第六十二話 Happy shopping~初めての感謝とプレゼント~
「あ、まずはここに行こうよ!!」
六月だというのにこの炎天下の中、先頭を切って歩く玲は無邪気にはしゃぎながら一つの店を指さす。
「Get Way・・・?」
その店には金色の文字でそう描かれていた。そして店の正面にはいかにもって感じのキラキラとした装飾が飾られ、丸みを帯びたドア。
若い女性に好まれそうな建てが前だ。おそらく、その店内には女性とっては心躍る品々が並べられていることだろう。
「ふうむ。まあここに来ることはわかってたけどな」
俺の右隣を歩く健が眩しい笑顔を見せながら店の入口へと走っていく玲を見つめながら話す。
「ここはな、玲の特にお気に入りの店なんだ。毎度毎度、この街に来るたびに最初に行くのがこの店。ま、恒例行事みたいなものだ」
「ふ~ん・・・」
健は遠くを見つめるように、その先にある姿を見守っているかのように話す。
どうやら、この二人はこの街に何度も足を運んだことがあるようだ。それもパターンをつかめるほどの相当な数を。
健の眼差しは、玲の後ろ姿をいつくしむかのように向けられていた。
いや、どちらかというとやれやれと、いった感じか?
なにやらこの暑さから来る汗とは別に、なにかこう、これからとても大変なことが起きる前の冷や汗のようなものが健の頬から滴り落ちる。
「さあて蓮君、これからが大変だぞ。なにせ玲の買い物は殺人的といっていいぐらいに人使いが荒いからな」
「さ、殺人的・・・」
俺の頬に、健と同じくいや~な汗が滴る。
そういえば、登校初日に初めて健達と出会った時、小声で俺に言ってたっけ・・・
「玲の人使いをまともにうけおってると人生を破壊されるぞ」
・・・これが本当ならもしかして俺は、これから相当な修羅場に足を踏み入れてしまうのか??
殺人的な人使いというのがどんなものであるのか見当もつかないが、今の健の言う言葉にはなんの疑いの余地もなかった。
くそっ・・・こんなときに限ってまともなアドバイスをしやがる。こういう時こそ自慢のボケを発動せんかバカ者が!
ポン・・・
健が俺の右肩にそっと手を置いた。
「頑張れよ、蓮。陰ながら応援してるぜ!!」
「はあ!?」
健はいつぞやの工藤並みに衝撃的かつ強烈な言葉を口にした。
「応援してるって・・・お前は関係ないのかよ!?」
俺が慌てて健に聞くと、健はニッコリと満面の笑顔をむけながら言った。
「いや~本来ならそれは俺の役目なんだが、今回はなんつっても蓮がいるからな~。俺はお払い箱さ。いや~久しぶりにこうしてのんびりと買い物ができるな。もう蓮には感謝しきれねえぜ」
「っ・・・!?」
ただでさえ体力的にもう一杯一杯だってのに、こっから健のいう殺人的買い物が始まるのか・・・しかも俺一人だけが。
前言撤回、やっぱり来るんじゃなかった・・・
「はあ~・・・」
だけど・・・
「ほら!みんな早く早く~!!」
あんな弾けた笑顔で言われちゃあ、行かないわけにはいかないよね・・・
それこそ男の流儀に反するってもんだ。
「さあ、まず最初のミッションは服選びだ。頑張れよ蓮!!」
「ああ、死なない程度に頑張ってみるよ・・・」
そして俺達は、手招きする玲目指して歩き出した。
「おお・・・」
店内に入るとそこは別世界。白を基調とした明るい雰囲気の店内に立ち並ぶオシャレなデザインの服、涼しげな帽子、可愛い装飾のついたバック、そして奇麗な装飾品などなど、まあよくもこんなに女性に好まれるものを揃えられるものだ。それも相当な数、まさに女性にとっての街の中の楽園といったところか。
店内に入って早々、何度も来ているせいか、玲はただ一点目指して猛スピードで店内を駆け抜けていった。
まあ言うまでもないが、健の言った通り服のコーナー目指して・・・
「わあ、これ可愛い・・・」
ズラッと並べられた色とりどりの服。ここまで多いとなんか爽快だな。服は服でもまあ当たり前だが同じ色でも様々な形、デザインがあり、ここだけでどれだけあるんだろうと、考え込んでしまうほどにここにはありとあらゆる服が置いてある。
そんな様々なデザインの服が立ち並ぶこのコーナーで、玲はまるで子供のようにはしゃぎながら一着一着を手にとって確認しながら歩いていく。
「くっそ・・・」
今ここにいるのは玲と俺の二人だけ。健は伊集院さんと一緒に「ちょっとあっちを見てくる」といってどこかに言ってしまった。
つまり、今の玲を俺一人が相手しなければならない。
(ふう・・・なんで俺がこんなに緊張してんだ・・・)
普通に考えればただ買い物に付き添っているだけなのに、なんなんだこのプレッシャーは。
玲がおそらく持ってくるであろう複数の服に対する評価に対してのプレッシャーか?それとも・・・
「ねえ蓮君。これとこれならどっちがいいと思う??」
(きたーーー!!!)
さあ早速きました俺へのクエスチョン。今この場面で俺に求められているのは「ああ、いいんじゃない」とか「どっちでも」などという曖昧かつ単純な意見ではない。なにがどうでこうなのかを言ったうえでの判断を求められている。
正直、俺はファッション関係に対する知識は皆無だ。おそらく玲もそのことは知っているだろう。しかしそれでも聞いてくる、そんな俺の意見を欲しがっている。
ならばどんな形になったとしても全力を尽くすのが筋ってもんだろ。俺は俺なりの、できるかぎりの意見を言わなければ、そして玲に満足してもらわなければ・・・
そして俺は息をのんで玲の持つ服を見つめる。
右手にあるのは水色のなんとも涼しげな夏にぴったりのワンピース。そして左手には淡い黄色の玲の明るさと無邪気さがよくにじみ出ているブラウス。どちらも玲にぴったりで、着ればおそらくモデル並みに似合うであろう。
どちらも甲乙つけがたい。しかしどちらかと聞かれればどうにもこうにも・・・
「あ・・・」
その時、俺は玲の後ろの棚にかかっている一着の服が目に入る。
それは淡い緑色の一着のブラウス。上のあたりに少しフリフリが付いていて、下はふわっとしたなんとも優雅なブラウス。なぜかその時、周りにはあらゆる服があるというのにその服だけが俺の視界に飛び込んできた。
本来、こういう時は提示されたものに対してものをいうんだろうが、その時俺は衝動的に、その服を手にしていた。
「あ~そっちもいいけどこ、これなんかどうかな?」
なんか冒険しているような気もするが、ここは自分の考えに素直になってみよう。玲もそれを望んでいるはずだ。
そして俺が見せる服を玲はじーと見つめたまま時間だけが過ぎていく。やばい、半端なくプレッシャーが・・・
頼むからなにか言ってください玲さん。でないとこの緊張にもう耐えきれないっす・・・
そして玲は服に向けていたその視線をくっと俺に向ける。さあどうなる、俺の行方は・・・
「うん!それいいね蓮君!!そんなのあったんだ・・・よし!これに決めた!!」
「ほ~・・・」
俺を出迎えてくれたのは玲の満面の笑みだった。それを見た瞬間、肩にのしかかっていた緊張がスッと解けて肩をおろす。そしておもわず口にだしてしまう。
「なにが「ほ~・・・」なの蓮君??」
それをみて玲が不思議そうにこちらに尋ねる。
「いや~なんでもないよ。なんにせよ、気に入ってもらえてよかった」
まさか玲の服選びでめっちゃ緊張してた、なんて言えるわけがないし、今はただ気に入ってくれただけで充分だ。
「うん、すっごく気に入った。ありがとね、蓮君」
そして玲が満足気な笑顔を見せる。それだけで、俺は疲れも緊張もなにもかもが吹っ飛ぶ。本当によかった・・・気に入ってもらえて・・・
「ああ、それは俺が買うよ。俺が選んだわけだし」
「え、そんな悪いよ・・・」
「いいっていいってそれぐらい。日ごろお世話になってるんだし、それぐらい平気平気」
今の俺にとってその服の代金を払うぐらい屁でもなかった。
「じゃあ・・・甘えちゃおうかな!」
<とあるレストランにて>
「ふう・・・結構歩いたからお腹ぺこぺこ。さてなにを食べよっかな~・・・」
「・・・は~」
街の通りにあるとあるレストラン。店内はおしゃれな感じで、若い買い物客やカップルであふれていた。
「お疲れのようだな蓮」
ぐったりとしている俺を見て健が声をかけてくる。
「あ~・・・今はなにも答えたくない・・・」
あれからというもの、健と伊集院さんと合流して、それからまた次々と店を回っていった。玲主導で。
今度はあそこ、今度はあっちという風に、あっちこっち振り回されたあげく、その店先先で俺は玲のもってくるものに対して意見を言っていた。そして後は玲は遠慮していたがさすがにそこは、っといった感じに荷物持ちして、そしてこの炎天下の中を歩き回っていた。
むしろこの状況で熱中症にならなかった俺ってスゴクね?と自分で絶賛したいほどに歩き回った。
「たくっ・・・お前もなんかしろよ健」
横で俺とは違いテンション高めで輝いている健にぼやく。
「いや~蓮のおかげでほんと楽しかったわ。俺も結構買っちゃったしな~」
そして足元に置いてある複数の袋に目を落とす。
「あ~そうかい。それはよかったな~」
俺は半ばやけくそになりながら健に言う。その時、ふと俺の左隣にいる伊集院さんに目が行く。
(あれ?そういえば伊集院さんはなにも買ってないのかな・・・)
イスにちょこんと座っている伊集院さん。特になにもしゃべらず、持ってきていた本をここでも読んでいた。
その周りには袋らしい袋は見当たらない。どうやら買い物という買い物はしていなかったようだ。
すると、俺の視線に気づいた伊集院さんがスッと顔を上げて言った。
「・・・なに?」
不意に声をかけられ俺は体をびくつかせる。
「え、いや~伊集院さんはなにか買わなかったのかな~と思って・・・」
俺が慌てて言葉を返すと、伊集院さんはまた本に視線を落とすと、小声で俺の問いに答えた。
「・・・特になにも」
「・・・そ、そっか」
なんともかんとも話が弾まない。まあ一度だって伊集院さんと話が弾んだことはないんだけど、それでも、みんなでお出かけというなかなかないこんな機会でも、伊集院さんはあまり楽しそうにはしていなかった。
半ば無理やりついてくる形になっちゃったけど、やっぱり伊集院さんには迷惑だったのかな・・・
久しぶりのショッピングにはしゃぐ玲と健。それをよそ目に伊集院さんは一人、黙々と本を読んでいた。
<午後 ショッピング通り>
「さあて次はどこに行こうか~」
「ふう~・・・」
昼飯を食べた後も買い物は続いた。服にバックに装飾品に化粧品店まで、ありとあらゆる店に行き、そして買い物をしていた。
手に持つ袋もみるみる多くなっていき、両手に2,3袋、中央に1袋とこれ以上は持つのが難しいところまできていた。
しっかし、ここまでよく買い物できるな。というよりよくそんなにお金があるものだ。
この手に持っている袋の中の代物は、全て決して安いものではない。けれどそれでも玲はどんどん買っていっている。一体どこからそのお金を用意してくるのだろうか。
「しかし、そろそろ限界だな・・・」
俺は手に持つ袋を見つめて呟く。
「まあ、確かにな。今日は特に買ったみたいだな。まあそれも後一つぐらい店に立ち寄って終わりだろ。時間も時間だし」
そして健は通りにある大きな時計を見つめる。
時計の針はもう4時半を指していた。出掛けに出てもう6、7時間経っている。さすがにもう少ししたらバスの時間的に帰らないといけない時間だ。
そうでなくても、俺の体力はもう限界だ。むしろ良くここまでもったものだ。
「じゃあ最後にここに寄って帰ろうか」
玲はそんな俺達をよそ目に一つの店を指し示す。
「アクセサリーショップ、か・・・」
透明なガラスに映し出される店内には、いくつものネックレスやイヤリング、指輪が並んでいた。
「いらっしゃいませ」
店内に入った瞬間に広がるきらびやかな品物の数々。ここだけでざっと1000個ぐらいはあるんじゃないのかと思えるほどに様々なアクセサリーが並んでいた。
「あ、ねえねえ健。あれ可愛くない??」
玲は完全にマイワールドに突入している。そしてそのワールドに健をも巻き込んでいる。
「え、えっとそうだなあ・・・」
そして健は恨めしそうにこちらを見つめてくる。
「ほらいって来い。少しぐらいお前も苦労しろ!」
俺は小声で健に言う。今までずっと俺が玲の相手してきたんだ。ちょっとぐらい健にも俺の苦労を味わってもらわねば。
そして健は玲に手を引かれながら、色とりどりのアクセサリーの中へと消えていった。
「ふう~・・・ようやく自分の時間を過ごせるな」
俺は大きく背伸びをした。思えば、今日はずっと玲の買い物に付き合っていたから自分の買い物を一切できなかった。まあそれは別にいいんだけど少しぐらい、ゆっくりと品物を見て歩きたかった。
「さ~てと、どうしよっかな・・・」
そして俺が店内を見渡した時
「あれ?」
一つのアクセサリーに目を落とす、伊集院さんの姿があった。
俺は自然と伊集院さんの元へと歩き出す。
(へえ~やっぱり伊集院さんもこういうのに興味あるんだな)
今日のお出かけに一人あまりテンションが高くなかった伊集院さん。まあそれが伊集院さんだとは思うけど、色々な店を回ってもなんの興味を示さなかった伊集院さんが、今こうして一つのアクセサリーに興味を持っている。これはとても貴重なことだ。
そして俺が伊集院さんの元へと歩み寄ると
「おお・・・」
そこには銀色の小さな十字架の真ん中に、青く、とても鮮やかで奇麗な宝石というか装飾がされたネックレスがあった。よく見ると、その小さな銀色の十字架にも細かく装飾がされている。とても手の込んでいそうな代物だ。
そのネックレスを、伊集院さんはほかのものには目もくれずにじ~と見つめている。
「すごく奇麗だね」
「!?」
突然声をかけられた伊集院さんが体をびくつかせる。どうやら俺が近寄ってきたのにも気づかないぐらいに魅入っていたようだ。
「なんかとても奇麗で、それでいて上品で、伊集院さんにとても似合いそうだね」
「・・・・・」
伊集院さんは俺の問いかけに対しても無言のままネックレスを見つめている。
「そんなに気になるんだったら付けてみれば??」
「・・・え?」
伊集院さんは俺の提案にピクリと反応すると、スッと俺の方へと視線を向けた。
「ほら、ご自由にご試着くださいって書いてあるし」
「・・・でもお店の品物だし」
そう言って伊集院さんはまたネックレスに視線を戻す。
「大丈夫だって、別にそのまま盗むんじゃないんだし、着けるだけならタダだよ」
そして伊集院さんは、俺の言葉を聞いて少しの間考え込むと、スッとそのネックレスへと手を伸ばした。
「じゃあ・・・着けるだけ・・・」
伊集院さんは恐る恐るそのネックレスを手に取ると、自分の首元へと持っていきそのネックレスを付け始めた。
「・・・・・・」
伊集院さんはもぞもぞと首の後ろで手を動かしている。どうやらうまく付けられないらしい。まあネックレスを付ける際の典型的なパターンといえばパターンだが。
しかしこうして見ているだけというわけにはいかないか・・・
「あ、俺が付けてあげるよ」
そう言って俺は伊集院さんの首元へと手を伸ばす。伊集院さんは初めは驚いていたが、状況をつかむとネックレスの紐を俺の手に託すと、自分の後ろ髪を両手でかきあげた。
その時、ふわっと伊集院さんの髪が俺の手に当たる。同時になんともいえない良いにおいがふわ~と俺を襲う。
「・・・っは!?いかんいかん」
俺は一瞬その光景に見惚れてしまったが、自分の置かれている状況をもう一度認識し直して手を進める。
だけどなぜだろう、少しだけ胸がドキドキする。
「はい、できたよ伊集院さん」
「・・・・・・」
伊集院さんは自分の首元に付けられたネックレスを、近くにあった鏡を通してなんども掴みながら見つめている。
どうやら気に入ったみたいだ。
「う~んやっぱり凄く似合ってるねそれ。そうだ!!俺がそれ買ってあげるよ!」
「・・・え?」
伊集院さんは俺の突然の提案に驚いたような表情をする。
「・・・でも」
そう言って伊集院さんは俯く。どうやら相当戸惑っているようだ。
「ああお金のことは気にしないで。伊集院さんにはお金で払いきれないほどにお世話になってるんだから。それぐらいのことはさせてよ」
実際、伊集院さんには命を2回も助けられたんだから、どんなにお礼をしても足らないぐらいだ。だからせめてそれぐらいは買ってあげたい。まだ俺は伊集院さんになにもしてあげれてないんだから。
「・・・でも」
それでも躊躇する伊集院さん。
「もしかしてそれあんまり気に入らなかった?」
「・・・・・・」
そう俺が聞くと、伊集院さんは一瞬固まったが、それでも首を横に降った。
「じゃあ決まりだね。すいませ~んこれくださ~い!!」
「あ・・・」
伊集院さんはなにかを言いかけたが、流れには逆らえず、俺がお会計をするのをじっと見ていた。
「さあて、そろそろ帰りましょうか!」
お会計をすまして伊集院さんの元へと戻った後、丁度その時玲達も戻ってきた。手には複数の袋を抱えて。
「そうだな。良い時間だしそろそろ帰るか」
そして玲達が出口から外に出ていく。俺もそれに続いて店を出ようとすると
「・・・・・・」
伊集院さんが俺の服を引っ張る。
「ど、どうしたの伊集院さん」
俺がそう聞くと、伊集院さんは一旦うつむいた後、少しだけ顔を上げると
「・・・ありがとう」
そう一言だけ口にした。
<バス内にて>
「いやあ~楽しかったな~」
「そうね。なんかスッキリした~」
バス内に響く満足そうな玲と健の声。よっぽど今日のお出かけが楽しかったようだ。
手にはこれ以上持てないぐらいの袋を抱えながら満面の笑みがこぼれる。
(あっ・・・)
その袋を見つめていて俺はあることに気付く。
(そう言えば、俺だけなんにも買ってないな・・・)
結局、俺はずっと玲達の買い物に付き合わされて自分の買い物が全くできなかった。
だけど・・・
みんな、これ以上無いってくらいに満足気な笑みをこぼしている。それを見れただけでも、今回のみんなでお出かけは充分意味があったのかもしれない。
それに
俺はちらりと伊集院さんを見る。
伊集院さんはバス内にもかかわらず、相変わらず本を読んでいる。
(伊集院さんにプレゼントできただけでもよかったな・・・)
形はどうであれ、伊集院さんに少しでもお礼ができた。それだけで俺は充分だった。
後、初めて伊集院さんに感謝されたしな・・・
俺はあの時の伊集院さんを思い出して少し顔が赤くなる。
あの時の伊集院さんの姿と言葉が、俺の脳裏に焼き付いていた。
(なんか、俺が一番満足してたりして・・・)
俺の隣に座る伊集院さん。その首元には、俺が買ってあげたネックレスがキラキラと光を放って輝いていた。