幻影・・・俺はそんなものと戦っていたのか。しかもあんなのがまだうじゃじゃいるなんて。さすがに無理なんじゃないかと思った。さっきの幻影一人が一杯一杯だった。あんなのが複数できたらひとたまりもない。


そう思っているといきなり目の前に工藤があらわれる。


「いやあ~みなさんおつかれさまです」


なにがお疲れ様だ。こっちは今死にそうな体験をしったてのに。涼しげな顔をしている工藤に俺はムカッときた。


「工藤君そっちは?」


玲が工藤にといかける。


「現状はターゲットとの追いかけっこですね。あっちもなかなか素早いようで。みなさんもターゲットを発見したらこっちに連絡してください」


「わかったわ」


「ではまた後ほど・・・」


そういって工藤はまた姿を消した。いったいなんだってんだ全く。


「じゃあ私たちも別れてターゲットを探しましょう」


ええ!?俺まだ一人で戦う自信ないんですけど。それに一体ならともかく複数できたら俺には勝ち目なんてない・・・


そんな俺の様子をみた玲がまた声を上げる。


「大丈夫よ蓮君。さっきの調子でいけば幻影なら楽勝よ。それにいざってときは私たちをよべばいいから」


そんなこといわれても・・・やっぱり俺は自信がなかった。


「んじゃ、また生きて会おうぜ蓮!」


こっちの気持ちも知らずに健と玲はそれぞれターゲットをさがしに走っていってしまった。



 しかし探すといってもどこを探せばいいのだろう。俺は手あたりしだいに校舎を走り回った。途中ターゲットの幻影とも遭ったが辛くも俺は生き延びていた。


「でももしターゲットを見つけちまったらどうすりゃいいんだ?」


連絡しろっていわれてもどうすればいいのかわからない。でも、今の俺の力じゃどうにもならない相手らしいし。


俺がターゲットと戦えば瞬殺だと工藤は言っていた。あいつは嘘とか冗談を言える口じゃないし事実なのだろう。


「まあそんときはそんときか」


俺はそう思うことにして校舎を走った。




 校舎を走り回って30分ぐらいが過ぎた。ターゲットはどこにもいない。


「もうだれかが倒しちゃったのか?」


こんだけ探してもいないとなるともういないのかもしれない。でも結界はまだ解けてないからやっぱりまだどこかにいるのだろう。


「どうすっかなあ」


俺がそう思いながら一年の廊下を歩いていると突然


「ん!?」


突然なにかの気配がした。今まで感じたことのない寒気。まさかこれって・・・


この桁違いの魔力の気配。これはやっぱりターゲットの可能性が高い。


「でもどうする・・・」


俺がいっても歯が立たない。それなら応援がくるのを待った方がいいのかもしれない。でも逃げられたら・・・


「ええい、ままよ!!」


俺は気配を辿ることにした。



「確かこのあたり・・・」


 俺は気配を感じながら廊下を歩いた。少しずつ気配が近づいてくる・・・


 そして、ある部屋にたどり着いた。そこには誰もいない。だけどもっともここが気配が強い。


「なにもないな・・・」


俺はくまなく部屋をさがしてみた。そこにあるのはガラクタばかり。


もうあきらめようかと思った瞬間、ガラクタの下に魔方陣をみつけた。


「もしかしてこれって・・・」


俺がその魔方陣に手がのばすと・・・


「うわっ!!」


突然魔方陣は光を放ち消えた。けれどそのかわりに・・・



なんと目の前に巨大な槍をもった魔族が現れた!!



「我が名はウィスパー。見つかった以上、お前の命、もらっていくぞ!!」




今、俺とターゲットとの戦いが始まる。はたして俺は無事に生き延びることができるのか。



「や、やばい・・・」



俺の体は全身、恐怖で激しく震えていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ